海外ジャーナルクラブ
10ヶ月前
Kang氏らは、 血管内皮成長因子受容体 (VEGFR) を標的にしたチロシンキナーゼ阻害薬 (以下、 VEGFR-TKI) で治療を受けている成人癌患者を対象に、 動脈瘤や動脈解離のリスクについてコホート研究を行い検証した。 その結果、 VEGFR-TKIによる治療群はカペシタビンによる治療群に比べ、 大動脈解離 (ADD) のリスクが高かった。 本研究はJAMA Netw Open誌にて発表された。
国民健康保険サービスの全国請求データを用いた解析です。 癌のstageや大動脈解離のリスクに関する詳細データがないため、 かなりbiasの残った解析結果です。 このような健康保険サービスの請求データを用いた解析結果はより慎重に判断する必要があります。
VEGFR-TKIは、 癌の増殖および転移を抑制する治療薬として開発された。 同薬は甲状腺機能低下症や蛋白尿、 動脈瘤やAADなどの有害事象が報告されているが、 特に大動脈解離の有害事象の発症率については明らかにされていなかった。
新たに経口VEGFR-TKI*で治療を開始した40歳以上の癌患者
2007~20年における韓国国民健康保険サービスの全国請求データを用いて実施され、 1年間の追跡調査が行われた。 経口VEGFR-TKIまたはカペシタビンを処方された癌患者が登録され、 対照群は同じ期間にカペシタビンを処方された40歳以上の癌患者とした。 データは2022年9月から2023年4月まで解析された。
治療開始から1年後までの大動脈解離 (破裂の有無を問わない)
大動脈瘤・大動脈解離、 大動脈解離の破裂
試験の対象となった12万7,710例の癌患者のうち、 3万7,308例にVEGFR-TKIが、 9万402例にカペシタビンが投与されていた。 VEGFR-TKI投与群に対し、 傾向スコアがマッチするカペシタビン投与群を選出し、 計2万7,535組を作成した。
傾向スコアがマッチしたVEGFR-TKI投与群において、 治療開始から1年後までの大動脈解離の発症率はカペシタビン投与群に比較して有意に高いことが示された。
HR 1.48(95% CI 1.08-2.02)
いずれも両群での有意差は認められなかった。
癌患者に対する経口VEGFR-TKI投与は、 大動脈解離の発症リスクの増加と関連していた。 この結果は、 VEGFR-TKIに関連する有害事象の社会経済的負担を軽減するための参考になる可能性がある。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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