海外ジャーナルクラブ
2年前
Bivard Aらは、 血栓溶解療法の適応となる虚血性脳卒中患者104名を対象に、 移動式脳卒中ユニット(MSU) を用いて血栓溶解薬のテネクテプラーゼを投与した際の効果を、 アルテプラーゼ投与と比較した (TASTE-A試験:第Ⅱ相無作為化オープンラベル試験). 結果、 MSUを用いたテネクテプラーゼの投与はアルテプラーゼ投与に比べ早期再灌流率が優れており、 安全性に関する懸念も認められなかった. 本研究はLancet Neurol誌において発表された.
移動式脳卒中ユニット(MSU) は血栓溶解療法に要する時間を短縮し、 患者の予後を改善することが知られている. MSUで投与されたテネクテプラーゼはアルテプラーゼと比較して、 病院到着時の再灌流に優れるという仮説を検証した.
患者の年齢中央値は73歳、 ベースライン時のNIHSS中央値は8であった.
灌流病変の容積はテネクテプラーゼの方がアルテプラーゼより有意に小さかった (中央値12mL vs. 35mL、 調整後発生率比0-55 95%CI 0.37~0.81、 p=0.0030 ) .
90日時点のmRS (5または6)
90 日時点での死亡
36時間以内の症候性脳内出血はいずれの治療法でも確認されなかった.
90日時点での重篤な有害事象は13例で、 アルテプラーゼ群の方が多かった.
MSUでテネクテプラーゼを投与した結果、 アルテプラーゼと比較して早期再灌流率が優れており、 安全性に関する懸念は認められなかった.
本邦での脳卒中血栓溶解療法で保険適用となっているのはアルテプラーゼのみであるが、 近年新世代rt-PAであるテネクテプラーゼの臨床試験が相次いている. アルテプラーゼを遺伝子工学的に改善した薬剤であり、より強い血栓溶解作用と、出血合併症の減少が期待される. また、MSUは採算性に対する批判があるものの、最近では長期的には医療経済的にも十分見合う可能性が試算されている. 本邦においても今後の進展を見守りたい.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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