HOKUTO編集部
2年前
フルキンチニブ (本邦未承認) は、 血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR) -1、 2、 3に対する経口チロンシンキナーゼ阻害薬 (TKI) である。
日本も参加した国際第Ⅲ相ランダム化比較試験FRESCO-2では、 治療抵抗性かつ転移性の大腸がん患者を対象に、 フルキンチニブの有効性および安全性をプラセボを対照に検証。
昨年 (2022年) の欧州臨床腫瘍学会 (ESMO 2022) では、 同試験の主解析の結果が報告され、 全生存期間 (OS) 中央値、 および無増悪生存期間 (PFS) 中央値の有意な延長が示された。
【主要評価項目】OS中央値
P<0.001 HR 0.66 (95%CI 0.55〜0.80)
【副次評価項目】PFS中央値
P<0.001 HR 0.32 (95%CI 0.27〜0.39)
JSMO 2023では、 同試験の日本人集団におけるサブ解析の結果が、 国立がん研究センター東病院消化管内科の小谷大輔氏により初めて報告された。
FRESCO-2試験に登録された日本人患者はフルキンチニブ群で40例、 プラセボ群で16例。
主な結果は以下のとおりで、 OS、 PFSともにフルキンチニブ群で良好な傾向を認めた。
OS中央値 (95%CI)
P=0.055 HR 0.419 (95%CI 0.191〜0.921)
PFS中央値 (95%CI)
P=0.004 HR 0.272 (95%CI 0.132〜0.562)
主なグレード3以上の有害事象 (AE) として、 高血圧 (23.1%)、 手足症候群 (17.9%)、 蛋白尿 (7.7%) を認めた。
これらは、 FRESCO-2 試験の全集団と比較して、 日本人集団ではやや頻度が高い傾向だったものの、 小谷氏は「いずれも許容範囲内と考えられた」と考察した。
今後、 国内においても治療抵抗性転移性大腸がん患者を対象にフルキンチニブ の承認が期待される。
昨年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2022)で発表された同試験のデータでは、レゴラフェニブ、トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)の両剤いずれもが使用歴のある患者が4割弱含まれるなか、前治療歴に関わらず、フルキンチニブの有効性が示唆されていた。
今回新たに示された日本人コホートのデータにおいても、同様に両群でレゴラフェニブとFTD/TPIの両剤いずれも使用歴のある患者が7割前後含まれる対象において、全体コホート(HR 0.662)よりもOSにおける有効性が高い傾向(日本人コホート;HR 0.419)さえ見て取れる結果となった。後方ラインにおける選択バイアスがあると思われるが、少なくとも全体コホートと矛盾のない結果である。
本薬剤は武田薬品から2023年に国内申請が予定されており、近い将来に使用可能となることが期待されている。
一方で日本人コホートでは、有害事象(AE)の発現頻度が高い傾向にあった。レゴラフェニブでは最適用量を検証したReDOS試験の結果に基づいた用量調整が行われるようになったが、フルキンチニブにおいても使用法の適正化が必要となるかもしれない。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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