【HER2CLIMB-02】tucatinib+T-DM1、HER2陽性既治療乳癌のPFS改善
著者

HOKUTO編集部

12ヶ月前

【HER2CLIMB-02】tucatinib+T-DM1、HER2陽性既治療乳癌のPFS改善

【HER2CLIMB-02】tucatinib+T-DM1、HER2陽性既治療乳癌のPFS改善
前治療歴のあるHER2陽性局所進行/転移乳癌患者を対象に、 HER2チロシンキナーゼ阻害薬tucatinib+トラスツズマブ・エムタンシン (T-DM1) 併用療法の有効性および安全性を検証した第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験HER2CLIMB-02の結果、 tucatinib+T-DM1はT-DM1単独と比較して無増悪生存期間 (PFS) を有意に改善し、 脳転移患者におけるPFSも延長したことが示された。 米・Fred Hutchinson Cancer CenterのSara A. Hurvitz氏が発表した。 

研究デザイン

対象

トラスツズマブとタキサン系薬による治療後に病勢進行を認めたHER2陽性局所進行/転移性乳癌で、 ECOG PS≦1の患者

脳転移に対し既治療で安定した症例および、 活動性または未治療の脳転移がある症例で、 即時の局所療法が必要でない患者も対象に含まれた。

方法

463例を以下の2群に1 : 1で割り付けた

  • tucatinib群 (228例)
tucatinib 300mg 1日2回経口投与+T-DM1 3.6mg/kg静脈内投与
  • プラセボ群 (235例)
プラセボ1日2回投与+T-DM1 3.6mg/kg静脈内投与

評価項目

主要評価項目

RECIST v1.1基準に基づく担当医の判定によるPFS

副次評価項目

全生存期間 (OS)、 RECIST v1.1基準に基づく確定客観的奏効率 (cORR)、 脳転移患者におけるPFSとOS

研究結果

追跡期間中央値

24.4ヵ月 (データカットオフ日 : 2023年6月29日)

患者背景 (tucatinib群、 プラセボ群)

  • 年齢中央値 : 55.0歳、 53.0歳
  • 女性 : 99.1%、 100%
  • アジア人 : 30.7%、 27.7%
  • ホルモン受容体陽性 : 60.1%、 59.6%
  • 脳転移あり : 43.4% (活動期21.9%/治療により安定21.5%)、 44.7% (同24.3%/同20.4%)

PFS中央値

  • tucatinib群 : 9.5ヵ月
(95%CI 7.4-10.9ヵ月)
  • プラセボ群 : 7.4ヵ月
(95%CI 5.6-8.1ヵ月)
HR 0.76 (95%CI 0.61-0.95)、 p=0.0163

脳転移患者

  • tucatinib群 : 7.8ヵ月
(95%CI 6.7-10.0ヵ月)
  • プラセボ群 : 5.7ヵ月
(95%CI 4.6-7.5ヵ月)
HR 0.64 (95%CI 0.46-0.89)

cORR

  • tucatinib群 : 42.0% (うち完全奏効は4.3%)
  • プラセボ群 : 36.1% (同4.2%)

OS中央値

事前に規定されたOS最終解析のために必要なイベント253例中134例 (53%) が観察された段階で実施されたOS中間解析の結果では、 両群間で有意水準 (p≤0.0041) を満たさなかった。

  • tucatinib群 : NR
(95%CI NR-NR)
  • プラセボ群 : 38.0ヵ月
(95%CI 31.5ヵ月-NR)
HR 1.23 (95%CI 0.87-1.14)

安全性評価

新たな有害事象は認められず、 既報と一致していた。

Grade3以上の治療関連有害事象 (TEAE) の発現率

  • tucatinib群 : 68.8%
  • プラセボ群 : 41.2%

≧5%に認められたGrade3以上のTEAE (tucatinib群 vs プラセボ群)

  • ALT上昇 : 16.5% vs 2.6%
  • AST上昇 : 16.5% vs 2.6%
  • 貧血 : 8.2% vs 4.7%
  • 血小板減少 : 7.4% vs 2.1%
  • 疲労 : 6.1% vs 3.0%

Sara A. Hurvitz氏らの結論

既治療のHER2陽性局所進行/転移乳癌患者において、 T-DM1にtucatinibを追加することでPFSが有意に改善した。 tucatinib群では肝イベントの発生率が高かったが、 一過性でコントロール可能、 かつ可逆的であった。 本試験は、 HER2陽性局所進行/転移性乳癌で脳転移例を含む患者において、 tucatinibを含むレジメンが病勢進行を遅らせることを証明した2件目の無作為化比較試験である。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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