寄稿ライター
11ヶ月前
こんにちは、 Dr.Genjohです。 連載 「データが示す 石川の未来図」 の3回目は、 石川県の各医療機関が担う役割の機能分化や救急対応について考えましょう。
石川県の 「災害、 火災及び救急の状況 (速報) 」 によれば、 県内の救急搬送人員数は増加傾向にあります。 一方、 ご存知の通り、 2024年4月から 「医師の働き方改革」 による時間外労働時間の上限が設定されます。
増え続ける救急搬送に対して少ない労働力で対応せねばならないため、 救急医療体制を維持するための対応策が検討されています。
厚生労働省のワーキンググループ(2023年3月)で石川県が示した 「地域医療構想の進め方」 によると、救急搬送の受け入れに関して、 準夜帯はこれまでと同様の体制が継続される予定です。 初期救急は軽症ウォークインを受け入れ、 二次救急や三次救急はそれぞれの施設が救急搬送を受け入れます。
一方、 深夜帯の体制に今後①輪番制と②集約化が導入される予定です。
お隣の富山で既に導入されています。 月ごと、 病院ごとに救急車を集中して引き受ける当番日を決め、 非番の日には救急車を受け入れません。
当番日の負担は重くなりますが、 業務が当番病院に集約化されるので、 非番病院の負荷が減ります。 医療圏全体として捉えた場合にはマンパワーの効率的な運用が期待できます。 2015年度の資料で少し古いですが、 以下のイメージです。
深夜時間帯に三次救急への救急搬送の割合を大きくすることで、 二次救急病院の負担を軽減することを意味します。 ただ、 三次救急の入院が増えすぎてしまい診療に支障を来しますので、 中等症以下の症例は原則、 非番であった二次救急病院へ翌朝以降に転院となります。
高齢化が進むにも関わらず入院病床数が減り、 より重篤な患者も、 病院から施設や在宅診療へスライドしていくことが予想されます。 必然的に施設や在宅診療における急変患者が多くなると考えられます。
石川県はこれらの急変患者が二次救急に搬送されることで救急医療が圧迫される可能性を問題視しています。
看取りであれば搬送せずに在宅や施設で完結し、 誤嚥性肺炎や心不全など入院が必要な症例も 「在宅患者の後方支援」 病院、 つまり慢性期病院への搬送が検討されています。
上図をみると、 在宅医療で積極的役割を担う 「在宅療養支援診療所」 「在宅療養支援病院」 となるためには、 自ら24時間体制の在宅医療を提供する必要があります。 これらの認定を受けることで得られる報酬がどのようなものになるかは未知数ですが、 もし施設の存続に事実上必須となるようなものであれば、 今後は開業医も24時間対応を覚悟せねばならないかもしれません。 (働き方改革とは何だったのか…)
総評すると以下のように言い換えることができます。
「これまで救急搬送受け入れの主軸であった二次救急病院の救急負担を軽減し、 三次救急や隔日の当番医病院、 慢性期病院、 開業医で救急負担を分散しましょう」
三次救急、 二次救急では働き方改革のために救急を担っている先生の長時間労働が困難となり、 時間外救急対応の需要は今以上に増します。 これまで救急対応を行っていなかった慢性期病院、 開業医も今後は24時間対応を求められていく可能性があります。
働き方改革の流れに逆行するようではありますが、 これからは環境を問わず当直帯対応の需要は増す事でしょう。 時間外救急に対応出来る医師と出来ない医師の間で、 需要や価値に差が生じていく事は自明の理であると考えます。
Xアカウント : @DrGenjoh
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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