【電子処方箋】診察で増える3つの 「雑務」
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HOKUTO通信

1年前

【電子処方箋】診察で増える3つの 「雑務」

【電子処方箋】診察で増える3つの 「雑務」
「電子処方箋」 の運用が1月26日から全国で始まったのをご存知ですか? 利用に必要なカードを取得している医師は全体の1割程度にとどまっており、 低調なスタートとなりましたが、 実際に発行する場合は診察の流れがちょっと変わるのでご紹介します。

院内処方箋は対象外

電子処方箋は、 患者が利用を希望した場合、 医師が処方箋の内容をオンラインで、 国民健康保険中央会などが管理するクラウドに登録。 患者が薬局でマイナンバーカードか健康保険証を提示すると、 薬剤師がデータを確認し、 薬を渡します。

処方履歴のデータで一元管理されるため、 重複投薬や併用禁忌のチェックがしやくするなどの効果が期待されています。 現時点では院外処方箋が対象で、 院内処方箋やリフィル処方箋は対象外となっています。

【電子処方箋】診察で増える3つの 「雑務」
厚生労働省のホームページより 

3つの前提条件

医師が電子処方箋を発行するには、現時点で 3つの前提条件があります。

💡医師が医師資格証(HPKIカード)を持っている
💡病院がオンラインシステムを導入している
💡患者が希望している

HPKIカードは日本医師会が発行するカードのこと。 カード内のICチップに電子証明書が格納され、 カードリーダーなどを通してオンラインで医師資格の確認ができます。 ただ、 現状でカードを持っている医師は3万8709人 (2022年12月末時点) で全体の1割強にとどまっています

また、 厚生労働省によると、 今月15日現在でシステムを導入している医療施設は6病院、 10診療所 (薬局除く) 。 利用申請中は751の病院、 1万2071の医科診療所で、 いずれも全体の1割程度となっています

実際の診察で変わること

上記の条件を満たし、 医師が実際の診察で電子処方箋を発行する場合、 紙の処方箋と比較して変わる点は以下の3つです。

💡
1. 処方内容の入力時に重複投薬・併用禁忌のチェックを行う
2. HPKIカードで電子署名を行う
3. 6桁の引換番号が記載された 「処方内容控え」 を患者に渡す

厚労省の担当者は 「医師から『HPKIカードによる認証が思った以上に煩雑』などの声をもらっているので、 現場に極力負担がかからないよう今後も改善していきたい」としています。

医師は診察時、 重複投薬や併用禁忌をチェック。 処方する薬剤名を入力してボタンを押し、 過去の処方薬剤と服用期間の重複や併用禁忌の組み合わせがあるとアラートが出ます

3812件の重複投薬・併用禁忌を検知

現状でもオンライン資格確認のシステムを利用すれば、 処方・調剤情報を参照できますが、 1カ月程度のタイムラグがあります。一方、 リアルタイムで反映される電子処方箋は、 最新の情報を取得できます。

厚労省は2022年秋から山形、 福島、 千葉、 広島の4県で試験運用をしてきました。 約2か月間で処方箋の登録処理が計10万4105件あり、 うち3812件で重複投薬などを検知したそうです。 システムが普及すれば、 医療が効率化され、 薬剤師からの疑義照会が減るなどのメリットもあるでしょう。

「見切り発車すぎる」

ただ、 電子処方箋はシステムを導入している医療施設が少ない上、医師からも患者からも認知度が高いとは言えず、 「見切り発車すぎる」 (医療関係者) との声も漏れています。

そもそも、 医師がHPKIカードを利用するには発行費用(初回と5年ごとに5500円、 日本医師会会員は無料) がかかるほか、 ソフトのインストールなども必要です。

医療機関にとってもシステム改修などが必要で、 大規模な病院ほどコスト負担が大きくなります。 京都大は電子処方箋を導入、 3年運用した場合にかかる費用を9540万と試算し、 そのうち3分の2以上に当たる6540万円がHPKIカードの対応費用でした。 一方、 国の補助金は200床以上の大規模病院でも約160万が上限となっています。

【電子処方箋】診察で増える3つの 「雑務」
全国医学部長病院長会議 (AJMC)の 「電子処方箋導入に伴う予算措置及び制度改定等の要望書」 より 

このため、 全国医学部長病院長会議 (AJMC) は2022年11月、 厚生労働省と文部科学省に対し、システム導入の実情を反映した経費の補助を要望しました。

オンライン完結は難しい

メリットとして期待されている重複投薬・併用禁忌のチェックも、 気をつける点があります。 電子処方箋に対応していない医療機関の情報は登録されず、 チェックの対象にならないことです。

電子処方箋がそのエリアで広く普及していない場合、 結局は患者への聞き取りなどから処方薬を把握する必要があります。 オンラインで完結させることは当面難しいといえそうです。

当面はデメリットが大きい?

ある医師は「電子処方箋を知らない患者に対する説明などで負担も増える。 普及するまではメリットよりも負担感の方が大きいだろう」 と推測します。

あなたの病院は、 電子処方箋にどのような対応をする予定ですか?一度確かめてもいいかもしれませんね。

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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