HOKUTO編集部
1ヶ月前
下部消化管領域における実臨床の課題を専門医の視点から解説するシリーズです。ぜひご活用ください。
▼1次治療には経口ベース・点滴ベースが存在
大腸癌1次治療の選択肢としては、 経口ベースの治療もしくは点滴ベースの治療があります。
【経口ベースの治療例】
【点滴ベースの治療例】
▼経口・点滴の治療効果は基本的に同等
CAPOX療法とFOLFOX療法の非劣性を検証するNO16966試験¹⁾、 FOLFOX+ベバシズマブ(BEV)療法とCAPOX+BEV療法やSIR+BEV療法などの非劣性を証明するTRICOLORE試験²⁾、 FOLFOX+BEV療法とSOX+BEV療法の非劣性を証明するSOFT試験³⁾などが行われ、 経口ベースと点滴ベースの治療は、 基本的には同等と検証されております。 もちろん内服できない場合には点滴ベースの治療を選択することになります。
経口ベースと点滴ベースの治療のどちらも選択できる場合には、 患者さんの希望をベースに考えますが、 服薬コンプライアンスや薬物療法の強度、 使用するレジメンなども考慮する必要があります。
患者さんの希望ベースに考えると、 点滴ベースの2週間通院よりも経口ベースの3週間通院の方が楽です。 また中心静脈ポートを造設せず、 内服だけで外来治療できる経口ベースの治療はチューブにも煩わされることなく、 日常生活を送りやすいです。
▼治療を完遂できるか
また、 経口ベースと点滴ベースを考える際には薬物療法の強度を考えることは重要です。 まず経口ベースの治療はコンプライアンスが大切です。 経口ベースの治療では基本的に2週間連日の経口抗癌剤の内服が必要となるため、 有害事象により計画通りに飲めない場合や飲み忘れが起こる可能性があります。
一方で点滴ベースの治療では持続点滴により3日間ですべての薬剤を投与することになりますので、 原則的に予定通りの投与がされます
▼1回の投与量に忍容性を示すか
少し細かいですが薬剤の投与量に注目することも大切です。 オキサリプラチンの投与量はCAPOX療法の場合は1回に130mg/㎡、 FOLFOX療法の場合は1回に85mg/㎡です。 CAPOX療法は3週ごと、 FOLFOX療法は2週ごとのレジメンですので、 1週ごとに入るオキサリプラチンの量はほとんど一緒(43 vs 47mg/㎡/週)です。 しかし一度に入れる薬剤の投与量には実はこれだけの違いがあります。
この違いが意外と患者さんによって重要である可能性があります。 例えば高齢者の場合、 経口ベースの治療の方が少し骨髄抑制を深くする可能性があり、 3週ごとのペースを保てないことも経験します。
全身状態が良くない方や有害事象の不安がある場合、 点滴ベースの治療は2週間ごとに小まめな状態観察ができるため、 適切な抗癌剤の量を調整し、 結果的に薬剤の強度を保ちながら治療できる可能性があります。
経口抗癌剤と併用できる分子標的薬はBEVのみです。
抗EGFR抗体であるセツキシマブやパニツムマブとの併用は点滴ベースの治療であるFOLFOX療法もしくはFOFIRI療法に限られます。
2次治療で使えるようになるラムシルマブやアフリベルセプトはFOFIRI療法との併用に限られています。
こうしたことは基本的なことですが、 やはり確認しておく必要があります。
最終的には患者さんの希望、 治療強度を保てるか、 使用するレジメンを踏まえて総合的に判断します。
一見すると経口抗癌剤の方が患者さんも、 医療者側も外来の関係から楽なようにも思いますが、 治療がうまくできる見込みがあるか、 使用するレジメンに適しているかも必ず考えて、 レジメン選択をしましょう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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