【解説】IBDの腸管外症状としての脊椎関節炎 (亀田秀人先生)
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KIWI (炎症性腸疾患)

10ヶ月前

【解説】IBDの腸管外症状としての脊椎関節炎 (亀田秀人先生)

【解説】IBDの腸管外症状としての脊椎関節炎 (亀田秀人先生)
本コンテンツは昨年12月26日に開催された講演 「第12回Kitasato Institute Webinars on IBD (KIWI) 」 にて行われた 「炎症性腸疾患の腸管外症状としての脊椎関節炎」 を基に、 講演内容の一部から概略を作成したものとなります。 多くの先生の臨床の参考となれば幸いです。

>>Kitasato Institute Webinars on IBD (KIWI) についてはこちら

KIWI (Kitasato Institute Webinars on IBD) について北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター長の小林拓氏に聞く

講演情報

講師 : 亀田秀人先生

東邦大学医学部 内科学講座 膠原病学分野 教授

はじめに

腸管外症状は多岐にわたり、 その中でも関節炎はcommonなもので、 非常に重要な合併症である。 多面的な全身疾患である脊椎関節炎 (SpA) においては、 リウマチ医や他の専門医と協調して症状を管理することが望ましい。

IBD合併関節障害の概要

IBD患者が腰背部痛・関節痛を訴えた場合、 IBDとは無関係な機械性疼痛であることも多いが、 一部は関節炎・付着部炎・指趾炎・腰背部痛など炎症性の疼痛であり、 それらは 「IBD関連SpA」 と判断される。

【解説】IBDの腸管外症状としての脊椎関節炎 (亀田秀人先生)
図表1) IBDに合併する関節障害のフローチャート (亀田秀人氏提供)

IBD関連SpA理解のポイント

SpAは、 疾患として体軸優位型 (predominantly axial SpA) と末梢優位型(predominantly peripheral SpA)に分類される。 一方で、 SpA患者個人を分類する際は 「体軸症状の有無」 を基準に、 体軸症状がある場合は体軸性SpA (axial SpA; axSpA) に分類し、 末梢のみに症状が認められる症例を末梢性SpA (peripheral SpA; pSpA) に分類する。

なお、 体軸症状の主所見は炎症性腰背部痛 (IBP) であるが、 IBPが認められる場合であっても、 そのうち実際にSpAを有する患者割合は7例に1例程度である。 ただし、 IBD患者に限定した場合はこの確率が高まる。

図表1の但し書きでは、 「IBDに伴う全ての脊椎関節炎は末梢性脊椎関節炎 (peripheral dominate SpA : pSpA) に分類」 とあるが、 これは正確ではない。 IBD関連SpAではpSpA患者が過半数を占めるものの (従って疾患全体としてはpredominantly peripheral SpA)、 50%未満の割合で体軸症状を有するIBD関連SpA (すなわちaxSpA) の症例は存在する。

【解説】IBDの腸管外症状としての脊椎関節炎 (亀田秀人先生)
図表2) ASASのSpA分類基準 (亀田秀人氏提供)

ASAS (Assessment of SpondyloArthritis international Society) のSpA分類基準では、 表左側のaxSpA、 および右側のpSpAの分類基準の両方に 「Crohn’s/colitis (クローン病/大腸炎) 」 が確認できる。 すなわち国際的に用いられている分類基準からも、 IBD関連SpAはaxSpA、 pSpAのいずれにも分類されるということが言える。

分類基準ではaxSpAの基準をpSpAの基準に先行して用いる。 まずは表左側のaxSpAの特徴を確認し、 該当項目がない症例は表右側、 pSpAの特徴を確認する。 すなわち、 どれだけ強く末梢症状が生じている場合でも、 体軸症状が認められればその症例はaxSpAに分類される。

このようにSpAの分類においては、 1つ1つの分類基準を正しく理解する事が大事である。

なお、 あくまでも分類基準であり診断基準ではないため、 実臨床での診断はこれに当てはまらないSpAも存在する。 また、 SpA疾患としての 「体軸優位型・末梢優位型」 のカテゴリーを個人としての 「体軸性・末梢性」 の分類と混同してはならない。 その意味で、 フローチャートは修正が望まれる。

