治療薬の進歩によりウイルス性肝炎も根治が期待できる時代となりました。 一方、無症状であることから肝炎ウイルスキャリアであることに無自覚であったり、 受診しない患者が多いのが現状です。 そこで介入の窓口となることが多い非専門医が、 容易に肝疾患を抽出できる方法の開発が求められてきました。 今回は注目を集めている神奈川県内科医会の「肝疾患簡易抽出シート」をご紹介します。
肝疾患簡易抽出シートを用いることで、 非専門医でも容易に精査を要する肝疾患患者を抽出することができる。
これまで軽微な肝疾患としても逃されていた患者からウイルス性肝炎の可能性のある者を見出し、 専門医療につなげることができる。
C型肝炎ウイルスは治療薬の進歩に伴い、 一定期間の経口薬投与で高率にウイルス除去ができるようになってきている。 一方で未だ多くの肝炎ウイルスキャリアが存在し、 ウイルス陽性を自覚していない者、 自覚していても無症状のため受診しない者がおり、 そのような症例の拾い上げが急務となっている。
肝疾患の抽出においては、 初期対応を担う「かかりつけ医」の役割が重要だが、 非専門医にとって原因検索は難しく、 診断に悩むことも多い。 そこで、 神奈川内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会は、 採血結果をもとに精査を要する肝疾患患者が見いだすことができる 「肝疾患簡易抽出シート」を作成し、 その普及に努めている。
保健指導判定値以上の肝機能障害を認める場合のチェック項目例を以下に提示する。 なお、 紹介過剰またはアンダートリアージにならぬよう、 患者の状態や地域のルールに合わせ運用することを推奨する。
肝機能異常患者においては、 病歴聴取と理学所見が重要である。 輸血・手術歴、 薬物濫用、 刺青・ボディピアスなどの病歴、理学所見のある患者においては、 B型、C型肝炎ウイルス検査を施行し、 陽性であれば専門医への紹介を推奨。
なお、 多量飲酒 (1日平均60g以上の飲酒) を認める場合、 多くは肝機能障害の原因としてアルコール性肝障害が示唆される。 減酒もしくは禁酒の励行と、アルコール関連問題を確認する。
AST・ALT (<31IU/L)、 γ-GTP (<51 IU/L)、 ALP (38~113 IU/L*) だけでなく、 抗核抗体(ANA)、 IgG-IgMを採血項目に含むことを推奨。
FIB-4indexによる肝線維化予測
年齢、 AST、 ALT、 血小板数の4項目から算出される肝線維化予測式のひとつである🔢FIB-4 indexの算出も推奨される。 スコアが1.3以上の場合、 肝線維化進行のリスクがあり、肝臓専門医もしくは地域基幹病院への紹介が望まれる。
B型・C型肝炎ウイルスの感染が陰性、抗核抗体・IgG-Mが基準値の場合、 飲酒量などの再聴取が必要。 ミトコンドリア抗体 (AMA) を追加測定 (保険診療病名は、 原発性胆汁性胆管炎疑い) すべきだが、 保険診療上の制限もあり、 AMA測定はどの段階で行うか、 IgM高値の場合を除き指示は控えている。
腹部超音波検査が施行できない医療機関も多いため、 診断難渋例を含め、 なるべく肝臓専門医へ紹介することを推奨。
2) 神奈川県内科医学会ホームページ:肝・消化器疾患対策委員会.
3) 厚生労働科学研究費補助金 (肝炎等克服政策研究事業) . 平成29年度 分担研究報告書. 横浜市の患者掘り起し事業. −肝疾患抽出簡易検査シートの取り組みについて−
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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