亀田総合病院
7ヶ月前
2024年6月にオーストリア・ウィーンで、 欧州リウマチ学会 (EULAR) 2024が開催されました。本稿では、 亀田総合病院リウマチ・膠原病・アレルギー内科の小田修宏先生に、 EULAR 2024で発表された注目演題の内容と、 そこから得られた経験についてご報告いただきました。
今回EULAR 2024に参加させていただきましたので報告いたします。 貴重な機会をいただいた医局員の先生には感謝いたします。
EULAR 2024は2024年6月12~15日、 ウィーンのMesse Wien Congress Centerで開催されました。 EULARは欧州リウマチ学会 (European Alliance of Associations for Rheumatology) が主催する、 米国リウマチ学会年次総会 (ACR)に並ぶ世界最大級のリウマチ系学会です。 本年度は前年より多い4,582演題の応募があり、 そのうち35%が採択されました。 日本からも多くの演題が応募されており、 約100演題が会場で発表されました。
EULARでは世界中から最新の研究が発表されるほか、 疾患ごとの最新情報をまとめるWIN (What Is New) や、 各疾患の現時点での最適な治療についてまとめるHOT (How To Treat) など、 教育面でも充実した演題が準備されています。
また現地ではMeet The EULAR Expert (MTE) sessionsやPractical Skills sessionsといった参加型の講演も数多くありました。 これらの参加型講演やポスターツアーを除きほぼ全ての講演が録画され、 後日オンデマンドで配信されるため、 現地にいかなくとも最新の知識をアップデートできるのも魅力の1つです。
EULAR 2024の注目演題はなんといっても初日に行われたWIN sessionの"CAR T-cells to treat RMDs"ではないでしょうか? 同講演では現時点のリウマチ疾患に対するCAR-T細胞療法のオーバービューが行われ、 初日から多くの方が駆けつけており、 注目の高さが伺えました。
同じく初日に行われたLaurent Arnaud教授の"Lupus: what’s on the horizon?"は、 著名な教授のセッションということもあり、 多くの方が参加していました。 HOTでの講演でしたが 「1時間で全身性エリテマトーデス (SLE) の治療を語るのは無理」 というジョークから始まり、 おそらくリウマチ界の著名人のコラージュ画像を挟みながら、 現時点でのSLE治療オーバビューと今後の研究課題を軽快な口調で発表しており、 初学者~専門家まで必見だと思いました。
翌日13日に行われたJohn H. Stone教授の"IgG4 related disease"は、 彼自身の経験を踏まえながら診断や治療に関して踏み込んだ内容を提示しており大変勉強になりました。
以下、 覚書の一部を共有します。
・ IgG4関連疾患における中型血管炎病変¹⁾
・ 血清IgG4が正常値の5倍以上の場合、 陽性的中率(PPV)が75.4% (95%CI 68.7-81.3%)²⁾
・ IgG4関連疾患に対するCD19阻害薬イネビリズマブの有効性および安全性を評価した多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験MITIGATE : プラセボと比較して再燃を87%減少(HR 0.13、 p<0.0001)³⁾
本年度よりFrom Bench to Bedsideで初めて疾患単独のセッションが行われた"VEXAS Syndrome"は個人的にも注目していた演題でしたが、 実際に会場にも多くの人がおり、 注目度は高かったようです。 診断~病型の多様性~治療選択について現時点でわかっていることが簡潔にまとまっており、 VEXAS*症候群を診療する方は必見の内容でした。
また現地では、 VEXAS症候群に合併した仙腸関節炎の症例⁴⁾が紹介された際にどよめきが起こり、 なぜかとても印象的に残っています。
EULAR recommendationsのセッションでは速報があり、 今年は全身性強皮症の治療推奨、 リウマチ膠原病疾患の周産期管理の推奨、 結晶性関節炎の診断に関する推奨などがupdateされました。 詳細は今後公開されるガイドラインを参照ください。
HOKUTO会員の先生たちの中にはこれから国際学会を目指す若手の先生も多いかと思います。 小生も国際学会は初めてで、 今後の参考になればと思い本章を設けました。
まず今回のEULARにおける登録~発表までのタイムスケジュールは、 1月15日が演題登録締め切り、 3月28日に採択結果が通知、 5月31日までにポスタースライドの提出という流れでした。 体感として準備期間はあるようでゆっくりしているとあまりないなという印象です。
準備するものは海外旅行とそう変わりはないですが、 不幸にもロストバゲッジに遭ってしまったので、 手荷物に一着は学会に行ける服を用意しておくとよかったと思いました。 ただし、 ヨーロッパの学会は日本ほどフォーマルな服装での参加は求められておらず、 ほぼ私服のような参加者も多数いたため、 気にしすぎなくてもよいかもしれません。 実際に私も初日は仕方がないのでパーカーを着て参加しました。
英語に関して、 欧州は言語に比較的寛容とは言われ、 非ネイティブ同士比較的聞き取りやすい英語が交わされることが多い印象でした。 実際に小生の拙すぎる英語もなんとか聞き取ってくれ、 会話のようなものにはなっていました。 しかしやはり最低限の英語力はあるに越したことがないなと思いました。
欧州の学会は日本の学会と比較して闊達にディスカッションを行う文化があるため、 英語がスムーズに聞き取れ、 話せる方がより楽しい学会になりそうです。
来年のEULARはスペイン・バルセロナで行われます。 演題登録自体はACRと違い無料で登録できるため、 どんどんチャレンジして、 来年以降も参加していけたら、 と思える学会でした。
¹⁾Semin Arthritis Rheum. 2023;60:152184.
²⁾J Rheumatol. 2023;50(3):408-412.
³⁾米・AMGEN社プレスリリース(2024年6月5日付)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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