HOKUTO編集部
21日前

今年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2026) の泌尿器癌領域における個人的な二大テーマは、 「治療強化」 と 「患者選択」 です。 腎細胞癌では、 直ちに診療を変えるというよりも、 今後の治療戦略や患者選択を考える上で重要な示唆を与える研究が報告されました。 本稿では、 ASCO 2026で発表された泌尿器癌領域の主要演題を3回に分けて紹介するうち、 第3回として腎細胞癌に焦点を当てます。 今後の臨床実践や研究開発に影響を与えると考えられるトピックを取り上げ、 なぜその演題が重要なのか、 その後の課題は何であるかについて、 私見も交えながら整理します。

▼試験概要
KEYNOTE-564試験は、 高リスク淡明細胞型腎細胞癌に対する術後ペムブロリズマブ療法の有効性を検証した第III相試験です。 ASCO 2026では探索的に実施された循環腫瘍DNA (ctDNA) 解析の結果が報告されました。
▼結果
術後ctDNA陽性例は陰性例と比較して再発リスクが高く、 ctDNAが予後予測因子として有用であることが示されました。 一方で、 ctDNA陽性率は低く(5~8%程度)、 感度にも限界が認められました。
ペムブロリズマブによる治療効果の評価や患者選択への応用可能性が検討されましたが、 現時点ではctDNA単独で術後治療方針を決定できる段階には至っていません。 腎癌における微小残存病変 (MRD) 評価の可能性と課題の両方を示した解析として注目されました。
腎癌はもともとctDNAの放出が少ないlow shedding tumorであり、 ctDNA陽性例は予後不良である一方、 陰性例にも一定数の再発が認められます。 現時点ではctDNA単独で術後治療方針を決定することは難しく、 他の臨床因子やバイオマーカーとの統合的な評価が必要と考えられます。
▼試験概要
RAMPART試験は、 腎摘除後の再発リスクを有する腎細胞癌を対象に、 術後デュルバルマブ療法の有効性を検証した国際共同第III相試験です。 患者はデュルバルマブ単独群またはactive monitoring群に割り付けられ、 主要評価項目として無病生存期間 (DFS) が評価されました。
▼結果
今回報告された解析では、 デュルバルマブ単独療法はactive monitoringと比較してDFSを統計学的に有意に改善しませんでした。 一方、 同試験では別群としてデュルバルマブ+トレメリムマブ併用群も設定されており、 併用療法はactive monitoring群と比較してDFSを有意に改善しています (ESMO2025で報告)。
腎癌の術後免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 治療については、 KEYNOTE-564、 IMmotion010、 CheckMate 914、 RAMPARTなど試験ごとに異なる結果が報告されており、 その解釈は容易ではありません。 今回の結果は、 抗PD-(L)1抗体単独では不十分である可能性を示唆する一方、 抗CTLA-4抗体との併用戦略の重要性を改めて示唆する結果と考えられます。
今後は、 抗CTLA-4抗体やHIF-2α阻害薬を併用する意義など、 複数の臨床試験の長期フォローアップデータを参考に術後治療の最適解を検討していく必要があります。
▼試験概要
ASCO 2026では、 腎細胞癌の術後免疫療法を受けた患者を対象に、 治療選択に対する後悔 (Decision Regret) を評価した解析が報告されました。 従来のQOL評価では捉えにくい患者視点のアウトカムに着目し、 有害事象の種類や持続期間と治療満足度との関連が検討されました。
▼結果
特に永続的な内分泌障害など、 患者が 「人生に影響を与える毒性」 と認識する有害事象は、 Decision Regretの増加と関連していました。
本研究は、 有効性や安全性だけでなく、 患者が治療をどのように受け止めるかという観点の重要性を示した報告として注目されました。 大規模臨床試験のQOL解析では、 「統計学的有意差なし」 と報告されることが少なくありません。 しかし、 患者が実際に重視する有害事象と、 従来のQOL指標で評価される項目は必ずしも一致しません。
本研究は、 腎癌の術後療法を検討する際に、 どのように治療のリスクベネフィットを患者に説明すべきかを改めて考える上で非常に参考となりました。
【ハイライト】ASCO2026特集|領域別 注目演題レポート&解説まとめ(更新中)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。