海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
国立がん研究センター東病院の吉野孝之副院長、 橋本直佳消化管内科/トランスレーショナルリサーチ支援室医員らの研究グループは、 広範な固形がんを対象とした日本初の産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクトであるMONSTARプロジェクトで実施された4つの多施設共同研究の統合解析結果を発表した。 結果、 分子プロファイルから見つけられたバイオマーカーに適合した標的治療を受けた患者では、 標的治療を受けていない患者に比べて全生存期間 (OS) が有意に延長することが明らかとなった。 本研究はCancer Discovにて発表された。
MONSTARプロジェクトの価値を証明する研究です。 コントロール群(Real-world data群)がないのがlimitationとなりますが、 世界最大規模の素晴らしい取り組みです。
SCRUM-Japan MONSTAR-SCREENプロジェクト (以下、 MONSTARプロジェクト) は、 肺癌以外の広範な固形がんを対象とした日本初の産学連携下の大規模ながんの遺伝子解析プロジェクトである。 2015年以来、 これまでに2万4千人以上の患者がMONSTARプロジェクトの研究に参加し、 遺伝子や分子の特徴を調べたマルチオミクス解析の結果と詳しい臨床情報を集めたデータベースが作られている。
本プロジェクトで実施した4件の臨床試験には、 進行固形癌患者1万6,144例が登録された。 2,108例が除外され、 残った1万4,036例のうち、 703例 (5.0%) がバイオマーカーに基づいてマッチングした臨床試験に参加した。
これらの患者の客観的奏効率 (ORR) は29.2% (95%CI 24.8-33.6%)、 病勢コントロール率 (DCR) は66.3% (同61.9-70.7%) で、 12例は完全奏効 (CR) を達成した。 全生存期間OS中央値 (ORR達成例(197例)で評価) は14.8ヵ月 (95%CI 13.4-16.3ヵ月) であった。最も治療効果が高かった治験薬は、 抗HER2治療薬だった。
さらに、 臨床試験または実臨床においてバイオマーカーに適合する治療を受けた患者と、 適合する治療を受けなかった患者とを比較したところ、 前者では後者よりもOSが有意に延長した [ハザード比 : 0.77 (95%信頼区間 0.71-0.83)、 p<0.001]。
研究グループらは本結果について 「MONSTARプロジェクトで行った分子プロファイリングに基づき、 多くの患者さんが治験薬による治療を受けて有効な効果が得られており、 さらに、 バイオマーカーに適合する標的治療が患者さんの予後を改善する可能性が示された。」と述べた。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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