診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
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8ヶ月前

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
こんにちは、 Dr.Genjohです。 緊急シリーズ 「診療報酬改定から見る医療の今後」 の4回目は 「外科・マイナー・手技」 に焦点を当てます。 
※本稿における(〇〇p)は、 厚生労働省令和6年度診療報酬改定の概要 (医科全体版) の該当ページです。

マイナス領域目立つ

日帰り手術の基本料半減

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
【図1】厚労省の資料より

外科領域での目玉は、 やはり日帰り手術に関する改定でしょうか。 日帰り手術の際に算定される 「短期滞在手術等基本料1」 が半額となる場合があります。

従来、 日帰り手術の点数は2区分 (麻酔使用時2947点、 それ以外2718点) しか存在しませんでした。 改定後は、 外来でも対応可能な手術を日帰りでした場合は、 麻酔使用時1588点・それ以外1359点とほぼ半額になります。

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
【図2】厚労省の資料より

【図2】の右半分は、 手技料が半額となります。 抜粋は以下の通りです。

  • 皮膚科
  • 皮膚腫瘍摘出術、 腋臭症手術、 ガングリオン摘出術
  • 眼科
  • 角膜切除術、 緑内障手術、 水晶体再建術[非逢着レンズ挿入の場合]
  • 腎臓内科
  • 経皮的シャント拡張術
  • 血管外科
  • 下肢静脈瘤手術-硬化療法、 高位結紮術、 血管内焼灼術
  • 消化器内科
  • 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(<2cm) [除 : 早期胃がんEMR]
  • 肛門外科
  • 痔核手術・硬化療法
※太字は特に影響が大きいもの

総合入院体制加算 : 手術件数の見直し

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
【図3】厚労省の資料より

今回の改定では、 総合入院体制加算1/2/3の要件として要求される全身麻酔による手術件数が年800 / 1,200 / 2,000件以上と厳しくなります。

これまで総合入院体制加算1/2を取得できていた中規模病院において、 算定点数が180 /240点 → 120点と減額される可能性があり、 厳しい改定となるでしょう。

精神科、オンライン診療に光明?

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
【図4】厚労省の資料より

精神療法を行った場合、 一人当たりの診療時間によって算定額が異なります。 診療60分以上は増額、 30分未満は減額となり【図4、 287p】、 外来一人あたりに配分できる時間を考えた場合、 今回の改定は事実上の減額といえるでしょう。

オンライン精神診療が可能となり、 30分以上で357点、 30分未満で274点の算定が可能となります。 ただ、 精神保健指定医である▷抗うつ薬・抗精神病薬の処方が2種類以下である▷問い合わせに原則常時対応できる体制を構築している――など算定要件は厳しいようです(50p)

放射線医のコアセンター化

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
【図5】厚労省の資料より

放射線科はこれまで、 夜間休日の読影体制における病院規模の設定が 「病院」 と 「特定機能病院」 でした。 改定により、 その中間に 「救命救急センター病院」 が加わり3段階となりました【図5、 355p】

常勤数などの加算を見ると、 放射線医を一施設にある程度まとめて、 中規模コアセンター化したい意図が読み取れます。

わずかにプラス領域も

脳外科 脳血栓回収療法の推進

ここまで減額が目立っていた診療報酬改定ですが、 ここからはプラス要素です。

診療報酬改定から見る医療の今後 ~外科ほか編~
【図6】厚労省の資料より

急性期に脳血栓回収療法ができる医師や施設は限られており、 診断時には多くの場合、 基幹病院への迅速な転院搬送が必要となります。 今回、 必要に応じて転院搬送し、 基幹施設で血栓回収療法が実施された場合に、 紹介元病院に連携加算として5000点が算定されるようになりました【図6、 45p】

小児科は唯一の勝ち組?

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【図7】厚労省の資料より

小児科は今回の改定において、 唯一プラス改定の目立つ領域であり、 勝ち組といえるかもしれません。 小児かかりつけ診療料は初診料+11点、 再診料+10点と成人より手厚く、 処方箋を発行しない場合にはさらに117~118点が上乗せされます。

他にも新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料14539点、 小児緩和ケア診療加算700点が新設されました。 小児特定疾患カウンセリング料の増額、 小児入院病棟への保育士の複数配置に対する加算額の増加、 夜間を含む看護補助者配置による加算の新設など、 手厚く評価されています(252~261p)

終わりに

先生方の診療科における変化はいかがでしたでしょうか。

既存メディアの報道では初診料、 再診料、 給食費のわずかな増額、 医療従事者のベースアップといった側面にばかりスポットライトが当てられています。 その裏に潜む個別の減益に目を向けられることはなく、 減収が見込まれる現実が表沙汰にならない状況には閉口せざるを得ません。

しかしこの改定は2024年6月に間違いなく到来します。 本記事が荒波に立ち向かう準備のきっかけとなる一助となれるのであれば、 幸いです。

筆者プロフィール

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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