海外ジャーナルクラブ
6ヶ月前
Takeshimaらは、 ガイドラインで推奨されている睡眠薬の単剤療法を受けた患者を対象に、 各睡眠薬の単剤療法失敗リスクなどについて、 レセプトデータベースを用いた後ろ向き観察研究で検討した。 その結果、 エスゾピクロンと比較して、 ゾルピデムとトリアゾラムで治療失敗リスクが低く、 スボレキサントとラメルテオンで長期処方リスクが低かった。 本研究はJAMA Netw Openにおいて発表された。
レセプトデータベース研究は、 診断の詳細 (急性、 慢性)、 重症度 (不眠)、 結果の理由 (単剤治療を中止した理由) などが不明のためバイアスの残された研究成果になります。 しかしながら、 JAMA Netw Open (JAMAとは全く違いますが) 誌に掲載されたことはpositiveにとらえてよいと思います。
不眠症のガイドラインでは複数の睡眠薬が推奨されているが、 実臨床で最も有用な睡眠薬は明らかになっていない。 本研究では、 ガイドライン*で推奨されている睡眠薬のうち、 単剤療法失敗のリスクが低い薬剤のほか、 長期処方リスクが高い薬剤を特定することを目的としている。
23万9,568例のレセプトデータを解析した (年齢中央値45歳、 2005年4月1日~21年3月31日)。
💊解析対象の単剤療法
- スボレキサント (ベルソムラ®︎)
- ラメルテオン (ロゼレム®︎)
- エスゾピクロン (ルネスタ®︎)
- ゾルピデム (マイスリー®︎)
- トリアゾラム (ハルシオン®︎)
6ヵ月以内の睡眠薬の変更・追加と定義された。
単剤療法が失敗しなかった患者における単剤療法の中止で、 6ヵ月以内における、 2ヵ月連続の睡眠薬の無処方と定義された。
10.3% (2万4,778例) が単剤療法に失敗した。 エスゾピクロンと比較したときの各薬剤の結果は以下のとおりであった。
ラメルテオン : エスゾピクロンより多かった
調整HR : 1.23 (95%CI 1.17-1.30)、 p<0.001
ゾルピデム : エスゾピクロンより少なかった
調整HR : 0.84 (95%CI 0.81-0.87)、 p<0.001
トリアゾラム : エスゾピクロンより少なかった
調整HR : 0.82 (95%CI 0.78-0.87)、 p<0.001
スボレキサント : エスゾピクロンと有意差なし
調整HR : 1.04 (95%CI 0.99-1.08)、 p=0.09
単剤療法に失敗しなかった患者のうち、 84.6%が単剤治療を中止した。 エスゾピクロンと比較したときの各薬剤の結果は以下のとおり。
ラメルテオン : エスゾピクロンより多かった
調整OR : 1.31 (95%CI 1.24-1.40)、 p<0.001
スボレキサント : エスゾピクロンより多かった
調整OR : 1.20 (95%CI 1.15-1.26)、 p<0.001
ゾルピデム : エスゾピクロンと有意差なし
調整OR : 1.00 (95%CI 0.97-1.04)、 p=0.97
トリアゾラム : エスゾピクロンと有意差なし
調整OR : 1.02 (95%CI 0.97-1.07)、 p=0.50
著者らは、 「本研究では交絡因子が制御されておらず、 これらの結果からガイドラインで推奨されている睡眠薬の薬理学的特性に関する結論を得ることはできない」 として、 不眠症の診断 (慢性 vs 急性)、 不眠症と精神症状の重症度、 睡眠薬処方に対する医師の態度といった交絡因子を考慮した研究の必要性を強調している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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