著者

HOKUTO編集部

13日前

【特集:気管支喘息】気管支喘息のERでの初期対応(飛野和則先生)


初期対応4つのポイント

  • 病歴、症状、身体所見から素早く診断する.
この際、 喘息mimickerの鑑別が重要である.
  • 症状とSpO₂を参考に重症度分類を行う.
それぞれのステップに合った治療を実施していく.
  • SABAとステロイド全身投与が治療の中心.
不応時はアミノフィリン点滴やアドレナリン皮下注射.
  • 入院と挿管の適応を把握しておく.
帰宅可能なら、 ステロイド内服を数日分処方しておく.

1. 診断

喘息未診断の場合は 「喘息診療実践ガイドライン2021」 の問診チェックリストを参考に病歴を聴取する¹⁾. すでに喘息と診断されている場合は、 喘息mimickerの鑑別を行う.

喘息疑い患者の問診チェックリスト

大項目+小項目のいずれか一つで喘息を疑う


取っておくべき問診、 身体所見

(1) 問診

既往歴、 喫煙歴、 家族歴、 ペットの有無、 最近の体重の変化、 消化器症状の有無.


(2) 身体所見

粘膜所見 (眼、口腔) 、 胸部聴診 (喘鳴の有無・呼気時/吸気時・最強点、 他の副雑音の有無) 、 皮膚所見、 下腿浮腫.


(3) その他

薬剤で過去に起きた副作用、 今回の増悪に関連する薬剤 (鎮痛剤、 解熱剤、 湿布など) を確認しておく. 副鼻腔炎や鼻茸があり、 NSAIDsで発作歴がある場合にNSAIDs過敏喘息 (アスピリン喘息*次項参照) は要注意である. 


アスピリン喘息の特徴

NSAIDsを服用後1時間以内に鼻閉、 鼻汁、 喘息発作が出現する. 顔面紅潮や結膜充血、 消化器症状 (腹痛、下痢など) を伴うことも多い. 成人喘息の約10%で、 女性にやや多い. 小児には少ない. 


喘息mimickerの鑑別のポイント²⁾


鑑別に必要な検査

胸部単純X線、 胸部CT、 血液検査 (CBC、 生化学、 CRP、 RIST-IgE、 必要に応じてBNPなど) 


2. 重症度分類

症状 (呼吸困難の程度と動作時症状)とSpO₂で大まかに軽度~重篤に分類. 中等度で治療反応不良例と、 高度以上の場合は入院させる. 


3. 初期治療

軽度~それ以下であれば、 ①から治療を開始し、 ②はオプションとして使用する. 中等度以上であれば③~⑤を同時に開始する¹⁾³⁾⁴⁾. 

① SABA (pMDI吸入 or ネブライザー)

  • 短時間作用性β2刺激薬(SABA:Short Acting Beta2 Agonist)
  • pMDI (メプチンエアー®など) については1~2吸入、 べネトリン吸入液®0.5%の場合は0.3~0.5mL+生食2~3mLを吸入する.
  • 20分おき最大3回まで投与する.
  • ネブライザーはエアロゾル発生処置であるため、 コロナ禍では標準予防策を徹底する.
  • SMART療法中であれば、 ICS/LABAのブデソニド/ホルモテロール吸入薬1~2吸入を追加.

SMART療法:Symbicort Maintenance And Reliever Therapyの略称. ブデソニド/ホルモテロール吸入薬を定期で1日4吸入、 増悪時追加吸入指示.

② アミノフィリン内服頓用

  • 普段内服していなければ 250mg内服.
  • 内服中なら半量またはさらに減量し投与.
  • 救急外来では現実的ではないため、実際には行なわれないことが多い.

③ 酸素吸入 (鼻カニュラあるいはマスク) 

  • 中等度以上の増悪、 または頻呼吸が強い場合、 SpO₂ 95%前後目標に酸素投与を行う.
  • PaCO₂高値で、慌てて酸素量を下げない.
慢性Ⅱ型呼吸不全の増悪ではないため.

④ SABAの反復 (20~30分間隔) 

①で改善ない場合、④を準備しつつ再度吸入.


⑤ ステロイド薬点滴

入院の可能性があるため、 メインで輸液を低速で流しつつ、 薬剤を側管から投与 (いずれか).

  • ヒドロコルチゾン 200~500 mg
  • メチルプレドニゾロン 40~125mg
  • リン酸ベタメゾン 8mg

いずれも生食50~250mLで溶解 1時間で投与


<ポイント>
リン酸ベタメゾンは、 アスピリン喘息の患者、 またはアスピリン喘息が疑わしい症例に使用する. コハク酸エステル型  (ソル•コーテフ®、  ソル•メドロール®、 水溶性プレドニン®) などは禁忌である. リン酸エステル型も100%安全とはいえないため、 急速静注せず1時間で投与する. 経口ステロイドはいずれも問題ない. 

⑥ アドレナリン0.1% (ボスミン®) 皮下注

  • 0.1~0.3mL皮下注射、 効果があれば20~30分ごと数回使用可能である.
  • SABAやステロイド投与で改善が乏しい場合や、 即効性を期待する場合に使用する.
  • 頻脈が生じるため、 頻脈や不整脈のある症例では避けるか減量する. 

⑦ アミノフィリン点滴静注

  • アミノフィリン 125~250mg (テオフィリン薬内服中の症例では初回量は125mg) +生食 or 維持液200~250mLを1時間で投与する.
  • その後は血中濃度をモニターしつつ、 通常の体格で血中濃度に影響を与える併用薬がなければ500mg/日を輸液ポンプを用いて24時間かけて点滴静注する. 頻脈、 振戦、 不整脈、 嘔気、 嘔吐などの副作用に注意する. 

⑧ 人工呼吸管理

上記治療の反復でも改善しない場合、 気管挿管•人工呼吸管理を検討. 挿管適応は下記の通り.

  • PaO₂<50 Torr
  • PaCO₂>60Torr、 呼吸性アシドーシス (pH<7.25)
  • 呼吸筋疲労
  • 意識障害
  • 心停止、 呼吸停止

4.帰宅可能な場合の対応

  • 経口ステロイド処方:プレドニゾロン 0.5mg/kg/日 5~7日
  • SABA処方:メプチンエアー®など
  • コントローラーを使用していなかった患者では、 ICS/LABA処方
  • 通院医療機関への診療情報提供

参考文献

  1. 日本喘息学会、 相良博典、 東田有智. 喘息診療実践ガイドライン2021. 協和企画、 2021
  2. Kann K、 et al、 Clinical Mimics: An Emergency Medicine-Focused Review of Asthma Mimics. J Emerg Med. 2017 Aug;53 (2) :195-201. PMID: 28233608
  3. 一般社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会 、「喘息予防・管理ガイドライン2021」作成委員、「喘息予防・管理ガイドライン2021」.協和企画、 2021
  4. 飯塚病院呼吸器内科、 飯塚イズムで学ぶ 流れがわかる!呼吸器診療の歩きかた. 南山堂、 2019

著者

一言:当科では“地域における新たな呼吸器専門医像の創造”を目標に、 スタッフ全員で協力して診療しています. ご興味があればぜひ見学に起こし下さい. 

◎医局のトップページ

https://aih-net.com/depts/respiratory_mdc/

◎医局のブログ

https://res81.exblog.jp/

最終更新:2022年7月7日
監修:日本赤十字社医療センター呼吸器内科部長 出雲雄大先生

こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
HOKUTOのロゴ
HOKUTOのロゴ
今すぐ無料ダウンロード!
様々な分野の医師
様々な分野の医師