【IMvigor011】高リスク筋層浸潤性膀胱癌、 連続ctDNA陰性例では術後治療は不要?
著者

HOKUTO編集部

7ヶ月前

【IMvigor011】高リスク筋層浸潤性膀胱癌、 連続ctDNA陰性例では術後治療は不要?

【IMvigor011】高リスク筋層浸潤性膀胱癌、 連続ctDNA陰性例では術後治療は不要?
第Ⅲ相無作為化比較試験IMvigor011では、 血中循環腫瘍(ct) DNA陽性の高リスク筋層浸潤性膀胱癌 (MIBC) に対する術後療法としての抗PD-L1抗体アテゾリズマブの有効性および安全性をプラセボを対照に検証。 同試験は、 現在も症例登録中であるが、 今回はスクリーニング時点での解析結果が報告され、 ctDNAの継続的な評価により、 術後の最適な治療を選択できる可能性が示唆された。 

MRD陰性例の12ヵ月OSは100%

試験デザイン

対象

高リスクの筋層浸潤性膀胱癌で、 手術を6~24週以内に受け、 残存病変を認めないもののctDNAが検出 (ctDNA陽性) される患者。 登録患者は術後最長12ヵ月間、 ctDNAの連続検査が実施され、 12ヵ月の監視期間中のいずれかの時点で陽性と判定された患者が、 アテゾリズマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。

主要評価項目

ctDNA陽性患者における担当医評価による無病生存期間 (DFS)

副次評価項目

全生存期間 (OS)

今回は、 監視期間中にctDNA陰性を維持した高リスクMIBC患者171例の臨床転帰の評価が報告された。

ctDNA陰性171例の臨床転帰

追跡期間中央値16.3ヵ月
  • 連続ctDNA陰性を維持した患者のDFSは12ヵ月時で92%、 18ヵ月時で88%だった。
  • 連続ctDNA陰性を維持した患者のOSは12ヵ月時で100%、 18ヵ月時で98%だった。

連続ctDNA陰性例に術後療法は不要か

一連の検査でctDNA陰性のままである患者は、 術後補助療法を受けずに済む可能性が示唆された。

専門医コメント「私はこう考える」

【IMvigor011】高リスク筋層浸潤性膀胱癌、 連続ctDNA陰性例では術後治療は不要?

ctDNAを用いた癌治療戦略の開発進む

近年、 ctDNAによるリキッドバイオパシーを治療戦略に取り入れるための研究がさまざまな癌種で進められている。 大腸癌¹⁾や乳癌²⁾では、 術後にctDNAが検出される場合、 再発のリスクが有意に上昇することが知られている。

IMvigor010ではctDNA検出例でDFSとOSが延長傾向

本研究の先行研究であるIMvigor010試験は、 再発高リスクの筋層浸潤尿路上皮癌に対して、 術後治療としてアテゾリズマブと経過観察を無作為比較した第III相試験であった。 主要評価項目であるDFSは達成せず、 ネガティブな結果であったが³⁾、 術後ctDNA検出の有無で層別化したpost hoc解析では、 ctDNAが検出された集団においてのみ、 アテゾリズマブが経過観察に比べ、 DFS、 OSともに延長する傾向であった (DFSのHR 0.58、 OSのHR 0.59) ⁴⁾ 。

このことは、 尿路上皮癌において、 ctDNA検出は再発リスクのみならず、 免疫チェックポイント阻害薬の効果予測になる可能性を示唆している。

尿路上皮癌の治療でもctDNAが重要に

IMvigor011試験は、 これらの結果を前向きに検証するために計画された無作為化比較試験である。 今回は、 術後にctDNAが連続して未検出であった症例の再発状況について報告されたが、 12ヵ月DFS率が92%、 18ヵ月DFS率が88%と高リスク筋層浸潤尿路上皮癌のフォローアップとしては、 非常に良好な結果であった。

本試験におけるctDNA検出群における無作為化比較の結果が待たれるが、 今後の尿路上皮癌の周術期治療の開発において、 ctDNAが重要な位置付けになっていくことが予想される。

関連コンテンツ

【泌尿器科】表・計算機能まとめ 「人気30選」

【2023-2024前半】泌尿器領域人気論文まとめ

出典

¹⁾ Molecular residual disease and efficacy of adjuvant chemotherapy in patients with colorectal cancer. Nat Med. 2023 Jan;29(1):127-134. PMID: 36646802

²⁾ Assessment of Molecular Relapse Detection in Early-Stage Breast Cancer. JAMA Oncol. 2019 Oct 1;5(10):1473-1478. PMID: 31369045

³⁾ Adjuvant atezolizumab versus observation in muscle-invasive urothelial carcinoma (IMvigor010): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2021 Apr;22(4):525-537. PMID: 33721560

⁴⁾ ctDNA guiding adjuvant immunotherapy in urothelial carcinoma. Nature. 2021 Jul;595(7867):432-437. PMID: 34135506

ポストのGif画像
【IMvigor011】高リスク筋層浸潤性膀胱癌、 連続ctDNA陰性例では術後治療は不要?の全コンテンツはアプリからご利用いただけます。
臨床支援アプリHOKUTOをダウンロードしてご覧ください。
今すぐ無料ダウンロード!
こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
HOKUTOのロゴ
HOKUTOのロゴ
今すぐ無料ダウンロード!
様々な分野の医師
様々な分野の医師
【IMvigor011】高リスク筋層浸潤性膀胱癌、 連続ctDNA陰性例では術後治療は不要?