寄稿ライター
11ヶ月前
こんにちは、 Dr.Genjohです。 連載 「データが示す 石川の未来図」 の4回目は、 能登北部で進行している4病院の統合案について考えましょう。
これまでの連載でも触れていますが、 能登北部の人口は今後急激な減少が見込まれます。 厚生労働省のワーキンググループ (2023年3月) で石川県が示した 「地域医療構想の進め方」 によると、 2020年時点では6万人であった人口は2045年時点で2.9万人まで急減します。
現時点で人口の過半数は高齢者であるため、 高齢者割合の増加に伴う患者数増も期待できません。 2045年時点で入院・外来患者数ともに現在の50~60%まで低下します。
能登北部の医療需要は今後急減すると言っても差し支えないでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所の 「人口統計資料集(2023)改訂版」 によると、 2020年度の全国平均人口密度は338.2人/km²。 一方、 能登北部は52.96人/km²です。
能登北部医療圏には穴水町、 輪島市、 能登町、 珠洲市の4つの市町が存在します。 全国平均人口密度の6分の1以下の地域ですが、 それぞれに穴水総合病院、 市立輪島病院、 公立宇出津総合病院、 珠洲市総合病院といった総合病院が1つずつ存在します。
県の資料によると、 各病院とも、 内科、 外科、 整形外科以外の科では常勤医の確保が難しく、 非常勤医師の応援を頼るしかありません。 各専門科の医師が隔日でしか勤務していないため、 総合病院でありながら連続した専門治療が困難となっています。
各病院の医師は、 金沢大学 (地域枠) 卒業生、 義務年限期間中の自治医科大学卒業生が約1/3を占める状況です。 地方で既定の年限勤務しなければならない制約を受けた医師の労働力に頼らざるを得ない状況であり、 労働力供給の安定性は乏しいと言えます。
県が2022年に実施した調査では、 特に奥能登(能登北部)住民の希望として 「診療科を充実させる」 「近隣の病院の統廃合により遠くても大きな病院をつくる」 割合が明確に高かったことが示されています。
4つの総合病院としても 「医療従事者の減少に伴うダウンサイジング」 「医療機関の集約化」 を考える声が挙がっています。
能登北部の医療需要が低下すること▽人口密度が低いのに総合病院が4つも存在し非効率であること▽医療従事者が不足し専門治療が困難であること▽県民や総合病院の意図――などを総合して解決する方法として、 能登北部4病院の機能を集約させ、 その中心に大きな総合病院を創設する案が練られています。
地元紙の記事によれば、 2024年能登半島地震の後にも馳浩知事は 「奥能登統合病院は創造的復興に不可欠」 と意気込みを明らかにしています。
一方、 既存4病院は専門的治療を統合病院にゆだねることで、 自らはダウンサイジングして地域医療を支える医療機関へと変化していくと考えられます。
先日の能登半島地震の影響を受け、能登北部4病院で退職の意向を示す看護師が相次いでいる事が報じられています。 運用可能な入院病床数も大幅な削減が見込まれており、 今後能登北部地方での医療需要と医療供給が予想を超えて減少していく可能性は高いと考えられます。
既存4病院の広報医療機関化、奥能登総合病院への集約化は予想以上のスピードで進行していくかもしれません。
Xアカウント : @DrGenjoh
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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