HOKUTO編集部
1年前
今回は、「ASCO 2023」の肺癌領域における注目トピックスを赤松弘朗先生に領域別に取り上げていただきました。
まず雑感ですが、今回の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)は、日本人参加者数が大幅に戻ってきたものの、施設当たりの参加者数はやや減っている印象でした。ウェブ配信で情報収集が可能になった影響と思われますが、ポスター発表者とのディスカッションなど現地でしか得られない臨場感も重要と感じています。
周術期療法については、日常臨床が着々と変わりつつあるのを実感。ADAURAのOSはHR 0.49と圧倒的であり、これで日本のガイドラインが変わらなければ嘘でしょう。周術期の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の開発については、KEYNOTE-671、NEOTORCHなどpositiveな第Ⅲ相試験の結果が報告され、術前のICI使用に拍車がかかる印象です。術後にまでICIを使う必要があるのか、は今後のトピックと思われます。
EGFR陽性NSCLCの術後オシメルチニブがOS延長:ADAURA >>詳細はこちら
NSCLC術前+術後でのペムブロリズマブが奏効:KEYNOTE-671 >>詳細はこちら
NSCLC術前+術後での抗PD-1抗体toripalimabでEFS改善:NEOTORCH >>詳細はこちら
ICIの有効性が否定されたKEYNOTE-789は予想通りだったとはいえ重要な試験結果でした。JCOG1404/WJOG8214L (AGAIN) ではEGFR-TKIと化学療法の交代併用がネガティブでしたが、同時併用を行っているFLAURA2の結果が今年後半の目玉になると思われます。
オシメルチニブ抵抗性肺がんへのペムブロリズマブ+PEM/Chemoで予後改善せず: KEYNOTE-789 >>詳細はこちら
EGFR陽性NSqNSCLCへのゲフィチニブと化学療法の交代併用でOS延長せず:JCOG1404/ WJOG8214L (AGAIN) >>詳細はこちら
日常臨床に近い話題としてはNEJ057(高齢者におけるICI+chemo vs ICIのレトロ解析)が興味深かったです。 未承認のものではTROPION-Lung2にみられるような抗体薬物複合体(ADC)の台頭が実感されました。ICI耐性後の治療開発はまだ目ぼしいものが出てきていない印象です。
75歳以上のPD-L1陽性NSCLCへのICI単独 vs ICI併用の比較:NEJ057 >>詳細はこちら
ADC +ペムブロリズマブ±Chemoがドライバー遺伝子変異陰性NSCLCで奏効:TROPION-Lung02 >>詳細はこちら
今年は各領域で重要な発表が相次ぎましたが、日常臨床への影響は領域毎にさまざまでした。 薬剤開発面では中国初の新規薬剤の報告が非常に多く、勢いを感じました。他がん腫ではメラノーマにおけるmRNAワクチン、手足症候群に対する外用NSAIDsなど、斜め上からの報告も興味深かったです。
mRNA-4157+ペムブロリズマブで高リスクメラノーマのDMFS延長>>詳細はこちら
カペシタビン誘発性の手足症候群の予防に外用NSAIDs(ジクロフェナク)が有効>>詳細はこちら
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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