HOKUTO編集部
13日前
化学療法未施行の切除不能進行・再発固形癌に対するがん遺伝子パネル検査 (CGP、 FoundationOne® CDx : F1CDx) の有用性を検証した前向き観察研究FIRST-Dx study (先進医療B) について、 京都大学大学院医学研究科腫瘍内科学准教授の松原淳一氏らは、 参加症例を対象とした研究期間後フォローアップ観察研究を実施している。 今回、 その1年中間解析結果から、 標準治療前にCGP検査を実施することにより、 エキスパートパネル (以降、 エキパネ) 推奨治療へのアクセス割合が向上し、 2次治療でのエキパネ推奨治療も有用であることが示唆された。
CGP検査は2019年に国内でも保険承認されたが、 その適応は 「標準治療がない、 もしくは終了した (見込みを含む) 症例」 に限られている。 しかしCGPにはコンパニオン診断機能もあることから、 治療早期の段階から、 バイオマーカーであるCGP検査結果に基づく治療を選択した方が有効であると考えられている。
また国内6施設 (京都大学、 東京大学、 東京科学大学、 愛知県立がんセンター、 富山大学、 和歌山県立医科大学) が参加し、 先進医療Bの枠組みで実施された前向き観察研究FIRST-Dx studyでは、 化学療法未施行の切除不能進行・再発固形癌に対するCGP検査の有用性が検証された。 その結果から、 CGP検査は標準治療後よりも標準治療前に実施する方が、 より多くの推奨治療にアクセスできることが既に報告されている (JAMA Netw Open. 2023 Jul 3;6(7):e2323336.)。
そこで松原氏らは、 FIRST-Dx studyの研究期間後フォローアップ観察研究で、 治療前のCGP検査の有用性を検証した。
本研究では、 FIRST-Dx studyに登録されF1CDx検査が行われた切除不能進行・再発固形癌患者172例 (同意撤回症例は除く) を対象に、 研究期間後フォローアップ観察研究を実施。 今回は、 FIRST-Dx studyの最終症例登録日から1年時点 (2023年3月) での中間解析の結果が報告された (本研究の観察研究期間 : 2022年3月-2025年2月の3年間)。
FIRST-Dx studyにおける患者背景は以下のとおりであった。
主要評価項目は全生存期間 (OS)、 副次評価項目は以下などであった。
全身化学療法を開始した165例において、 主要評価項目であるOS中央値は未到達であった (経過観察期間中央値 : 15.1ヵ月)。
副次評価項目であるエキパネによる推奨治療を実施した患者の割合は22.7% (39例) であった。 標準治療後の保険診療CGP検査 (厚生労働省資料* 9.4%) より高い割合であり、 早期にCGP検査を行うことで推奨治療へのアクセス割合が向上し、 CGP検査を有効活用できる可能性が示唆された。
治療ライン別のサブグループ解析では、 1stが12.2% (21例)、 2ndが11.6% (20例)、 3rdが2.3% (4例)、 4thが0.6% (1例) であった。
副次評価項目である治療ライン別のBOR率において、 エキパネ推奨治療実施の有無別でみると、 1stおよび2ndで以下の結果が得られ、 CGP検査結果に基づくエキパネ推奨治療の有用性が示唆された。
1st
2nd
治療ライン別のPFS中央値については、 エキパネ推奨治療実施の有無別でみると、 数値的にはエキパネ推奨治療実施例の方が長かったが、 1stおよび2ndのいずれも両群間で有意差が認められなかった。
またエキパネ推奨治療を実施した患者における 「エキパネ推奨2次治療のPFS」 とその 「直前の1次治療のPFS」 の比 (2nd-line PFS ratio) の中央値は1.1 (範囲 0.1-14.6) であった。
新規分子標的薬による治療を受けた患者の15%以上がPFS ratio 1.3以上であることをその治療の臨床的有用性の定義とした過去の報告 (J Clin Oncol. 2010 Nov 20;28(33):4877-83. ) に照らすと、 今回、 エキパネ推奨の2次治療を実施した患者の33.3%が2nd-line PFS ratio 1.3以上であり、 2次治療におけるエキパネ推奨治療が臨床的に有用である可能性が示された。
エキパネ推奨治療があった患者105例における推奨治療のエビデンスレベル*別割合は、 エビデンスレベルAが47% (49例)、 適用外薬による治療となるエビデンスレベルB、 C、 Dがそれぞれ3% (3例)、 23% (24例)、 28% (29例) だった。
エキパネ推奨治療実施有無別の解析では、 既に推奨治療を実施した患者39例では、 エビデンスレベルAが77%、 エビデンスレベルB、 C、 Dがそれぞれ5%、 18%、 0%であった。
いまだエキパネ推奨治療を実施していない患者66例では、 エビデンスレベルAが29%、 エビデンスレベルB、 C、 Dがそれぞれ2%、 26%、 44%であった。
特にいまだ推奨治療を実施していない患者の多くで、 エキパネ推奨治療として適用外薬が必要であり、 これにアクセスする制度設計の必要性を示す結果となった。
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松原氏は 「本研究により、 標準治療前にCGP検査を行うことでエキパネ推奨治療へのアクセス割合が向上し、 CGP検査を有効活用できる可能性が示唆された。 また、 PFS ratio解析において、 2次治療におけるエキパネ推奨治療が臨床的に有用である可能性が示された。 3年間フォローアップ後の本観察研究終了時には、 推奨治療到達割合がさらに上昇していることが期待される」 と報告。
そのうえで、 「今後、 CGP検査実施のタイミングを最適化する必要がある。 すなわち現在のように標準治療終了後に限定せず、 がんゲノム医療中核拠点病院等の臨床現場の判断でできるようになることが望ましいと考える。 さらに、 エキスパートパネル推奨治療における適応外薬 (エビデンスレベルB/C/D) に対応できる薬剤アクセスの制度設計を早急に検討すべきである」と訴えた。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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