Kurlanderらは、 米国の地域医療システムを対象として薬局ベースの多面的な介入がプロトンポンプ阻害薬 (PPI) の過剰使用を減らすかどうかについて検討。 その結果、 PPI使用の減少との関連が示された。 本研究はBMJにおいて発表された。
📘原著論文
Impact of large scale, multicomponent intervention to reduce proton pump inhibitor overuse in integrated healthcare system: difference-in-difference study. BMJ. 2024 Apr 11:385:e076484. PMID: 38604668
👨⚕HOKUTO監修医コメント
多面的介入の研究はたくさんありますが、 一般化する (どこでも誰でも同じ介入ができる) ことが難しいです。 本研究は介入内容が明確に記載されていて、 どこでも同じような介入が可能である点が魅力です。
PPI過剰使用への介入の影響を検討
本研究の目的は、PPIの過剰使用を減らすための大規模で多面的な薬局ベースの介入が、 処方パターンや医療の利用、 臨床転帰に及ぼす影響について検討することであった。
米国の薬局で多面的介入
対象・方法
- 米国退役軍人医療制度 (US Veterans Affairs Healthcare System) のうち、 1つの地域医療システムがPPI過剰使用への薬局ベースの介入を実施し、 残りの17の地域医療システムは全て対照であった
- これらの地域医療システムで2009~19年にプライマリケアを受けた全員を対象とした
- 評価は6ヵ月ごとに実施し、 差分の差分法で分析
介入の内容
- 慢性的な使用に対する適切な適応が処方箋に記載されていない場合のPPI再処方の制限
- 6ヵ月以内に使用されなかった処方箋の無効化
- H₂受容体拮抗薬の電子処方の促進
- 患者と臨床医に対する教育
- 高用量のPPI処方を追跡するための、 薬剤師による報告ツールの作成
主要評価項目
6ヵ月間にPPIの処方箋を使用した患者の割合
初回処方とリフィル処方の両方を含む
副次評価項目
- 上部消化管出血リスクが高い患者におけるPPIが処方された日数の割合
- PPIまたはH₂受容体拮抗薬のいずれかの処方箋を使用した患者の割合
- PPIによる胃腸保護が適する高齢者の酸関連消化器疾患による入院
- 上部消化管疾患の診断のためのプライマリケア医の受診
- 上部消化管内視鏡検査
- PPIに関連する臨床症状
PPIの処方箋使用が7.3%減
1インターバルあたりの解析対象患者数の範囲
実施前のPPIの処方箋使用率 : 平均25.8%
実施前期間のPPIの処方箋使用率 : 平均25.4%
介入は以下と関連
変化率 -7.3% (95%CI -7.6~-7.0%)
- PPIによる胃腸保護が適する患者におけるPPI使用
変化率 -11.3% (95%CI -12.0~-10.5%)
- PPIまたはH₂受容体拮抗薬のいずれかの処方箋を使用した患者
変化率-5.72% (95%CI -6.08~-5.36%)
いずれも絶対的減少
介入は以下と非関連
- 上部消化管疾患の診断のためのプライマリケア医の受診
- 上部消化管内視鏡検査
- 胃腸保護が適する高齢患者における酸関連消化器疾患による入院
いずれも増加は認められなかった。
臨床的に意義のある変化は認められなかった。
PPI過剰使用に薬局の介入は効果的
著者らは 「薬局ベースの多面的な介入は、 全体的にはPPI使用の減少と関連していた。 胃粘膜保護が適切な患者でも関連はみられたものの、 臨床的利益と害のいずれについても最小限のエビデンスしか示さなかった」 と述べている。