KIWI (炎症性腸疾患)
7ヶ月前
2024年3月に開催された第13回KIWI (Kitasato Institute Webinars on IBD) より、 重要なエッセンスを抽出し、 まとめてご紹介します。 今回のテーマは「Best of 2023」。 2023年において発表された、 炎症性腸疾患に関する注目の論文を前後編に分けて取り上げます。前編となる今回は、 インフリキシマブに関する3論文をご紹介します。
KIWIは、 IBD (炎症性腸疾患) にまつわるトピックについての教育的なコンテンツをインターネットでライブ配信するウェビナーです。 IBD専門医だけでなく看護師、 薬剤師など、 全ての医療従事者を対象に、 さまざまなレベルの内容を2ヵ月に1回、 ゲストを招き、 対談形式にレクチャーを交えてライブ配信します。
<本稿の目次>
CQ1. 皮下注への切り替えは?
CQ2. 休薬による再燃への影響は?
CQ3. 休薬による再発リスクは?
<注目論文>REMSWITCH-LT試験
方法
レジメン*にかかわらず、 インフリキシマブ静注投与から皮下投与 (120mg、 2週間隔) に切り替えられた臨床寛解期のIBD患者を対象にした長期有効性について、 他施設観察研究REMSWITCH試験の追跡期間を延長して調査を実施。 主要評価項目は臨床的再燃とし、 ベースライン治療からの転帰を評価した。
結果
5mg/kg (8週間隔)、 10mg/kg (8週間隔)、 10mg/kg (6週間隔)、 10mg/kg (4週間) 隔のうち、 10mg/kgを6週間隔および4週間隔のインフリキシマブ投与群は、 皮下注への切り替え後に再燃率が上昇した。 一方、 8週間隔での投与群における再燃率は皮下注への切り替え後も、 静注継続と同等の10-20%であった。
<私はこう見る>
日本の標準用量の範囲*であれば、 皮下注への切り替え後も再燃率は上がらないと推察できる。 10mg/kgを4週間隔で投与が必要な比較的重症例の場合、 皮下注投与に切り替えたために再燃したのではなく、 静注投与を継続していても再燃した可能性を否定できない。 5mg/kgを8週間隔で安定している患者と、 標準用量では効果がみられず倍量を4週間隔で投与している患者を比較しているため、 必然的に後者は再燃率が高くなると考えられる。 また、 再燃した場合にも増量や短縮で多くの人が再寛解を達成しているということも注目すべき点である。
<注目論文> SPARE試験
方法
ステロイド服用無しでの寛解状態が6ヵ月以上持続し、 インフリキシマブ+免疫調節薬の併用療法を8ヵ月以上継続しているCD患者を対象にした多施設共同非盲検無作為化比較試験SPAREにおいて、 患者を①併用療法継続群 (67例) ②インフリキシマブ休薬群 (71例) ③免疫調節薬休薬群 (69例) の3群に無作為に割り付け、 2年間の前向き観察を行った。 全群で、 再発を認めた場合は治療が最適化または再開された。 主要評価項目は再燃率および2年間の寛解期間であった。
結果
2年再燃率はインフリキシマブ休薬群で36%と、 併用群の14%、 免疫調節薬の10%に比べて有意に高かった (vs 併用群 : HR 3.45[95%CI 1.56-7.69]、 p=0.003 、 vs 免疫調節薬休薬群 : HR 4.76[同1.92-11.11]、 p=0.0004)。 一方で、 2年間の寛解期間は3群間での有意差を認めなかった。
<私はこう見る>
本試験では再燃時の再投与を認めているため、 一度再燃した症例が再び寛解状態に戻っており、 2年間の寛解期間に有意差が示されなかったと考えられる。
インフリキシマブ休薬群では他群に比べ休薬後早期に再燃する傾向にあるものの、 再投与によって寛解期間が保たれており、 総合的には観察期間中のほとんどが寛解状態で増悪した場合も一時的であったという見方ができる。
しかし、 13~15週で再燃をきたした症例もあり、 1回の休薬のみで再燃した可能性が示唆され、 休薬が難しい症例も存在することが推察される。
<注目論文>
方法
ステロイド服用無しで臨床的寛解が持続しているUCおよびCD患者を対象に、 免疫調節薬または抗TNF抗体 (本試験では91%がインフリキシマブベース) の中止と、 両薬併用療法の6ヵ月継続における有効性と安全性についてシステマティックレビューとメタ解析を通じて検討した。 主要評価項目は、 12ヵ月時点での再発および重篤な有害事象のリスクであった。
結果
抗TNF抗体休薬群 (31.5%) は併用療法群 (11.2%) に比べ、 再発リスクが2.4倍上昇した (RR 2.35[95%CI 1.38-4.01]) 。 一方で、 免疫調節薬休薬群では併用療法群との差が示されず、 再発リスクの上昇とは無関係であることが示唆された。
<私はこう見る>
システマティック・レビューの対象となったのはHAYABUSA試験、 STOP-IT試験、 SPARE試験、 EXIT試験である。 このうちEXIT試験のみ、 抗TNF抗体の休薬による再発リスクの有意な上昇を認めなかったが詳細なデータが未発表のため、 報告が待ち望まれる。
(後編に続く)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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