【臨床Q&A】肺癌術後補助化学療法に用いるレジメン、 最もエビデンスレベルが高いのは?
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HOKUTO編集部

1年前

【臨床Q&A】肺癌術後補助化学療法に用いるレジメン、 最もエビデンスレベルが高いのは?

【臨床Q&A】肺癌術後補助化学療法に用いるレジメン、 最もエビデンスレベルが高いのは?

解説:赤松弘朗先生¹⁾  / 監修:津谷康大先生²⁾

1) 和歌山県立医科大学附属病院腫瘍センター 准教授
2) 近畿大学医学部外科学教室呼吸器外科部門 主任教授

今週のQ&A (肺癌)

Q. 術後補助化学療法で用いるレジメンで最もエビデンスレベルの高いものは?

  1. カルボプラチン+パクリタキセル、 その後にアテゾリズマブ
  2. シスプラチン+ビノレルビン+アテゾリズマブ (同時併用)
  3. シスプラチン+ビノレルビン、 その後にアテゾリズマブ

解説|これまでの知見¹⁾²⁾

免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) が導入される前後で状況は異なってきている。

術後補助療法へのICI適応拡大前

ICI以前では、 カルボプラチン (CBDCA) を用いた術後補助化学療法でpositive studyが存在しなかったため、 シスプラチン (CDDP) を用いることが標準であった (=CDDPが使用できない患者には原則術後補助化学療法は用いない)。

術後補助療法へのICI適応拡大後

IMpower010試験によってアテゾリズマブを用いた術後補助化学療法の有効性がPD-L1≥1%に対して示された。

この試験は以下の群を対象としている。

● 完全切除の非小細胞肺癌 (NSCLC)

 *第8版ではほぼ病理病期II-IIIA

● CDDPを用いた術後補助化学療法を行った者

📊IMpower010試験

腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現しているⅡ期~ⅢA期の患者において、 臨床病期や前治療の種類によらず、 アテゾリズマブによる術後補助療法がDFSを改善することが示された。 特に、 腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現しているⅡ期~ⅢA期のNSCLCにおいては、 再発部位が局所および遠隔のいずれにおいても、 支持療法 (BSC) と比較して再発までの期間を改善し、 再発部位での明確な違いがないことが示された。

内科医はこう考える

【臨床Q&A】肺癌術後補助化学療法に用いるレジメン、 最もエビデンスレベルが高いのは?

正解は3。 ただし最適化使用推進ガイドライン³⁾では「プラチナ製剤を含む」ものを対象としており、 実質CBDCAを許容している事になる。 このような集団に対するIMpower010の有効性は厳密には乏しい。 「(特にPD-L1≥50%に対して) Key drugはICIなので積極的に使用すべき」という意見と「CDDPを投与できない患者は何らかの臨床的問題点を有する事が多く、 このような対象へのICIの有効性は不明」という意見があり、 賛否の分かれる状況である。

外科医はこう考える

【臨床Q&A】肺癌術後補助化学療法に用いるレジメン、 最もエビデンスレベルが高いのは?

エビデンスレベルの高いものは3である。 術後プラチナ併用化学療法はCDDP併用のエビデンスレベルが高いが、 カルボプラチン + パクリタキセルを使用した術後補助化学療法の第3相試験も過去には行われており、 CBDCA併用化学療法も実行可能と考えられる⁴⁾⁵⁾。 日常臨床においては、 何らかの理由でCDDPを投与しにくい患者に対してCBDCA併用化学療法施行後にアテゾリズマブを投与するという選択肢もあり得ると思われるが、 その安全性や有効性は今後充分に検討される必要がある。

参考文献

  1. Adjuvant atezolizumab after adjuvant chemotherapy in resected stage IB-IIIA non-small-cell lung cancer (IMpower010): a randomised, multicentre, open-label, phase 3 trial.Lancet. 2021 Oct 9;398(10308):1344-1357.PMID: 34555333
  2. 日本肺癌学会. 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2022年版. 金原出版, 東京, 2022
  3. 厚生労働省. 最適使用推進ガイドライン アテゾリズマブ (遺伝子組換え) (販売名:テセントリク点滴静注 1200 mg) ~非小細胞肺癌~. 2018 (2022年5月改訂)
  4. Adjuvant paclitaxel plus carboplatin compared with observation in stage IB non-small-cell lung cancer: CALGB 9633 with the Cancer and Leukemia Group B, Radiation Therapy Oncology Group, and North Central Cancer Treatment Group Study Groups. J Clin Oncol. 2008 Nov 1;26(31):5043-51. PMID: 18809614
  5. A Multicenter Randomized Controlled Study of Paclitaxel plus Carboplatin versus Oral Uracil-Tegafur as the Adjuvant Chemotherapy in Resected Non-Small Cell Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2018 May;13(5):699-706. PMID: 29505900

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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