【消化器】ASCO 2025 大腸癌領域の注目演題は?
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HOKUTO編集部

22日前

【消化器】ASCO 2025 大腸癌領域の注目演題は?

【消化器】ASCO 2025 大腸癌領域の注目演題は?
米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2025) の消化器癌領域 (大腸) における注目演題について、国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科の山本駿先生にご解説いただきました。 

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切除可能大腸癌

III期大腸癌に対する標準的な周術期治療としては、 バイオマーカーによらず、 術後FOLFOX (オキサリプラチン+レボホリナート+フルオロウラシル) やCAPOX (カペシタビン+オキサリプラチン) が用いられる。 一方、 切除不能な大腸癌に対しては、 RASBRAF、 HER2、 マイクロサテライト不安定性 (MSI) といったバイオマーカーに基づいて治療戦略が構築されている。

ATOMIC試験では、 DNAミスマッチ修復機構欠損 (dMMR)を有する切除可能大腸癌の術後療法における免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の意義が検証された。

ATOMIC : Ⅲ期dMMR例への術後mFOLFOX6+アテゾリズマブ

ATOMIC試験は、 完全切除 (R0) されたIII期dMMR大腸癌を対象に、 術後mFOLFOX6(5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン)+抗PD-L1抗体アテゾリズマブ併用療法と、 術後mFOLFOX6療法単独を比較した第III相試験である。 主要評価項目は無病生存期間 (DFS) で、 副次評価項目に全生存期間 (OS) や安全性が設定された。

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小括

ATOMIC試験の結果から、 dMMR大腸癌における新たな標準術後療法として、 mFOLFOX6+アテゾリズマブが確立された。 以前よりdMMRを有する症例ではフッ化ピリミジン系薬剤の有効性は限定的であることが報告されており、 他癌種同様にICIの有効性が期待されていたが、 検証的な試験の結果は示されていなかった。

安全性においては特にGrade 4の好中球減少の発現頻度が14.2% vs 6.9%とアテゾリズマブ併用群で高い傾向だったが、 免疫関連有害事象 (irAE) に関しては予測の範疇と考えられた。

標準治療を変える重要な知見ではあるものの、 現在dMMRを有する切除可能大腸癌においては、 術前ICIの開発が進められている。 臓器温存を見据えることもできる有望な結果がNICHE-2試験等から報告されており、 今後のさらなる開発が期待される。

切除不能大腸癌

切除不能な進行大腸癌に対する標準的な1次薬物療法は前述の通り、 RASBRAF、 MSIといった遺伝子変異を評価した上で最適な治療レジメンを選択することである。 その中でも、 MSI-High/dMMR集団ではICI、 BRAF変異を有する集団ではBRAF阻害薬といった薬剤の開発が行われている。

ASCO GI 2025において、 CheckMate 8HW試験では抗PD-1抗体ニボルマブ+抗CTLA-4抗体イピリムマブ併用療法 (NIVO+IPI) の非常に良好な長期成績が報告された。 また、 BREAKWATER試験ではBRAF阻害薬エンコラフェニブ+抗EGFR抗体セツキシマブ+mFOLFOX6併用療法による良好な奏効割合が既に報告されている。

ASCO 2025では、 CheckMate 8HW試験におけるPFS2や、 BREAKWATER試験におけるOSが報告された。

CheckMate 8HW : MSI-high/dMMR例へのNIVO+IPI

試験の概要

CheckMate 8HW試験は、 MSI-high/dMMRを有する切除不能な進行大腸癌を対象に、 NIVO+IPI、 およびNIVO単剤療法を試験治療として、 化学療法*と比較した国際共同第III相試験である。 主要評価項目は1次治療例におけるNIVO+IPI群 vs 化学療法群の無増悪生存期間 (PFS) と、 全治療ラインにおけるNIVO+IPI群 vs NIVO群のPFSだった。 副次評価項目としてPFS2などが設定された。

*mFOLFOX6/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ

試験の結果

追跡期間中央値47.0ヵ月において、 1次治療例におけるPFS中央値は、 化学療法群の5.9ヵ月に対して、 NIVO+IPI群では54.1ヵ月と引き続きNIVO+IPI群の優越性が証明された(HR[95%CI]: 0.21[0.14-0.31])。 なおPFS2中央値に関してはそれぞれ未到達、 30.3ヵ月と、 NIVO+IPI群で良好な結果であった(HR[95%CI]: 0.28[0.18-0.44])。

全治療ラインにおけるPFS中央値に関しては、 NIVO+IPI群で未到達、 NIVO群で39.3ヵ月と引き続きNIVO+IPI群の優越性が示された(HR[95%CI]: 0.62[0.48-0.81])。 さらにPFS2中央値に関しては両群とも未到達と、 NIVO+IPI群で良好な結果であった(HR[95%CI]: 0.57[0.42-0.78])。

BREAKWATER : BRAF V600E陽性例へのエンコラフェニブ+セツキシマブ

試験の概要

BREAKWATER試験は、 BRAF V600E変異を有する未治療の切除不能な進行大腸癌を対象に、 エンコラフェニブ+セツキシマブ (EC) 併用療法、 およびEC+mFOLFOX6併用療法を試験治療として、 標準治療と比較した国際共同第III相試験である。 主要評価項目はEC+mFOLFOX6併用療法 vs 標準治療におけるPFSと客観的奏効率 (ORR) で、 副次評価項目には両群におけるOSが設定された。

試験の結果

PFS中央値は、 EC+mFOLFOX6併用群で12.8ヵ月、 標準治療群で7.1ヵ月と、 EC+mFOLFOX6併用群の優越性が証明された(HR[95%CI]: 0.53[0.407-0.677])。 またOS中央値は、 それぞれ30.3ヵ月、 15.1ヵ月と、 PFS同様にEC+mFOLFOX6併用群の優越性が証明された(HR[95%CI]: 0.49[0.375-0.632])。

小活

既にNIVO+IPIの有効性が示されているCheckMate 8HW試験では、 今回の報告において、 化学療法群では2次治療においてICIが71%で使用されたにもかかわらず、 PFS2はNIVO+IPI群で良好な結果であった。 さらに、 PFS2は (全治療ラインにはなるものの) NIVO群との比較においてもNIVO+IPI群で良好な結果であり、 特に1次治療におけるNIVO+IPIの有効性の意義をさらに高めたと考える。

懸念される点はirAEである。 NIVO+IPIにおけるGrade 3-4のirAE発現頻度は22%であるものの、 発現しうる具体的な有害事象は副腎不全や下痢、 皮疹だった。 投与初期の6ヵ月にそれらの多くが発生することを理解した上で、 基本的には通常の診察や採血に加えて、 ホルモン値やKL-6を定期的に測定することで、 早期発見や早期治療が可能と考えられる。

BREAKWATER試験に関しては、 PFSのみならず、 OSも化学療法に対するEC+mFOLFOX6併用療法の優越性が示されたことから、 同レジメンはBRAF変異を有する切除不能な進行大腸癌の新たな標準1次治療といえる。 なお、 EC群のOS中央値も19.5ヵ月と、 殺細胞性抗癌薬が不適格な症例の治療選択肢になる可能性が示唆されている。

またEC+mFOLFOX6併用群ではGrade 3-4の治療関連有害事象 (TRAE) 発現率が76.3%と報告されたが、 食欲不振や嘔吐、 関節痛、 皮疹はいずれも試験治療薬で予期される有害事象であり、 貧血や無力症などの頻度上昇は、 治療効果の改善による殺細胞性抗癌薬の長期投与が影響していると考えられる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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