海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Winchesterらは、 米国の乳癌患者データを用いて、 術前療法後の治療反応を反映した新たな予後病期分類を開発、 検証した。 その結果、 術前療法の治療反応に基づき全生存期間 (OS) を予測する新たな予後病期分類システムが提示された。 この研究はJ Clin Oncol誌に発表された。
後ろ向き研究のためどのような理由で特定の患者にNACTが行われたかが不明であり、 選択バイアスの可能性がある点や、 全米がんデータベース (NCDB) には具体的な薬剤、 治療期間,術後補助療法の情報が含まれていない点をlimitationとして挙げています。
術前療法後の予後病期分類は、 米国がん合同委員会 (AJCC) による病期分類 (AJCC/TNM病期分類) には含まれていない。
そこでこの研究では、 術前療法を受けた患者に対して、 治療反応を標準化された病期分類と組み合わせることで、 この欠陥を補う予後病期分類システムを開発・検証した。
米National Cancer Databaseより2010~2018年に術前療法を受けた乳癌患者14万605例を抽出し、 臨床病期と術前療法後の病理学的病期の比較に基づき、 以下の3つのカテゴリーを設けた。
カテゴリーごとに、 臨床病期、 エストロゲン受容体 (ER)、 プロゲステロン受容体 (PR)、 HER2、 組織学的Gradeに関する単変量および多変量解析が実施された。
各カテゴリーに対する予測モデルは、 ブートストラップ法を用いて検証された。 また、 キャリブレーションプロットにより、 訓練データおよび検証データセットにおける3年生存率の予測値と実測値を比較した。
検証された各予測モデルはいずれも、 術前療法後の予後病期分類において統計的に有意な生存率の差を示した。
術前療法後にypStage Ⅰに分類されたのは、 pCRを達成した患者では94.2%であったのに対し、 無奏効の患者では35.5%に留まった。
pCRを達成した患者では、 臨床病期の進行によりOS率が漸進的ながらわずかに低下した。
一方、 TNBCやHER2陽性乳癌の無奏効患者では、 臨床病期の進行によりOSの著明な低下が認められた (高GradeTNBC: cStage Ⅰ 89% vs cStage ⅢB/ⅢC 50%)。
また、 Grade2のルミナルA型では、 無奏効患者であってもOSの低下は比較的軽微だった (cStage Ⅰ 97% vs cStage ⅢB/ⅢC 81%)。
著者らは 「今回提示したデータは、 術前療法を受ける患者が今後さらに増加するなかで、 AJCC/TNM病期分類の検討に役立つものとなるであろう」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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