【鑑別】CSWS、RSWS、MRHE、SIADH (体液・細胞外液量の減少する低ナトリウム血症の検査と治療)
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聖路加国際病院 総合診療プログラム

1年前

【鑑別】CSWS、RSWS、MRHE、SIADH (体液・細胞外液量の減少する低ナトリウム血症の検査と治療)

【鑑別】CSWS、RSWS、MRHE、SIADH (体液・細胞外液量の減少する低ナトリウム血症の検査と治療)
変更履歴:2023/07/18...CSWSのレニン・アルドステロン系の表記に誤りがありました。 文献2をもとに「低下」に変更しました。

尿のNa排泄亢進と細胞外液量減少 (volume depletion) を伴う低Na血症を認める疾患群として、 CSWS、 RSWS、 MRHEが挙げられる。

 1.CSWS:中枢性塩類喪失症候群

     Cerebral Salt-Wasting Syndrome

 2.RSWS:腎性塩類喪失症候群

     Renal Salt Wasting Syndrome

 3.MRHE:鉱質コルチコイド反応性低Na血症

     Mineralcorticoid-Responsive Hyponatremia
【鑑別】CSWS、RSWS、MRHE、SIADH (体液・細胞外液量の減少する低ナトリウム血症の検査と治療)
これらの疾患は尿Na>30mEq/Lとなるので、 SIADHと酷似するが、 治療方法が異なるためSIADHとの鑑別が大切になる。 細胞外液量減少がある場合や、 SIADHの治療をしても反応がない場合にこれら3疾患を鑑別に考える。 

1.CSWSについて

中枢性塩類喪失症候群:Cerebral Salt-Wasting Syndrome

脳損傷・くも膜下出血後に発症

CSWSでは、 脳損傷・くも膜下出血などの中枢神経疾患によって、 尿からNa排泄が亢進し、 細胞外液量減少をきたす病態である。 罹患後2-10日以内で発症し、 3-4週間で自然に軽快する。 SIADH よりは頻度が低いと言われている。 

Na補正後にFeUA≧30%

SIADHも中枢神経疾患で生じ、 血液検査や尿検査が類似すること、 臨床的な細胞外液量の評価はしばしば困難なこともあるため、 両者の鑑別は非常に難しい。

CSWSではNa補正後に🔢 FeUA (尿中尿酸排泄率)は30%以上*になりSIADHとの鑑別に有用と言われている¹⁾が、 まだエビデンスには乏しく診断のゴールドスタンダードにはなっていない。 なお、 レニン・アルドステロン系は低下するとされる²⁾。

*低尿酸血症が持続する、 これはCSWSにおける近位尿細管障害が遷延するためと推測されている

2.RSWSについて

腎性塩類喪失症候群:Renal Salt Wasting Syndrome

シスプラチンなどの化学療法が原因

近位尿細管障害により尿からNa排泄亢進し、 細胞外液量減少をきたす病態である。 RSWSは稀ではあるが、 シスプラチンなどの化学療法が原因として知られている。 

細胞外液量減少のため交感神経系・レニンアルドステロン系が亢進し、 尿からNa排泄が低下するはずだが、 近位尿細管障害のため尿からNa再吸収ができず、 尿からNa排泄が亢進し続ける。 

血清P低値、 FeP>20%

上記所見から考慮する¹⁾が、 エビデンスには乏しい。 誤ってSIADHと診断し水分制限を行うと、 低Na血症の悪化や脱水の進行の可能性がある。

3.MRHEについて

鉱質コルチコイド反応性低Na血症 Mineralcorticoid-Responsive Hyponatremia

加齢によりRA系の反応性低下

高齢者の低Na血症の33例中8例に見られたという報告があり、 SIADHと区別すべき病態として日本人の石川先生らが提唱された³⁾。 高齢者では加齢におけるレニン・アルドステロン系の反応性の低下により、 尿細管におけるNa再吸収ができず、 二次的に細胞外液量減少をきたす⁴⁾。 

相対的副腎皮質機能低下症とされる

またMRHEは相対的副腎皮質機能低下症と考えられることもある。 MRHEの治療は水分・塩分補充、 鉱質コルチコイド補充であり、 SIADHの治療である水制限では悪化するため鑑別が重要。

参考文献

1) Kidney Int. 2009;76(9):934-8.

2) Perm J. 2010 Summer;14(2):62-5.

3) J Clin Endocrinol Metab. 2001;86(4):1665-71.

4) Medicine (Baltimore). 2017;96(27):e7154.

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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