【解説】切除不能胆道癌に対する1次薬物療法の選択肢は?
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1年前

【解説】切除不能胆道癌に対する1次薬物療法の選択肢は?

【解説】切除不能胆道癌に対する1次薬物療法の選択肢は?
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Clinical Question

切除不能胆道癌に対する1次薬物療法の選択肢は?

切除不能胆道癌の薬物療法は、 免疫チェックポイント阻害薬の登場や各種標的療法の開発など、 近年進歩が著しい分野の1つである。 1次薬物療法にも複数の選択肢が登場しているため、 その選択に迷うケースが想定される。 

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【解説】切除不能胆道癌に対する1次薬物療法の選択肢は?

胆道癌の1次薬物療法の歴史と現状

GC療法

切除不能胆道癌の1次薬物療法としては、 ABC-02試験においてGC (ゲムシタビン+シスプラチン) 療法のゲムシタビン療法に対する優越性が示されて以降、 国際的にも国内でもGC療法が長らく標準治療であった¹⁾。

シスプラチンを含むレジメンではあるものの、 その用量は25mg/m²と他がん種で用いられるそれと比して少なく、 毒性の管理等は比較的容易であるといえる。 一方で臨床試験での全生存期間中央値は11.7ヵ月と1年に満たず、 奏効割合も26.1%と有効性の面での課題があり、 またそこまでの問題とならない場合も多いものの補液を含めると長時間の点滴が必要であるという課題もあり、 GC療法を上回る治療を求めた開発が複数行われた。

GS療法

殺細胞性抗がん薬の変更としては、 JCOG1113試験においてGS (ゲムシタビン+S-1) 療法のGC療法に対する非劣性が示され²⁾、 唯一シスプラチンを用いない併用レジメンが選択肢に加わった。 一方で、 有害事象などはGS療法GC療法でほぼ同等であり、 全患者に対してGS療法を優先して用いるほどのメリットはないため、 補液が問題となる心疾患併存や遠方の患者等に限って用いられるのが現状である。

GCS療法

また、 KHBO1401試験でGCS (GC+S-1) 療法のGC療法に対する優越性が示され³⁾、 国内では優先されうる標準治療となったものの、 S-1を含む点で国際的な標準治療を変更することはなく、 また国内のガイドラインでもGC療法GS療法と同等の選択肢の位置付けであった。

同様の殺細胞性抗がん薬3剤併用療法という開発は海外でも行われており、 米国ではGCN (GC+nab-パクリタキセル) 療法が、 欧州ではmFOLFIRINOX (オキサリプラチン+レボホリナートカルシウム+イリノテカン塩酸塩+フルオロウラシル) 療法が検討されていたものの、 それぞれ第Ⅲ相試験、 ランダム化第Ⅱ相試験で有効性は否定的であり、 この点でもこれらの3剤併用療法の切除不能胆道癌全体に対する開発は下火といえる。

GCD療法

近年、 TOPAZ-1試験においてGCD (GC+デュルバルマブ) 療法のGC療法に対する優越性が示され⁴⁾、 胆道癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性が示されたと同時に、 NCCNガイドラインでも第1選択として推奨されるなど国際的な標準治療が変更されるに至った。 免疫介在性有害事象など問題となる有害事象の増加も少ないため、 その点でもこれまでのGC療法を置換可能なレジメンといえる。

これらを総合すると、 第1選択としてはGCD療法が挙げられ、 国内では腫瘍量が多くそれに伴う症状があるなど奏効割合が優先される場合にはGCS療法が選択肢となり (GCSの奏効割合: 41.5%)、 補液を省略すべき強い理由がある場合にGS療法を検討、 といった使い分けが想定される。

今後考慮すべき切除不能胆道癌1次薬物療法の展開は

GCP療法

まずは、 KEYNOTE-966試験においてGCP (GC+ペムブロリズマブ) 療法のGC療法に対する優越性も示されており⁵⁾、 国内でも使用可能になる可能性があるため、 その際の使い分けが問題となる。 現時点ではOSにおける上乗せや、 有害事象の増加なども同等であり同列の標準治療としての評価になることが予想される。

GCS療法

GCS療法については奏効割合の高さを活かして術前治療としての開発 (JCOG1920試験) も進行中であり、 切除不能胆道癌に対してはGCD療法との比較試験 (KHBO2201試験) も開始予定のため、 これらの結果からGCS療法の使い所がより明らかになることが期待される。

▼GCN療法

同様の検討としては米国のGCN療法でも胆嚢癌や局所進行癌のサブグループが良好であったという議論があり、 今後これらの3剤併用療法は特定の対象に対して発展していく可能性が残されている。

▼分子標的療法

また、 近年各種分子標的療法が2次治療以降で有効性を示してきたが、 1次治療へステップアップする開発の方向性もあるため、 この点でも1次治療がより細分化していく可能性がある。

参考文献

  1. Cisplatin plus Gemcitabine versus Gemcitabine for Biliary Tract Cancer. N Engl J Med. 2010 Apr 8;362(14):1273-81. PMID: 20375404
  2. Combination gemcitabine plus S-1 versus gemcitabine plus cisplatin for advanced/recurrent biliary tract cancer: The FUGA-BT (JCOG1113) Randomized Phase III Clinical Trial. Ann Oncol. 2019 Dec 1;30(12):1950-1958. PMID: 31566666
  3. Randomized phase III study of gemcitabine, cisplatin plus S‐1 versus gemcitabine, cisplatin for advanced biliary tract cancer (KHBO1401‐ MITSUBA). J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2023 Jan;30(1):102-110. PMID: 35900311
  4. Durvalumab plus Gemcitabine and Cisplatin in Advanced Biliary Tract Cancer. NEJM Évid 2022;1(8).
  5. Pembrolizumab in combination with gemcitabine and cisplatin compared with gemcitabine and cisplatin alone for patients with advanced biliary tract cancer (KEYNOTE-966): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet. 2023 Jun 3;401(10391):1853-1865. PMID: 37075781

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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