インタビュー
15日前

心の問題を抱える子どものための専用病床「児童・思春期病床」が鳥取大学医学部附属病院に開設されてから、1年が経過した。精神行動医学分野の岩田正明教授は2021年の教授選で同病床の開設を表明し、国立大学では初となる試みを実現した。その背景には、時代の変化に伴って子どもの精神医療へのニーズが高まる一方、受け皿が不足しているという現実があった。
2025年4月1日に開設された同病床では、「児童・思春期精神科入院医療管理料」の算定に必要な施設基準を満たし、医療と生活の両面を支える体制を整えている。6床の個室に加え、学習室や食堂を併設したデイルーム、面会室を備える。公認心理師と精神保健福祉士が1人ずつ常駐し、精神科ナースステーションの看護師もケアに携わる。

岩田さんは米国留学から帰国した2012年以降、日本の状況の変化を肌で感じるようになったという。社会の複雑化などを背景に悩みを抱える子どもが増え、神経発達症(発達障害)で受診する子どもも増加した。小中高生の自殺が2022年に初めて500人を超えるなど、子どもの自殺の急増も大きな課題となっていた。
一方で、鳥取県内に子どもの診療に対応できる医療機関は少なかった。子どものこころ専門医や、児童精神科医として活動する医師が在籍する医療機関は5カ所ほどにとどまり、いずれも予約待ちが続いていた。こうした状況は、専門医が育ちにくいという課題にもつながっていた。
「医師が児童精神科を学ぶには、鳥取県外に出る必要があります。しかし、技術を身につけても、県内に活躍の場が少なければ戻ってきにくい。そのため、自前で医師を育て、地域への定着を支える仕組みが必要だと思いました」
岩田さんは2021年の教授選で同病床の構想を示し、教授就任後に本格的な準備を進めた。その際、信州大学の本田秀夫氏、富山大学の辻井農亜氏、長崎大学の熊崎博一氏ら、児童思春期を専門とする医師に意見を求めた。また、2006年に全国の大学で初めて専用病床を開設した自治医科大学の「とちぎ子ども医療センター」や、隣県・島根県の「島根県立こころの医療センター」の病棟も見学した。
「児童・思春期病床には一定のニーズがある。鳥取にも、教育と臨床を両立できる施設が必要だと思いました」

並行して、院内の調整も進めた。病院長への相談を重ね、経営企画課や執行部の会議で議論を交わした。院外では県と協議し、事業受託による運営費補助を獲得した。
病床の開設に当たっては、精神科病棟の約3分の1を改修し、大学は約3700万円を投じた。病床の名は「だんだん村」。「村で育てる」がテーマだ。

「核家族化や共働きが進む現代では、子どもが多様な人と関わる機会が減っています。だからこそ、昔の村のように、人と人とが自然に関わる場を病院の中につくりたかった。対話を通じて、子どもたちに『社会は怖いものではない』と知ってもらい、人を信頼することの大切さを感じ取ってほしいと思っています」


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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