HOKUTO編集部
2ヶ月前
2024年9月7~10日に米・サンディエゴで世界肺癌学会 (IASLC/WCLC 2024) が開催されました。 本稿では和歌山県立医科大学附属病院呼吸器内科・腫瘍内科准教授の赤松弘朗先生に、 同会における注目演題と、 発表内容から感じられた印象についてご解説いただきました。
大きなトピックスの発表はないものの、 次なる薬剤の有望株や臨床的に重要な臨床試験のサブセットが多く発表される世界肺癌学会では、 2024年も興味深い発表が目白押しでした。 今回は周術期/進行期における遺伝子変異陽性/陰性の非小細胞肺癌 (NSCLC)、 小細胞肺癌 (SCLC) のいずれも興味深い演題が多く、 話題に事欠かない学会であったと思います。
今回の世界肺癌学会では、 周術期における化学免疫療法の第2弾として、 第Ⅲ相AEGEAN試験のアップデートが報告されました。
しかし、 私自身がより面白いと注目したのは第Ⅲ相CheckMate 816試験 (術前療法) と第Ⅲ相CheckMate 77T試験 (周術期療法) の統合解析です。
また、 第Ⅱ相NeoCOAST-2試験のような探索的なプラットフォーム試験も今後の治療開発を占う上で重要でした。
第Ⅲ相HARMONi-2試験の中間解析では、 PD-1/VEGF二重特異抗体ivonescimabが抗PD-1抗体ペムブロリズマブに無増悪生存期間 (PFS) において優れるという、 重要な結果が報告されました。 ただし、 本試験は中国のみでの試験結果であり、 進行中の国際臨床試験での確認が待たれます。
また、 第Ⅲ相TROPION-Lung01試験のバイオマーカー解析により有望な治療効果が示され、 苦戦気味であった抗体薬物複合体 (ADC) の開発に大きな進展がありました。 他のADCもバイオマーカーによる選別の戦略をとっていくのかが注目されます。
EGFR変異陽性の進行期NSCLCでは第Ⅲ相MARIPOSA試験のアップデート解析の結果が報告されました。 これは今年の欧州臨床腫瘍学会 (ESMO 2024) で報告された耐性機序の解析とも併せて議論したい内容です。
このほか、 HER2陽性例に対しては、 2種類の新規チロシンキナーゼ阻害薬 (zongertinib、 BAY2927088) が有望な治療成績を報告しました。
また、 SCLCに対しては、 本邦での承認が待たれる二重特異性T細胞誘導 (BiTE) 抗体タルラタマブ以外に、 抗B7-H3抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan (I-Dxd)、 抗Trop-2抗体サシツズマブ ゴビテカンなど、 ADCの開発も順調に進行しています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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