Ehdaie Bらは, グレード2または3の前立腺癌患者を対象に, MRIガイド下集束超音波療法の有効性と安全性を検討する単群多施設第Ⅱb相試験を実施. その結果, MRIガイド下集束超音波焦点療法が安全に施行でき, グレード2または3の前立腺癌の治療に有効であることが明らかとなった. 本研究は, Lancet Oncol誌において発表された.
📘原著論文
Ehdaie B, et al, MRI-guided focused ultrasound focal therapy for patients with intermediate-risk prostate cancer: a phase 2b, multicentre study. Lancet Oncol. 2022 Jul;23(7):910-918. PMID: 35714666
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
この研究結果をもとに組織保存アプローチが今後根治的な全摘術を遅らせたり必要なくできるかどうか更なる研究が期待されますね. 当然ですが, 素晴らしい映画やドラマには続編があります.
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背景
グレード2または3の前立腺癌患者は, しばしば積極的監視療法の対象外とみなされるが, 中には積極的監視療法中に病勢進行して根治療法を必要とするグレード2の前立腺癌患者もいる.
研究デザイン
- 対象:①片側, ②MRIで確認できる, ③原発性, ④中リスク, ⑤未治療の前立腺癌 (PSA≦20 ng/mL, グレード群2または3, 腫瘍分類≦T2) を複合生検 (MRI標的生検と組織生検を併用) で確認した50歳以上の男性.
- MRIガイド下集束超音波エネルギーは, 組織焼灼に十分な温度 (約60~70℃) に順次調整し, リアルタイム磁気共鳴温度計を用いて術中モニタリングしながら, 指標病変と正常組織の5mm以上の計画マージンに照射された.
- 共同主要評価項目:本試験に登録された患者の腫瘍学的結果 (6カ月および24カ月の複合生検で治療部位にグレード2以上のがんが認められないこと. 24カ月生検データがない場合で6カ月時に治療部位にグレード2以上のがんが発生していた場合は, 6カ月生検結果を最終解析に含む) および安全性 (24カ月までの有害事象) .
研究結果
- 194名の患者の内, 101名 (平均年齢63歳:IQR 58-67) にMRIガイド下集束超音波療法を行った.
- PSA濃度中央値は5~7 ng/mL (IQR 4.2~7.5) であった.
- ほとんどの癌はグレード2であった (78%, 101例中79例) .
有効性評価
- 24カ月後, 89人中78人 (88%, 95%CI 79~94) に, 治療部位にグレード2以上の前立腺がんが認められなくなった.
安全性評価
- グレード4またはグレード5の治療関連有害事象は報告されず, グレード3の有害事象は1件のみ (尿路感染症) であった.
- 治療に関連した死亡例はなかった.
結果の解釈
24カ月後の生検結果は, MRIガイド下集束超音波焦点療法が安全であり, グレード2または3の前立腺がんを効果的に治療することを示している. これらの結果は, 選択された患者に対する焦点式治療と, 組織温存アプローチが長期的に根治的全腺治療の必要性を遅らせるかなくすのに有効かどうかを判断するための比較試験での使用を支持するものである.