海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Yenらは、 2型糖尿病を併発した全身性エリテマトーデス (SLE) を対象に、 SGLT2阻害薬の使用がループス腎炎の発症や進行、 ならびに透析や腎移植、 心不全、 死亡などの腎臓と心臓の転帰にどのように関連するかを後ろ向き観察研究で検討した。 その結果、 SGLT2阻害薬の使用により患者のループス腎炎、 透析導入、 腎移植のリスク低下が示された。 本研究はJAMA Netw Openにおいて発表された。
JAMA Open誌に採用される研究は、 研究テーマは興味深いのですがどうしても大きなbiasが残ったままの研究が多いです。 本研究でも喫煙やさまざまなmissing data, 確定診断などの要素がlimitationとなっています。
ループス腎炎はSLEの主要な合併症であり、 ほとんどの症例は診断後5年以内に発生する。 過去のメタ解析の結果、 SGLT2阻害薬のもつ腎保護作用と心保護作用が、 ループス腎炎のリスクを減少させる可能性が示されている。
国際疾病分類第10版臨床修正版 (ICD-10-CM) に基づきSLEと診断され、 かつ2型糖尿病を併発していると診断された患者
SGLT2阻害薬の使用有無によりSGLT2阻害薬使用者群*¹とSGLT2阻害薬非使用者群*²の2群に分類し、 1 : 1の割合で傾向スコアマッチングによる観察研究が行われた。
なお、 SGLT2阻害薬非使用者のインデックス日は 「SLEおよび2型糖尿病の初回診断日」 と定義された。 また、 両群でインデックス日の前日または当日に特定イベント (ループス腎炎、 透析、 腎移植、 心不全、 死亡) のいずれかが発生した患者は除外された。
Kaplan-Meier法とCox比例ハザード回帰モデルを用いて、 SGLT2阻害薬使用者群におけるループス腎炎、 透析、 腎移植、 心不全、 死亡の5年調整ハザード比 (AHR) を算出した。
適格者31,790例より、 SGLT2阻害薬使用者と非使用者でマッチした各1,775組が傾向スコアに基づいて分類された。 患者平均年齢は56.8歳で、 3,012例が女性だった。
SGLT2阻害薬使用者群のループス腎炎、 透析、 腎移植、 心不全、 死亡のAHRが有意に低下した。
ループス腎炎
AHR 0.55 (95%CI 0.40-0.77)、 p<0.001
透析
AHR 0.29 (95%CI 0.17-0.48)、 p<0.001
腎移植
AHR 0.14 (95%CI 0.03-0.62)、 p<0.01
心不全
AHR 0.65 (95%CI 0.53-0.78)、 p<0.001
死亡
AHR 0.35 (95% CI 0.26-0.47)、 p<0.001
著者らは「SLEかつ2型糖尿病を併発していると診断された患者において、SGLT2阻害薬使用者は非使用者に比べてループス腎炎、透析、腎移植、心不全、全原因死亡のリスクが有意に低かった。この結果から、SGLT2阻害薬はSLEおよび2型糖尿病患者における腎保護および心保護に有効であることが示唆された」と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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