海外ジャーナルクラブ
9日前
Kerらは、 出産する女性を対象に、 産後出血予防におけるトラネキサム酸の有効性および安全性について無作為化比較試験のシステマティックレビューおよび個別被験者データ (IPD) を用いたメタ解析で評価した。 その結果、 トラネキサム酸は生命を脅かす出血リスクを低減させることが明らかにされた。 本研究はLancetにて発表された。
この報告がJAMAでの掲載であればそのままガイドラインへの記載とつながる訳ですが、 Lancet誌は医師会の雑誌ではなく、 あくまでも民間出版社の雑誌のため今後の方向性が注目されます。
トラネキサム酸の投与は、 産後出血と臨床診断を受けた女性に推奨される治療法である。 しかし、 トラネキサム酸の出血予防効果は明らかにされていない。 本研究では、 トラネキサム酸の産後出血予防効果と安全性を評価した。
本試験では、 WHO International Clinical Trials Registry Platformのデータベースから、 トラネキサム酸による産後出血の予防効果についてプラセボを対照に評価した無作為化比較試験に登録された5万4,404例のデータを用いた。
主要評価項目は、 生命を脅かす出血*および血栓塞栓イベントの発生とされた。 また、 生命を脅かす出血の基礎リスク、 出産の種類、 中等度または重度の貧血の有無、 投与のタイミングによるトラネキサム酸の効果への影響も検討された。
生命を脅かす出血の発生率は、 トラネキサム酸群で0.65%、 プラセボ群で0.85%であり、 トラネキサム酸の投与で産後出血のリスクが低下していた (総合オッズ比[OR] 0.77、 95%CI 0.63-0.93、 p=0.008)。
また、 出産の種類や中等度~重度の貧血の有無、 トラネキサム酸の投与タイミングによる効果の差は認められなかった。
血栓塞栓イベントの発生率は両群とも0.2%であり、 両群間に有意差は示されなかった (総合OR 0.96、 95%CI 0.65-1.41、 p=0.82)。
著者らは 「トラネキサム酸は、 生命を脅かす産後出血のリスクを低下させる可能性が示唆された。 一方で、 血栓塞栓症のリスクは増加しなかった。 出産する全ての女性にトラネキサム酸の使用を推奨するわけではないものの、 死亡リスクが高い場合には産後出血の診断前に同薬の使用を検討する必要がある」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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