HOKUTO編集部
7ヶ月前
第Ⅲ相無作為化比較試験IMvigor011では、 血中循環腫瘍(ct) DNA陽性の高リスク筋層浸潤性膀胱癌 (MIBC) に対する術後療法としての抗PD-L1抗体アテゾリズマブの有効性および安全性をプラセボを対照に検証。 同試験は、 現在も症例登録中であるが、 今回はスクリーニング時点での解析結果が報告され、 ctDNAの継続的な評価により、 術後の最適な治療を選択できる可能性が示唆された。
対象
高リスクの筋層浸潤性膀胱癌で、 手術を6~24週以内に受け、 残存病変を認めないもののctDNAが検出 (ctDNA陽性) される患者。 登録患者は術後最長12ヵ月間、 ctDNAの連続検査が実施され、 12ヵ月の監視期間中のいずれかの時点で陽性と判定された患者が、 アテゾリズマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目
ctDNA陽性患者における担当医評価による無病生存期間 (DFS)
副次評価項目
全生存期間 (OS)
今回は、 監視期間中にctDNA陰性を維持した高リスクMIBC患者171例の臨床転帰の評価が報告された。
一連の検査でctDNA陰性のままである患者は、 術後補助療法を受けずに済む可能性が示唆された。
近年、 ctDNAによるリキッドバイオパシーを治療戦略に取り入れるための研究がさまざまな癌種で進められている。 大腸癌¹⁾や乳癌²⁾では、 術後にctDNAが検出される場合、 再発のリスクが有意に上昇することが知られている。
本研究の先行研究であるIMvigor010試験は、 再発高リスクの筋層浸潤尿路上皮癌に対して、 術後治療としてアテゾリズマブと経過観察を無作為比較した第III相試験であった。 主要評価項目であるDFSは達成せず、 ネガティブな結果であったが³⁾、 術後ctDNA検出の有無で層別化したpost hoc解析では、 ctDNAが検出された集団においてのみ、 アテゾリズマブが経過観察に比べ、 DFS、 OSともに延長する傾向であった (DFSのHR 0.58、 OSのHR 0.59) ⁴⁾ 。
このことは、 尿路上皮癌において、 ctDNA検出は再発リスクのみならず、 免疫チェックポイント阻害薬の効果予測になる可能性を示唆している。
IMvigor011試験は、 これらの結果を前向きに検証するために計画された無作為化比較試験である。 今回は、 術後にctDNAが連続して未検出であった症例の再発状況について報告されたが、 12ヵ月DFS率が92%、 18ヵ月DFS率が88%と高リスク筋層浸潤尿路上皮癌のフォローアップとしては、 非常に良好な結果であった。
本試験におけるctDNA検出群における無作為化比較の結果が待たれるが、 今後の尿路上皮癌の周術期治療の開発において、 ctDNAが重要な位置付けになっていくことが予想される。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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