海外ジャーナルクラブ
9ヶ月前

Hyslopらは、 ミトコンドリアDNA (mtDNA) に病的バリアントを有するミトコンドリア病の女性患者を対象に、 バリアントの児への遺伝防止を目的とした前核移植によるミトコンドリア提供および着床前遺伝子検査 (PGT) の有効性を前向き介入研究で検討した。 その結果、 前核移植によるミトコンドリア提供は、 ヒト胚の生存能力と両立可能であり、 前核移植とPGTを統合したプログラムは、 病的mtDNAバリアントの遺伝を防止するのに有効であった。 本研究はNEJM誌において発表された。
本文の結論は下記のように慎重な記載となっています。
「現在、 出生児の健康状態やヘテロプラスミーの有無について長期的評価を進めており、 この方法が病的mtDNAバリアントを有する女性の選択肢として確立するには、 さらなるデータの蓄積が必要である。 」
mtDNAに病的バリアントを有するミトコンドリア病の女性患者から出生した児は、 「mtDNA疾患」 と総称されるさまざまな臨床症状のリスクがある。
前核移植によるミトコンドリア提供では、 非罹患女性から提供された除核受精卵に、 罹患女性の受精卵の核ゲノムを移植する。 したがって、 前核移植は、 罹患女性の遺伝情報を有しつつ、 mtDNA疾患のリスクが低い児を出生できる可能性が得られる。
本研究 (前向き介入研究) では、 mtDNAに病的バリアントを有するミトコンドリア病の女性患者を対象に、 バリアントの児への遺伝防止を目的とした前核移植によるミトコンドリア提供およびPGTの有用性を検討した。
mtDNAに病的バリアントを有し、 これらのバリアントの児への遺伝防止を望むミトコンドリア病の女性患者に対して、 前核移植によるミトコンドリア提供、 またはPGTを受けることを提案した。
ヘテロプラスミー (バリアントがmtDNAのコピーの一部に存在する) の患者には PGTを、 ホモプラスミー (バリアントがmtDNAのすべてのコピーに存在する) の患者またはヘテロプラスミーレベルが高い患者には前核移植を提案した。
前核移植群として卵細胞質内精子注入法を受けた22例中8例 (36%) と、 PGT群として卵細胞質内精子注入法を受けた39例中16例 (41%) で、 臨床的な妊娠が確認された。
前核移植群では8例が生児出生にいたり、 1例が妊娠中、 PGT群では18例が生児出生に至った。
前核移植を受けた母親から出生した新生児8例の血中ヘテロプラスミーレベルは、 検出不能~16%の範囲であった。 母親由来の病的mtDNAバリアントレベルは、 対応する除核接合体と比較して、 新生児6例で95~100%、 2例で77~88%低減した。
母親がPGTを受けた新生児18例では10例でヘテロプラスミーレベルが判明しており、 検出不能~7%の範囲であった。
著者らは 「前核移植によるミトコンドリア提供は、 ヒト胚の生存能力と両立可能であることが明らかになった。 前核移植とPGTを統合したプログラムは、 ホモプラスミーやヘテロプラスミーの病的mtDNAバリアントの遺伝を防止するのに有効であった」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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