HOKUTO編集部
3ヶ月前

2025年9月17-20日にベトナム・ホーチミン市のシェラトンホテルにて開催された第30回アジア太平洋血液・骨髄移植学会 (APBMT 2025)に参加いたしました。 ベトナムでの開催は2013年の第18回大会以来12年ぶりとなり、 同国の医療水準の飛躍的向上を象徴する記念すべき学会となりました。

今回の学会で最も印象深かったのは、 アジア各国における造血幹細胞移植の規模とセンター化の進展です。 中国では年間1,000件以上、 韓国でも年間600件以上の移植を実施している施設が存在するという報告があり、 日本では到底想像できないレベルの集約化が進んでいることに驚愕いたしました。 中国全体での移植件数も既に年間1万件を大きく超えており、 移植件数がほぼ横ばいで今後減少が見込まれる本邦とは大きく異なる状況であると感じました。
このような大規模センターの出現は、 単なる症例数の多さにとどまらず、 治療の標準化、 コスト効率および医療従事者の専門性の向上、 さらには臨床研究の円滑な実施に寄与していると感じざるを得ませんでした。
経済面でも注目されるインドは、 血液領域においても目覚ましい発展を遂げています。 移植件数において既に日本に迫る勢いを見せており、 かつて 「移植のハードルが高い」 と言われていた国とは思えない状況です。 旧知の医師も 「まだまだ増やさないといけない」 とコメントしており、 今後さらなる発展が期待される状況なのだと感じました。 インドの国内総生産 (GDP) が2025年に日本を追い抜くと予測される時代背景と軌を一にして、 医療技術の進歩も著しいものがあります。
アジア諸国の発表で共通して感じたのは、 高いコスト意識とサステナビリティへの配慮でした。 限られた医療資源・予算を最大限に活用し、 より多くの患者に質の高い治療を提供するための工夫が随所に見られ、 これは本邦も大いに見習うべき点だと感じました。
特に印象的だったのは、 CAR-T細胞療法に対するアジア諸国のアプローチです。 中国では4万ドル程度、 インドでも4万5,000~6万ドルと、 欧米のCAR-T細胞療法と比して10分の1ほどのコストで提供されています。 これは単なる人件費の差ではなく、 アカデミアでの製造体制構築、 自国産CAR-T細胞療法の開発など、 国全体の戦略的なアプローチによるものと感じられました。 治療コストを下げながらも、 自国でできる限り高品質な治療の提供体制を構築しようとする姿勢は、 まさに 「持続可能な医療システムの理想形」 と言えるでしょう。
開催国ベトナムでは、 造血幹細胞移植のみならずCAR-T細胞療法も開始しており、 同国の医療水準向上を如実に示していました。 ただし、 運営面ではハイブリッド形式での発表でトラブルが相次いでおり、 この点においてはまだまだ発展途上という印象を受けました。
APBMT 2025は、 発展著しいアジアの血液医療がさらに新たな段階に入ったことを強く印象づける学会でした。 各国の発展、 特に変化の速さを目の当たりにし、 近い将来日本が付いていけない状況になることすら危惧されました。 来年はフィリピンでの開催が予定されており、 引き続きアジア地域の医療発展に注目していきたいと思います。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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