第96回日本胃癌学会会長・大辻英吾氏に聞く
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HOKUTO編集部

10ヶ月前

第96回日本胃癌学会会長・大辻英吾氏に聞く

第96回日本胃癌学会会長・大辻英吾氏に聞く
第96回日本胃癌学会総会が2月28~3月1日に京都市勧業館みやこめっせ/ロームシアター京都で開催される。テーマは「胃癌を学ぶ者たち、 京都に集まれ!」。 そのテーマの通り、 同会は現地単独開催かつ、 一部を除くセッションは全て日本語での実施となる。 今総会にかける思いについて、 会長で京都府立医科大学大学院消化器外科学教授の大辻英吾氏に聞いた。

参加者全員が京都会場に集い、 活発な交流や意見交換を

―総会テーマ 「胃癌を学ぶ者たち、 京都に集まれ!」 に込められた思いを聞かせてください

2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、 さまざまな学術集会がwebやハイブリッドで開催されました。 胃癌学会総会も感染拡大期はweb参加形式を取り入れながら開催してきましたが、 いくつかの課題がありました。 私が最も課題視していたのは、 現地に来なければ他の演者の発表を聴くことは難しいということです。

参加者の先生方にはぜひとも、 自分以外の演題に触れ、 その発表内容から闊達なディスカッションを行い、 少しでも多くの知識を吸収していただきたい。 そのためには、 総会の場に直接お越しいただく必要があると考え、 今回のテーマを 「胃癌を学ぶ者たち、 京都に集まれ!」 といたしました。

学会に現地参加すると、 普段なかなか会えないような他施設の先生に会い、 交流することもできます。 セッション間や演題終了後に時に他の施設の人とお互いの状況や情報を交換し合うことも、 また大切なことではないでしょうか。 今総会に関しては、 できる限り多くの方に参加していただけたら、 それだけでも成功と言えるのではないかと思っています。

― 「現地に集う」 が大テーマとされる今回、 京都市勧業館みやこめっせ/ロームシアター京都を会場に選ばれた理由は

京都市内には学術集会に適した会場が多数ありますが、 本総会はより多くの方に参加いただくことを目標にしていますので、 新鮮かつ観光にも適した場所を会場にしたいと考えていました。 

私は京都出身ですが、 京都市勧業館みやこめっせやロームシアター京都が位置する地域は、 昔から京都市民が遊びに行く憩いの場です。 平安神宮が隣接し、 学会の合間には平安神宮を観光することも可能です。 観光地であるため会場周辺の雰囲気も明るく、 京都観光を兼ねて総会に参加しても十分に楽しめると思いますし、 我々と一緒に総会を盛り上げてもらえたら嬉しく思います。

母国語だからこそ可能になる参加者間の深い討論

―第96回総会では、 International session以外の全てのセッションの使用言語が原則日本語となりましたね

発表言語を主に日本語とした背景には、 ディスカッションをより活発にしたいという思いがあります。 元来、 胃癌領域の研究は日本が最先端であり、 当総会は国内学会の中では海外からの参加者比率が高いという特徴がありました。 そのため、 多くのセッションの使用言語を英語とした時期がありました。 しかし、 英語でのディスカッションは不可能ではないものの、 深い討論まではできなくなってしまいます。

さらには、 海外からの参加者は増加した一方で、 従来は参加者数が多かった市中病院勤務の先生方が当総会から離れてしまったのです。 胃癌診療は一般病院で行われることも少なくないため、 今回は再び市中病院に務める先生方にも多数ご参加いただき、 胃癌診療のレベルを底上げすることを1つの目標にいたしました。

なお、 日本語でのセッションが中心になったことを公表したものの、 演題発表数において、 海外からの発表数が減る見込みはありません。 韓国を中心としたアジア各国からの先生方にも参加いただく予定です。

