日本食道学会
4ヶ月前
💬 京都大学大学院腫瘍内科学講座教授・武藤学氏からのコメント
食道癌や頭頸部癌の明らかな危険因子は飲酒・喫煙です。禁酒をすることで食道癌が予防できると言われていますが、臨床的な経過は明らかにされていませんでした。今回、われわれは、禁酒・節酒をすることで食道癌の前癌病変である多発異型上皮が改善し、食道癌や頭頸部癌の発生を抑制することを世界で初めて明らかにしました。この成果は、難治癌である食道癌や頭頸部癌の予防対策に貢献する大きな成果と考えています。
京都大学の武藤学 医学研究科教授、 堅田親利 同特定准教授、 堀圭介 岡山大学医員 (現 : 一宮西病院副部長) らの研究グループは、 2023年12月、 国際学術誌 「Esophagus」 において、 禁酒・節酒によって食道癌、 頭頸部癌の前癌病変が減少し、 多発性の発癌を抑制すること世界で初めて報告しました¹⁾。
この研究結果は、 日本食道コホート (Japan Esophageal Cohort : JEC) 試験で得られました。 これまでJEC試験を通して、 食道粘膜の前癌病変 (異型上皮) の発生には飲酒が強く関連することが報告されてきましたが、 今回、 初めて 「禁酒・節酒による前癌病変の減少」 が明らかになったわけです。
食道扁平上皮癌の内視鏡切除後に禁酒指導
前向きコホート研究として、 食道扁平上皮癌の内視鏡切除後に禁酒・禁煙指導を実施した。 その後、 6ヵ月ごとの上部消化管内視鏡検査と12ヵ月ごとの耳鼻咽喉科診察を継続した。
禁酒・節酒患者の10%、ヨード不染帯の程度改善
登録症例232例に対して、 禁酒・節酒を継続した患者の割合は68.1%であった。 また、 禁酒・節酒継続患者の10.8%で、 食道粘膜のヨード不染帯の程度が改善し、 これは禁酒・節酒できなかった患者の約8.5倍であった。
禁酒・節酒でヨード不染帯が改善されると食道癌の再発を7割減らせるほか、口やのどにできる癌も含めると発症を8割減らせるという結果だった。
発癌予防への活用に期待
本研究では 「禁酒・節酒をすることで前癌病変が減少し、 多発性の発癌を抑制する」 ことを世界で初めて臨床的に明らかにしました。 この結果を、 食道および頭頸部の発癌予防に活用することが期待されます。
日本食道学会では、 患者さんやご家族、 一般の方向けに癌予防の啓発活動を行っています。
本学会ホームページの 「食道がんを正しく知ろう!」 では、 食道癌の診断・治療についてわかりやすく解説しています。 学会公式YouTubeチャンネルや市民公開講座でも啓発活動を行っています。
最近では、 飲酒による食道癌リスクを訴えるポスターを作成しました。 これらの活動を通じて多くの方々に食道癌の正しい情報が広がっていくように努めています。
日本食道学会作成の啓発ポスター
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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