寄稿ライター
1ヶ月前

こんにちは、Dr.Genjohです。新シリーズ 「米国医療のリアル」 第2回では、 アメリカにおける 「勝ち組」 診療科がどこなのか、 その実態に迫っていきましょう。
>>第1回はコチラ


アメリカといえば、 手術を受けた際の支払額が非常に高額であることで有名です。 そのためか、 専門分野別の報酬ランキングの上位は、 侵襲的処置を担う外科系診療科がほぼ独占しています【図1】¹⁾。
上位には、 日本でいう脳神経外科、 脊椎外科、 関節外科など、 「外科」 と名の付く診療科が。 その後に腫瘍放射線治療科や循環器内科などが続きます。 いずれも高度な専門技術や侵襲的手技を要する領域です。
一方、 低年収診療科ランキングには、 小児内分泌科、 小児リウマチ科などの小児専門診療科が集中しています。 罹患患者数が少ない影響でしょうか。 さらに、 総合内科、 内分泌科、 老年医学科、 アレルギー科といったプライマリケア寄りの診療科も低年収群に並びます。 専門的知識を要する一方で、 手技を伴わない診療はアメリカでは収入に結び付きにくいようです。
最も高収入である脳神経外科の平均年収は74万9,140ドル。 1ドル=160円換算では約1.2億円です。 一方、 最も低い小児内分泌科は23万426ドル、 日本円では約3,700万円です。
診療科間の収入差が比較的小さい日本とは、 対照的な給与体系といえるでしょう。 (最低の3,700万円でも高給ですって?ここは日本で、 向こうはアメリカですから……。 あと円安。 )

では、 小児科やプライマリケア科は 「低年収診療科」 のままなのでしょうか。
実はそうとも言い切れません。 2024年の診療報酬上昇率ランキング【図2】を見ると、 小児科や予防医学科、 家庭医療科などのプライマリケア科が上位を占めています。

続く【図3】は、 アメリカにおける専門分野別の医師平均年収の推移です。
前述のとおり、 外科医が圧倒的高給を得ており、 これに非外科系専門医、 救急医、 産婦人科医が続きます。 一方、 プライマリケア医の年収は一貫して最も低い水準にあります。
しかし、 その差はわずかながら縮小しつつあります。 2022年時点で、 外科医の平均年収はプライマリケア医の約2.0倍 (200.4%) でしたが、 2024年には約1.9倍 (187.3%) まで低下しました。 その差は、 緩やかに縮まりつつあるといえます。



なぜ、 プライマリケア医の相対的な地位は高まりつつあるのでしょうか?
【図4】は、 アメリカで常勤・非常勤医師の人材紹介を支援するDoximity Talent Solutions社のデータです。 常勤医・非常勤医ともに、 求人件数ランキングの上位2診療科は内科と家庭医療科であり、 いずれもプライマリケアの中核を担う領域です。
もし外科医になれば、 プライマリケア医の3倍の報酬が得られるのであれば、 多くの医師がそちらを目指すでしょう。 結果として、 プライマリケア医は慢性的な人材不足に陥ります。
一方で、 アメリカの民間保険には、 保険料や自己負担額の安いHMOと、 高いPPOがあります。 HMOでは原則として最初から専門医を受診できず、 まずプライマリケア医を受診しなければなりません。 つまり、 プライマリケア医の需要は高いのに、 なり手が少ないのです。
供給に対して需要が増えれば、 価格は上がります。 プライマリケア医の待遇改善は、 この需給バランスの結果と考えるのが自然でしょう。 少なくとも、 診療所数が増加を続けている現在の日本では、 なかなか見られない構図です。

「2026年の診療報酬改定解説記事」 でも述べた通り、 今年の改定では、 消化器外科・心臓血管外科・小児外科・循環器内科の4診療科への配慮が明確に打ち出されました( +3.09%の真実 ♯3にて解説 )。
特に外科系診療科については、 外科医療確保特別加算の設定により、 医師個人に直接的な金銭的インセンティブを与える段階にまで踏み込んでいます。 今後、 日本もアメリカのように侵襲的治療を担う診療科へ報酬が集中していくのか。 それとも、 診療科間の格差を抑えた現在の構造を維持していくのか。 その行方はまだ見えていません。
ただ一つ言えるのは、 医学生や初期・後期研修医の先生方にとって、 診療科選択はこれまで以上に重要になるだろうということです。 報酬体系の変化にも目を向けながら、 自らの将来像を見据えて進路を選択していただきたいと思います。

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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