Rappらは､ 化学療法1~5年後に認知機能障害を訴えた (ケモブレイン) 乳癌生存者を対象に､ 抗認知症薬ドネペジルの認知機能改善効果について､ 第III相プラセボ対照無作為化比較試験WF-97116で検討した｡ その結果､ ドネペジルはプラセボと比較して患者の認知機能を改善しなかった｡ 本研究はJ Clin Oncolにおいて発表された｡

📘原著論文

Phase III Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial of Donepezil for Treatment of Cognitive Impairment in Breast Cancer Survivors After Adjuvant Chemotherapy (WF-97116). J Clin Oncol. 2024 May 6:JCO2301100. PMID: 38709986

👨‍⚕HOKUTO監修医コメント

認知機能などの介入の場合に､ プラセボ効果が5-10％程度は期待できるため､ わずかな差を出すのが難しいとも言えます｡ negative studyなのですが､ 深く考えると味わい深いです｡

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【追加】CDR / CDR-SB / CDR-GS

認知機能の評価スケール

CPS+EG

術前補助化学療法を受けた乳癌患者の予後評価

ドネペジルは乳癌生存者の認知機能障害に有効？

補助化学療法後に認知機能障害を経験した乳癌生存者における認知機能改善のための治療法としてドネペジルの有効性を評価することを目的とした｡

無作為化比較試験で検討

対象

登録の1~5年前に4サイクル以上の術後補助化学療法を受け､ 癌に関連した認知機能障害を訴えた成人女性乳癌患者 : 276例

(化学療法後の期間平均値 : 29.6ヵ月)

介入

対象を以下の2群に1 : 1の割合で無作為に割り付けた

• ドネペジル群 : 140例

ドネペジル5mgを1日1回6週間投与→10mgに漸増し18週間投与

• プラセボ群：136例

プラセボを1日1回18週間投与

主要評価項目

Hopkins Verbal Learning Test-Revised (HVLT-R) における即時想起

副次評価項目

その他の認知機能

(注意力､ 遂行機能､ 言葉の流暢さ､ 処理速度など)

認知機能と自己報告認知機能は､

• ベースライン時
• ランダム化後12週
• 24週 (介入終了時)
• 36週 (ウォッシュアウト時)

に評価された｡

主要評価項目および副次評価項目における治療差は､ 治療､ 時間､ 両者の交互作用､ ベースラインのアウトカムレベル､ 年齢層別化､ 経時的参加者内相関を考慮するための非構造化共分散行列を共変量として評価した｡

HVLT-Rスコア平均値に差は認めず

主要評価項目

24週時点でのHVLT-Rスコア平均値

• ドネペジル群 : 25.98
• プラセボ群 : 26.50

p=0.32

副次評価項目

12週､ 24週､ 36週の時点で､ 注意力､ 遂行機能､ 言葉の流暢さ､ 処理速度､ 自己報告による認知機能に関して､ 両群間に統計学的有意差はみられなかった｡

また､ 内分泌療法および閉経状態は結果に影響を及ぼさなかった｡

ドネペジルは認知機能を改善せず

著者らは ｢化学療法終了後1~5年が経過し､ ケモブレインを有する乳癌生存者において､ ドネペジルはプラセボと比較し､ 認知機能の有意な改善を示さなかった｣ と報告した｡