典型例と非典型例-IBD関連SpAは非典型のことも

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図表3) axSpAとaxPsAの臨床特徴の比較 (亀田秀人氏提供)

欧州でもこのような記載が学会レベルでもみられるために混同されやすい実例であるが、 本来ならaxSpAの1病型である体軸性乾癬性関節炎 (axPsA) が並列表記されている場合もある。 意図としてはaxSpAは強直性脊椎炎のような比較的典型的なタイプで、 それと比較するとaxPsAは非典型の臨床像となりやすいタイプといえる。

IBD関連SpAの体軸所見もaxPsAと同じ非典型例が比較的多く見られ、 必ずしも典型的なX線所見を呈さないため、 典型例とは異なる臨床像や検査結果になりうるということを知っておくことが重要である。

画像診断において腰椎X線検査の基準となる部位は仙腸関節であり、 典型例では、 仙腸関節から腰椎、 胸椎、 頸椎と上行性に進行する。 これに対して非典型例では、 仙腸関節以外が障害されている場合がある。

nr-axSpA診断からIBDは除外される

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図表4) nr-axSpAの診断ガイダンス (亀田秀人氏提供)

本邦において、 X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎 (nr-axSpA) の診断ガイダンスは現在、 乾癬やIBDを基礎疾患に有する症例はnr-axSpAから除外することが定められており、 あくまでも基礎疾患を考慮した診断が重視される。 IBDなどの指定難病に対する不適切な処方を防ぐという意味合いも含まれる。 

従って、 それ以外の項目ではnr-axSpAに該当する患者であっても、 乾癬やIBDを基礎疾患としたSpA患者は、 あくまでPsAあるいはIBD-related SpAと診断して、 全身的な臓器病変を治療薬の選択に十分考慮すべきである。

末梢関節炎の細分類-Type1/2

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図表5) IBDの関節病変の病型と比較 (亀田秀人氏提供)

末梢関節炎 (pSpA) におけるType1、 Type2の特徴は以下の通り。

  • Type1 : 関節炎が5関節未満で下肢に多い
  • Type2 : 関節炎が5関節以上で上肢にも多発する

古典的なIBD関連SpAは末梢関節炎Type1

IBDと関節炎の発現時期においては、 末梢関節炎Type1のみが関節炎の先行は稀であり、 関節炎の活動性がIBD活動性に関連することが認められており、 Type1は古典的なIBD関連SpAといえる。

これに対して末梢関節炎Type2およびaxSpAに関しては、 IBDとSpAの主従関係も含めた位置づけが明らかではない。

関節障害に対する治療薬の選択肢

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図表6) PsAに国内承認された治療薬 (亀田秀人氏提供)

PsAに対し、 現在幅広く使われているのはTNF阻害薬とJAK阻害薬である。 

また、 IBD、 AS、 nr-axSpAには下記の薬剤が用いられる。 今後適応が広がればさらに治療選択は変わっていく可能性がある。

IBD (潰瘍性大腸炎/クローン病)

  • インフリキシマブ
  • ウステキヌマブ
  • ビメキズマブ
  • リサンキズマブ (クローン病のみ)

AS/nr-axSpA

  • セクキヌマブ
  • イクセキズマブ
  • ブロダルマブ
  • ビメキズマブ
  • インフリキシマブ (ASのみ)
  • アダリムマブ (ASのみ)

自力診断せずにリウマチ専門医へ紹介を

日本語訳のIBD合併関節障害のフローチャートにも今後改訂すべき点が散見されるように、 診断ガイダンスに沿って非リウマチ専門医が全ての症例を詳細に鑑別することは難しい。

確実な診断を行うためにはリウマチ医、 可能であれば脊椎関節炎に熟練した専門医にコンサルトを行い、 自力で診断しようとしないことが重要である。

解説医師

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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