聖路加国際病院 総合診療プログラム
2年前
尿のNa排泄亢進と細胞外液量減少 (volume depletion) を伴う低Na血症を認める疾患群として、 CSWS、 RSWS、 MRHEが挙げられる。
1.CSWS:中枢性塩類喪失症候群
2.RSWS:腎性塩類喪失症候群
3.MRHE:鉱質コルチコイド反応性低Na血症
これらの疾患は尿Na>30mEq/Lとなるので、 SIADHと酷似するが、 治療方法が異なるためSIADHとの鑑別が大切になる。 細胞外液量減少がある場合や、 SIADHの治療をしても反応がない場合にこれら3疾患を鑑別に考える。
CSWSでは、 脳損傷・くも膜下出血などの中枢神経疾患によって、 尿からNa排泄が亢進し、 細胞外液量減少をきたす病態である。 罹患後2-10日以内で発症し、 3-4週間で自然に軽快する。 SIADH よりは頻度が低いと言われている。
SIADHも中枢神経疾患で生じ、 血液検査や尿検査が類似すること、 臨床的な細胞外液量の評価はしばしば困難なこともあるため、 両者の鑑別は非常に難しい。
CSWSではNa補正後に🔢 FeUA (尿中尿酸排泄率)は30%以上*になりSIADHとの鑑別に有用と言われている¹⁾が、 まだエビデンスには乏しく診断のゴールドスタンダードにはなっていない。 なお、 レニン・アルドステロン系は低下するとされる²⁾。
近位尿細管障害により尿からNa排泄亢進し、 細胞外液量減少をきたす病態である。 RSWSは稀ではあるが、 シスプラチンなどの化学療法が原因として知られている。
細胞外液量減少のため交感神経系・レニンアルドステロン系が亢進し、 尿からNa排泄が低下するはずだが、 近位尿細管障害のため尿からNa再吸収ができず、 尿からNa排泄が亢進し続ける。
上記所見から考慮する¹⁾が、 エビデンスには乏しい。 誤ってSIADHと診断し水分制限を行うと、 低Na血症の悪化や脱水の進行の可能性がある。
高齢者の低Na血症の33例中8例に見られたという報告があり、 SIADHと区別すべき病態として日本人の石川先生らが提唱された³⁾。 高齢者では加齢におけるレニン・アルドステロン系の反応性の低下により、 尿細管におけるNa再吸収ができず、 二次的に細胞外液量減少をきたす⁴⁾。
またMRHEは相対的副腎皮質機能低下症と考えられることもある。 MRHEの治療は水分・塩分補充、 鉱質コルチコイド補充であり、 SIADHの治療である水制限では悪化するため鑑別が重要。
1) Kidney Int. 2009;76(9):934-8.
2) Perm J. 2010 Summer;14(2):62-5.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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