Tarín-Vicenteらは, スペインにおけるサル痘症例の臨床的およびウイルス学的特徴について多施設共同前向き観察コホート研究において検討. その結果, サル痘は性器,肛門周囲,口腔に病変を生じ,直腸炎や扁桃炎などの合併症を引き起こすことが明らかとなった. 本研究は, Lancet誌において発表された.
📘原著論文
Tarín-Vicente EJ, et al, Clinical presentation and virological assessment of confirmed human monkeypox virus cases in Spain: a prospective observational cohort study. Lancet. 2022 Aug 8;S0140-6736(22)01436-2.PMID: 35952705
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
今回のLancetと先日のNEJMの報告でサル痘の臨床像が明らかになったと言えます. 世界中が感染症に対してより早期に臨床情報を集積し, 実臨床で対応できるようにactionできるようになってきていると思います. コロナを経験した利点だと思います.
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サル痘患者528例の検討 =多様な皮膚・全身所見を呈することが判明
N Engl J Med. 2022 Aug 25;387(8):679-691.
背景
2022年5月, 欧州の数カ国からサル痘の自家発症例が報告され, 急速に世界的に拡大した.
研究デザイン
2022年5月11日~6月29日までにサル痘と診断された患者181名を登録. 臨床転帰は2022年7月13日までフォローアップした.
研究結果
患者背景
- 年齢中央値:37.0歳
- 天然痘ワクチン接種歴:18% (32名)
- HIV陽性:40% (72名)
- CD4細胞数<500個/μL:11% (8名)
- 性感染症の併発:17% (31名)
- 潜伏期間中央値:7.0日 (IQR 5.0-10.0)
感染経路
- ゲイ, バイ, 男性間性交渉者 (MSM):92%
- 異性愛者の男性または女性:8%
症状
全員が皮膚病変を伴った.
合併症
治療を要する合併症を有したのは39% (70名).
- 直腸炎 25%
- 扁桃炎 10%
- 陰茎水腫 8%
- 膿瘍 3%
- 外反症 4%
入院が必要な患者は2% (3名) であった.
ウイルス学的結果
- 皮膚病変部のスワブ検体で99%, 咽頭スワブ検体70%が陽性と判定された.
- ウイルス量は,咽頭検体よりも病変部のスワブの方が多かった.
他の性感染症
- MSM166名のうち108名 (65%) が肛門性交を報告しており, 肛門性交を行わなかったMSMに比べて, 直腸炎 (38% vs. 7%, 絶対差31%, 95%CI 19-44, p<0.0001) および発疹以前の全身症状 (62% vs. 28%, 絶対差34%, p<0-0001) をより頻繁に呈していた.
- 扁桃炎を発症した19名のうち18名 (95%) が, 口腔内受容性交を実践していると報告した.
初診後14日の臨床転帰
- 病変発生から乾燥痂皮形成までの期間の中央値は10日であった.
結論の解釈
- サル痘は性器,肛門周囲,口腔に病変を生じ,直腸炎や扁桃炎などの合併症を引き起こした.そのため,臨床医はサル痘を疑う閾値を低く設定する必要がある.
- 病変部のスワブは最も高いウイルス量を示し,このことは,性的接触歴や病変部の分布と相まって,今回の集団発生ではおそらく密な接触が大きな感染経路であることを示唆している.