注目は1日目-内科・外科が一堂に会して情報や知識を共有

―総会における見どころをお教えください

最大の注目ポイントは1日目です。 会場はロームシアター京都特別会場1箇所となり、 参加者全員が同じ場所に集うことになります。

1日目のプログラムは、 以下の4演題を予定しています。

① 胃癌学会施設認定制度について
② ガイドラインの現状と問題点を考える
③ 食道胃接合部癌を学ぶ
④ 教育セミナー

①では、 症例数が減少傾向にある胃癌診療のレベルを確保するために日本胃癌学会が開始した施設認定制度の仕組みや詳細について、 外科医・内科医・病理医・基礎医を含む幅広い先生方を対象に共有します。

②では、 最新の『胃癌治療ガイドライン医師用 2021年7月改訂第6版』に記載されているエビデンスに則った診療を行うことに関して、 ガイドライン記載内容の現状と、 年々変化する臨床状況に応じた問題点を考えていきます。

③は、 近年増加傾向にある食道胃接合部癌について学ぶ講演です。 本邦では、 生活様式の変化およびピロリ菌感染の減少に伴い、 食道と胃の接合部に発生する癌が増えてきています。 このように近年見られる動向の変化について改めて学ぶことを目的にしています。

④では、 胃癌の施設認定における必要要件にも含まれる教育セミナーを予定しています。

―1日目の会場が1つだけというのも、 「集う」 というテーマに繋がりますね

内科医・外科医が同じ場所で共に学ぶ機会はなかなかありません。 だからこそ、 内科・外科の垣根なく、 胃癌診療に携わるあらゆる方が一緒に知識をアップデートする機会を提供できればと思っています。 ①および②はプレナリーセッションですので、 誰もが必要とするような情報や知識を共有する演題を設定しました。

2日目以降はAI診療やロボット手術の講演も

―2、 3日目の注目セッションはいかがでしょうか

2日目は、 「胃癌薬物療法の現状と課題」 や 「AIによる胃癌診療の新展開」 などの演題を予定しています。 特にAI活用に関しては胃癌領域で注目すべきトピックスの1つで、 消化器内科医によるAIを併用した病変の診断も一部の先進的な施設で導入され始めています。

3日目には 「胃癌診療における遺伝子パネル検査の有用性」、 ビデオシンポジウム 「進行胃癌に対する腹腔鏡/ロボット支援下手術の工夫」 などが発表される予定です。 さらに、 3日目の午後には 「患者アドボカシーセッション」 が開催され、 非医療従事者の方々にもお越しいただき、 患者さんと共に胃癌治療について考えます。 パートナーをスキルス胃癌で亡くしたNPO法人希望の会 代表の轟浩美さんも参加予定です。

AI活用による診断・治療に期待膨らむ

―最近、 胃癌診療領域で注目されているトピックスをお教えください

まず診断観点では、 先述したAI併用の診断が主要なトピックスではないかと考えています。 これから数年後にはさらにAI診断が進歩を遂げ、 胃癌診療に貢献されることを期待しています。

また治療観点では、 ロボット支援下手術の発展が期待されます。 現時点では、 胃癌領域においてロボット支援下手術を施行できる外科医の数は限られており、 今後の課題と言えます。 ロボット支援下手術の担い手を増やすことは学会の役割でもあり、 当総会では3日目に、 ビデオシンポジウム 「進行胃癌に対する腹腔鏡/ロボット支援下手術の工夫」 を開催予定です。

京都に集い、 学会の楽しさを味わって

―最後に、 HOKUTO医師会員にメッセージをお願いいたします

新型コロナウイルスが5類に分類されてから初となる第96回日本胃癌学会総会では、 現地開催される学会の楽しさを若手の先生方にも十分に味わっていただきたいと考えています。 演題は、 先進的なトピックスから一般診療の場でも役立つ内容まで幅広く、 例年よりも多くの発表が行われる見込みです。 胃癌診療に関心がある先生方はぜひ、 ご参加ください。

大会公式サイト

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第96回日本胃癌学会総会ポスター (大辻氏提供)

第96回日本胃癌学会総会の公式サイトはこちら

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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