HOKUTO編集部
2年前
〔編集部より〕関節リウマチ薬物治療において第一選択薬とされるメトトレキサート (MTX) の使用について、 『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き 2023年版』が今年(2023)年3月に発刊されました。 ここでは、 亀田メディカルセンター リウマチ・膠原病・アレルギー内科の小森宏太郎氏に、 第67回日本リウマチ学会 (2023年4月24〜26日、 福岡市) のシンポジウム「改訂MTX診療ガイドとRA関連LPDの診断と管理の手引きを踏まえたMTXの適正使用」での発表の内容の一部をご紹介いただきます。
同シンポジウムの後半では、 関節リウマチ関連リンパ増殖性疾患(RA-LPD)に関して、 東海大学名誉教授の鈴木康夫氏および和歌山県立医科大学リウマチ・膠原病科学講座教授の藤井隆夫氏が解説した(関連記事「『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント」「MTX皮下注射製剤を含めたMTXの用法・用量」。
以下の5つのポイントに絞り要点を述べていく。
RAを含めた多くの自己免疫疾患ではリンパ腫の発生リスクが高いことが指摘されている¹⁾。 RA患者におけるリンパ腫の発症要因としては、 加齢・RAの疾患活動性・その他の膠原病の合併・遺伝的背景に加えて、 メトトレキサート(MTX)をはじめとする免疫抑制剤など、 さまざまな要因が複合的に関与すると考えられている。
メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)に関しては1993年のKamelら²⁾による報告で注目されるようになり、 2001年以降にWHO分類でも免疫不全関連LPDのカテゴリーに追加された。 本邦RAレジストリにおける解析³⁾では、 年齢・8mg/週超のMTX治療・タクロリムス治療(ただしHondaら⁴⁾の報告では有意差はなし)がLPD発症リスクの増加と関連を認めている。
表. LPD発生危険因子の解析データの一部
Saitoら⁵⁾の報告では、 末梢血リンパ球数の低下がLPD発症に先行する可能性があることを報告している。 またKuramotoら⁶⁾の報告では、 LPD発症6カ月前の時点と比べてLPD発症時にはリンパ球数が有意に低下しており、 さらにMTX中止後では自然消退群で速やかなリンパ球数の増加を認めた。 その他の検査値としてLDHやCRPはLPD発症時には有意に上昇しているが、 発症前の変化は認めなかった。
図. MTX治療中にLPDを発症したRA症例のLPD発症前後の末梢血リンパ球数の推移
日本人232例を対象としたLPD-WG study⁷⁾では、 MTX中止2週間後で73.9%、 4週間後には83.5%の症例で消退傾向が見られる。 そのうえで藤井氏は、 「明らかな臓器障害がない場合には、 すぐにMTX中止後、 2週間ほどの経過観察で発熱などのB症状の改善を認めない、 または4週間後までに皮膚や肺症状などの改善がなければ生検を含むコンサルテーションを考慮する必要がある」と述べた。
Saitoらの研究ではLPD再発に関わるリスクファクターとして以下の関与が示唆されている⁸⁾。
また、 自然消退して5年後以降では再発は認められなかったため、 5年間がLPDに対するフォロー期間として一つの目安となるかもしれない。
MTX-LPDが発症した際、 患者はMTXが原因であることを他の医師より伝えられ、 患者との信頼関係が大きく損なわれる可能性がある。 ゆえにRAやその他の膠原病そのものがリンパ腫の発症リスクであること、 また発症した全てのリンパ腫がMTXによるものでないということを患者に認識してもらう必要がある。 MTX導入時には十分なリスクベネフィットを伝えた上でShared decision makingを行うことが重要である。
亀田総合病院
リウマチ膠原病アレルギー内科
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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