海外ジャーナルクラブ
3ヶ月前
Hammらは、 ドイツにおいて臨床的に前立腺癌 (PCa) が疑われる男性を対象として、 MRIの結果に基づく前立腺生検施行決定の腫瘍学的安全性について、 前向きなコホート研究で検討した。 その結果、 MRI陰性例では積極的監視でPCaリスクは増加せず、 前立腺生検を回避できる可能性が示唆された。 本研究は、 JAMA Oncology誌にて発表された。
this study address the gap of knowledge highlighted in current guidelines (現行のガイドラインで強調されている知識のギャップを解決するもの) という点で意義深い研究成果です。
臨床的に意義のある前立腺癌 (csPCa、 国際泌尿器科病理学会のGrade Group≧2) の診断において、 前立腺生検施行の意思決定にマルチパラメトリックMRI (mpMRI) が用いられているが、 MRIの結果が陰性で前立腺生検を回避した場合や、 MRIが陽性で前立腺生検が良性であった場合、 それぞれにおける長期的転帰については不明確である。 そこで本研究では、 これらの転帰について評価した。
ドイツにおいて、 2016年9月~17年12月に登録された臨床的にPCaが疑われる生検未受診の男性 (18-75歳) のうち3T mpMRIを実施した593例を対象として、 PCaが疑われる所見を有する場合には標的前立腺生検が推奨された。 また、 3T mpMRIの結果が陰性、 または陽性であるが前立腺生検で良性であった場合には、 3年間の積極的監視が行われた (最終解析 : 2023年12月23日)。 主要評価項目は以下の3点であった。
対象593例のうち286例がMRI陰性、 307例がMRI陽性であった。
MRI陰性
MRI陰性286例のうち7例が即時前立腺生検で陽性と診断され (csPCa4例を含む)、 その他279例が積極的監視に移行した。 3年間の積極的監視が終了した233例のうち、 7例がcsPCaと診断された。
MRI陽性
MRI陽性307例のうち58例が即時前立腺生検で陰性と診断され、 そのうち41例が積極的監視を終了し、 4例がcsPCaと診断された。
結果として、 MRIによる陰性予測値は96%と高値を示した。 また、 3年間の積極的監視によって全体の41%、 MRI陰性例の86%で前立腺生検が回避された一方で、 csPCaはMRI陰性例のわずか4%で検出された。
著者らは 「本研究では、 生検前MRIの高い陰性予測値が確認され、 また、 MRI陰性例では積極的監視でcsPCaリスクは増加せず、 前立腺生検を回避できる可能性が示唆された。 この結果は、 MRIの結果に基づく前立腺生検施行決定の腫瘍学的安全性を支持している」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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