IBDマニュアル
29日前
本連載では原因不明で治療が困難な炎症性腸疾患 (IBD) について、 疫学・病態・治療などの観点から解説を行います。 最新のエビデンスを基にしておりますので、 ぜひ臨床の参考としていただければ幸いです。
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター
炎症性腸疾患 (IBD) は、 再燃と寛解を繰り返す慢性の消化管炎症であり、 その治療目標は内視鏡的な炎症の回復を通じて長期的な臨床的寛解を達成することである。 しかし、 頻繁な内視鏡検査は患者に負担をかけるため、 非侵襲的かつ客観的なモニタリングツールが求められている。
腸管エコー (IUS) は、 低侵襲で費用効果が高く、 炎症の部位を直接可視化できる理想的なツールである。 以下に他検査との費用の比較を提示する。
IBDの疾患活動性評価における非侵襲的検査と内視鏡の比較
▼腸壁厚 (BWT)
正常値は3mm以下であり、 3mm以上の場合は炎症の可能性が高い。
▼腸壁血流の増加
カラードップラーを用いて血流の増加を評価し、 炎症の指標とする。
▼腸壁層構造の喪失
層構造が不明瞭または消失している場合、 重度の炎症が疑われる。
IUSは、 内視鏡的重症度と高い相関を示し、 炎症の評価に有効である。 特に、 Milan Ultrasound Criteria (MUC) などの重症度スコアを用いることで、 治療効果の予測や再燃リスクの評価が可能である。 しかし、 直腸の評価には限界があり、 経会陰エコー (TPUS) を併用することで下部直腸の炎症を評価する試みがなされている。
クローン病においても、 IUSは終末回腸や大腸の病変検出に高い診断精度を示す。 活動性の評価には、 IBUS-SASなどのスコアが用いられる。 また、 治療効果のモニタリングにも有用であり、 BWTや腸壁血流の変化を追うことで、 治療反応性を評価できる。 腸管合併症の診断にもIUSは有効であり、 狭窄、 瘻孔、 膿瘍の検出や評価が可能である。
IUSの普及には、 検査者間の技術差や標準化の問題が課題である。 検査手順の標準化や適切なトレーニングが必要であり、 超音波検査技師の育成も重要である。 また、 IUSの客観性を高めるためのさらなる研究が求められる。
IUSは、 IBDの診療における有用なモニタリングツールとして期待されており、 その非侵襲性と即時性から患者負担の軽減に寄与する。 今後、 これらの課題を克服し、 日常臨床に広く取り入れられることが望まれる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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