インタビュー
1ヶ月前

鹿児島の若手救急医らが中心に結成した 「救急郷中会」 がメンバーを増やしている。 現代の救急医療に、 明治維新の偉人を生んだ薩摩藩の 「郷中教育」 を取り入れているのが特徴だ。 共同代表の平田悠哉先生(鹿児島市立病院集中治療部)、 瀬尾浩希先生(鹿児島大学病院救命救急センター)に人気の秘訣などを聞いた。
全国的に救急医不足が問題になる中、 離島や山間部を抱える鹿児島県では救急医の偏在も大きな課題となっている。 山積みの地域課題を解決し、 「若手から鹿児島を盛り上げよう」 と、 2018年に 「救急郷中会」 が発足した。
瀬尾 : 「救急医の確保、 地域偏在の解消、 そして皆で連携して勉強すること。 救急郷中会は、 この3つを目的に若手救急医の有志で立ち上げました」

薩摩藩時代の 「郷中 (ごじゅう) 」 教育を模し、 指導医層を長老 (おせ)、 中堅層を二才 (にせ)、 若手や学生を稚児 (ちご) に見立てた屋根瓦式の教育を行う。 病院の垣根を取り払い、 年長者が若者を教えながらお互いに切磋琢磨して交流を深めるシステムだ【図1】。
平田 : 「救急郷中会のグループLINEに参加している人は190人以上。 若手救急医から始まった組織ですが、 2026年の現在では医学生や看護師、 救急救命士など多職種の仲間も加わっています」
救急郷中会の運営を担う中心メンバーは、 共同代表の2人を含めて計10人。 さらに、 鹿児島大学医学部では、 2025年から救急郷中会の学生支部 「KAGO-Q」 のサークル活動もスタートしている。

およそ2か月に1回、 さまざまな企画が催されている。 講師を招いた講演会や、 鹿児島大学、 米盛病院と連携した勉強会も実施。 オンライン開催のイベントは全国どこからでも参加が可能だ【図2】。
座学だけではなく、 救急の手技を学ぶハンズオンセミナーやメディカルラリーなど、 リアルの場で手を動かして学ぶ企画も開催している【図3】。

平田 : 「講演会には県内外の有名な先生を招聘しています。 毎回、 ビラを配ったりSNSで告知したりして情報発信し、 多いときはオンライン参加者が100人を超えるようになりました。 徐々に影響力が出てきたと思っています」
救急郷中会の結成後、 それまでほとんどいなかった地元の救急科医局への入局希望者が増加。 2019年から2023年の5年間で、 県下4病院で35人の若手救急医を獲得した【図4】。

現役の救急医が研修医に対し、 救急の魅力を直接伝えることで仲間が増えたという。
瀬尾 : 「学会発表や論文では、 リアルなやりがいや楽しく働けるかといったQOLまでは分かりません。 先輩たちのワクワクするような話を聞き、 救急医療の手技を実際にやってみて、 お互いに教え合う教育環境を体験してもらう。初期研修医時代を振り返り、 自分が救急科を選ぶ決め手になった部分を、 目に見える形で次世代に伝えたいと考えています」
2026年は5人が同じ道を歩むことが決まっている。 県内で最も大きい医局、 鹿児島大学の救急科・集中治療科の医局員は、 2024年度時点で54人。 全国的に見ても人数の多い医局となった。
自治医科大学や地域枠を経て医師になる人は、 へき地や離島で勤務することになる。 所属する病院や、 出身大学の垣根を超えたコミュニティが 「居場所」 にもなっていると平田医師は言う。
平田 : 「私は自治医科大学出身の医師ですが、 鹿児島県の同輩は例年2~3人しかいません。 田舎に行けば行くほど地元大学からの派遣医師が多いため、 自治医科大卒の医師は部外者扱いされる時代もあったそうです」
たとえバックグラウンドが違っても、 救急医療に関心を持つ者同士が集まれば力になる。
平田 : 「地域で孤軍奮闘する救急医の居場所として、 “みんなウェルカムでフレンドリーになろう”という文化を大切にしています。 地域医療の最前線にいながらスキルアップができて、 仲間もつくれる場にしたいです。 赴任地が遠方になる自治医大卒業生や、 地域枠出身者には積極的に声をかけています」
救急郷中会への参加資格は設けられておらず、 興味のある救急郷中会のイベントに直接参加申し込みすることも可能。 グループLINEへの招待はメンバーへの個別の申し出や、 情報発信を行う公式InstagramやX、 FacebookなどのSNSを通じて受け付けている。
瀬尾 : 「私も上司から教わったことですが、 “教えることは2度学ぶこと”だそうです。 誰かに教える行為を通して、 自分自身も本物の知識を身に付けられるのだと思います。 受動的に与えられたものではなく、 “本物”の知識を得るためにもお互い教え合う活動を多くの人に実践してほしいです」
平田 : 「閉鎖的なイメージの強い鹿児島ですが、 郷中教育のような文化が根付いているように、 仲間同士で教え合うのが得意な土地柄。 鹿児島や九州に限らず、 救急医療に興味がある方はぜひ鹿児島の仲間と一緒に学んでほしいです」



編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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