肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis
著者

MDアンダーソンがんセンター感染症科 松尾貴公

2ヶ月前

肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis

肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis
肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症; Hepatosplenic candidiasis) について、聖路加国際病院/MDアンダーソンがんセンター感染症科の松尾貴公先生にご解説いただきます。

💬本稿のポイント

肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis

リスク

以下がリスク因子として知られている¹⁾。

Infect Dis Clin North Am. 2000 Sep;14(3):721-39.より引用
肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis

発症機序

正確な病態は不明

慢性播種性カンジダ症の正確な病態は不明で、 急性播種性カンジダ症と病態や特徴が異なる。

急性播種性カンジダ症と慢性播種性カンジダ症の比較¹⁾
肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis
*これらはオーバーラップすることがある
Infect Dis Clin North Am. 2000 Sep;14(3):721-39.を参考に作表

その他の特徴

門脈系で最も大きな侵襲を受け、 著しい肝浸潤を引き起こすことがある¹⁾。

Infect Dis Clin North Am. 2000 Sep;14(3):721-39.より引用

病理組織学的所見で肉芽腫性炎症がみられることが報告されており、 発症における宿主免疫反応の関与が指摘されている²⁾。

Mycoses. 2012 May;55(3):e74-84.より引用

臨床症状

発症時期

好中球が回復したばかり (2週間以内) の血液腫瘍患者で生じることが多いが、 回復後数ヵ月まで遅れて発症することもある³⁾。

Clin Infect Dis. 1997 Mar;24(3):375-80.より引用

よくある症状

発熱、 右上腹部圧痛、 肝腫大、 脾腫大、 嘔気、 嘔吐、 食欲不振などがみられる。

肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis
肝脾カンジダ症の臨床経過¹⁾
Infect Dis Clin North Am. 2000 Sep;14(3):721-39.を参考に作表

検査所見・診断

病歴、 肝機能 (特にALP) の上昇、 および肝臓および/または脾臓に低吸収結節性病変を示す画像所見で臨床的に疑う

血液検査

ALPの上昇が特徴的である¹⁾

Infect Dis Clin North Am. 2000 Sep;14(3):721-39.より引用

AST、 ALT、 Bil上昇が見られることもある

血液培養

血液培養は陰性であることが多い

画像検査

造影CTで周辺が二重リングで覆われ中心部に造影効果を示す「Target sign」 を認めることがある

造影CTでの多発低吸収領域⁵⁾
肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症) Hepatosplenic candidiasis
Clin Liver Dis (Hoboken). 2015 Aug 24;6(2):47-50. より引用

CTで診断できない場合はMRIが考慮される⁴⁾

Leuk Res. 2005 May;29(5):493-501.より引用

肝生検

原疾患による血小板減少を合併することも多く肝生検が行われることは稀であるが、 肉芽腫がみられることが多い。 その他には炎症反応を伴う壊死 (好中球減少時)、 微小膿瘍 (好中球回復後) みられることもある²⁾


治療

抗真菌薬

エキノキャンディンを中心とした抗真菌療法を開始し、 臨床的な改善があればフルコナゾールへの切り替えを検討する。 上述のようにカンジダの種類が同定できないことが多いこと、 またエキノキャンディンやフルコナゾール耐性の非C. albicansの報告も増加しているため、 上記治療を継続できるかどうかは臨床的に慎重に判断することが必要である

ステロイド使用

発熱が持続する患者では免疫再構成症候群の病態を考慮し、ステロイドを使用することがある⁶⁾

Clin Infect Dis. 2016 Feb 15;62(4):e1-50.より引用

治療期間

治療期間に関してはフォローの画像所見で所見の改善がみられるか石灰化を認めるまで継続することが必要であり、 通常約6ヵ月程度必要であることも多い⁷⁾

Am J Med. 1991 Aug;91(2):142-50.より引用

出典
1) Hepatosplenic candidiasis. A manifestation of chronic disseminated candidiasis. Infect Dis Clin North Am. 2000 Sep;14(3):721-39. PMID: 10987117
2) New insights into hepatosplenic candidosis, a manifestation of chronic disseminated candidosis. Mycoses. 2012 May;55(3):e74-84. PMID: 22360318
3) Hepatosplenic candidiasis in patients with acute leukaemia. Clin Infect Dis. 1997 Mar;24(3):375-80. PMID: 9114188
4) Chronic disseminated candidiasis in patients with acute leukemia: emphasis on diagnostic definition and treatment. Leuk Res. 2005 May;29(5):493-501. PMID: 15755501
5) Hepatosplenic candidiasis. Clin Liver Dis (Hoboken). 2015 Aug 24;6(2):47-50. PMID: 31040987
6) Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016 Feb 15;62(4):e1-50. PMID: 26679628
7) Fluconazole therapy for chronic disseminated candidiasis in patients with leukemia and prior amphotericin B therapy. Am J Med. 1991 Aug;91(2):142-50. PMID: 1867240

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HOKUTO編集部
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