北里研究所病院IBDセンター
7日前

北里大学北里研究所病院 (北研) IBDセンターの抄読会で実際に交わされた治療判断の視点や議論のエッセンスを凝縮してお届けします。
第5回は、 活動性潰瘍性大腸炎 (UC) におけるステロイドの最適な漸減期間を検討した無作為化比較試験 (RCT) を取り上げます。
Clinical Trial: Long Versus Short Tapering of Steroids in Steroid Responsive Moderate to Severely Active Ulcerative Colitis-A Randomised Controlled Trial.
Aliment Pharmacol Ther. 2026;63(6):802-10.
UCにおけるステロイドの投与期間や漸減速度に関して、 標準的なガイドラインは確立されていない。
本研究では、 中等症~重症の活動性UC患者の経口または静注でステロイド投与における漸減期間と有効性・安全性の関連を検討した。
インドで行われた単施設二重盲検無作為化比較試験である。
対象
中等症以上の活動性UCで、 以下の導入療法開始後2週間以内に臨床反応 (排便回数50%以上の減少かつ血便消失) を認めた患者。
プレドニゾロン (PSL) 40mg/日を2週間経口投与
ヒドロコルチゾン100mg 6時間ごとまたはメチルプレドニゾロン60mg/日を5日間静脈内投与し、 その後PSL 40mg/日を9日間経口投与
介入
臨床反応を確認後、 以下の2群に無作為化した。
合計10週間投与。 9週目までは週1回5mg減量し、 10週目に2.5mg 投与して終了。
合計6週間投与。 週1回 10mgずつ減量し、 最終週に5mg投与して終了。 残りの4週間はプラセボを投与。
併用薬
両群とも経口5-アミノサリチル酸 (5-ASA) 製剤を内服し、 医師の判断で免疫調節薬を併用した。
主要評価項目
6ヵ月後のステロイドフリー臨床的寛解 (Total Mayo Score ≤ 2かつ Mayo endoscopic subscore 0または1)
94例 (長期群48例、 短期群46例) が無作為化された。 患者背景に差は認めなかった。 なお、 per protocol解析の対象は81例 (長期群41例、 短期群40例) であった。
主要評価項目
6ヵ月後ステロイドフリー臨床的寛解は長期漸減群では44% (18/41例) であったのに対し、 短期漸減群では20% (8/40例) と劣っていた (RR 2.19、 95%CI 1.08-4.46、 p=0.02)。
安全性に関しては、 ざ瘡やミオパチー、 気分変化、 血球減少症、 頭痛などの有害事象の発現率は両群で同様であった。 有害事象を理由に試験を中断した症例はなかった。
中等症~重症のUCにおいて、 6週間の短期漸減は10週間の長期漸減と比較して、 6ヵ月後の臨床的寛解達成において劣っていた。

ステロイド漸減に関しては施設ごとにばらつきがあり、 「早く減らしたから再燃したのでは?」 という議論を聞いたことがあります。
本研究は、 「ステロイドで効果があった場合、 早く減らすと再燃しやすいのではないか?」 という臨床疑問を調べた前向き研究です。 ステロイドによる有害事象の懸念を過大に考慮せず、 しっかり治療を行うことが重要であると感じました。


指摘されているように、 組み入れ前からIMを使用していたのは約20%で、 組み入れ後に約60%が新規に開始しています。 維持治療戦略による層別解析は報告されていませんでした。
「ステロイド+IMで維持を目指す」 という治療戦略において短期漸減で成績が悪かったのは、 「PSLそのものの有効性が低い」 というより 「維持療法の成功率が低い」 ということかと思います。 その理由は、 ご指摘のように、 短期漸減ではIMの効果発現に間に合わない可能性と、 休薬までに十分炎症が制御できていないのではと個人的には考えています。

著者らも、 IMの効果発現までに時間を要することを認めています。 そのうえで、 今後後発品が広く普及すれば、 ACTIVE試験¹⁾で示されたように即効性のあるADTを活用し、 早期にステロイドを漸減・中止する治療戦略にも期待できると述べていました。

ご指摘の通り、 重症度で投与期間を分けるという戦略は成り立つ可能性があります。 しかし、 本研究では層別解析は行われていませんでした。
短期で中止しても良い症例が存在するのは間違いないですが、 その因子は探索されていませんでした。 安全性も同様であり、 現時点では標準投与の方が無難ではないかと考えています。
<出典>
1) Gut. 2025 Jan 17;74(2):197-205.
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター (IBDセンター)

潰瘍性大腸炎・クローン病を中心とした炎症性腸疾患に対し、 消化器内科を軸に多職種が連携し、 先進的な診療と研究を推進する拠点である。 専門医が高度な治療選択を提供し、 IBD診療の質向上を目指して活動している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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