心不全診療ガイドライン2025年改訂版が発表
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HOKUTO編集部

28日前

心不全診療ガイドライン2025年改訂版が発表

心不全診療ガイドライン2025年改訂版が発表
日本循環器学会は3月28日、『心不全診療ガイドライン』2025年改訂版を同学会公式サイトで発表した。 本ガイドラインは、 2018年に日本循環器学会と日本心不全学会の合同で策定された『急性・慢性心不全診療ガイドライン (2017年改訂版 )』および『2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療』を、 欧米のガイドラインの改訂内容に加え、 最新の知見を取り入れて全面的に改訂したものである。

治療アプローチの一貫性と包括性を重視、 個別化や高齢化にも対応

心不全 (HF) 診療では、 生命予後の改善のみならず、 生活の質 ( QOL) の維持・向上にも注力が必要であり、 患者教育、 疾病管理、 共同意思決定も重要な要素となる。 ガイドラインの作成においては、 患者個別化の課題や特定の患者群に対するエビデンス不足、 地域差・国際差などが問題になることが多い。

同学会によると、 2025年版では、 治療アプローチの一貫性と包括性を重視し、 患者QOLの向上、 さらに日本における診療形態も配慮して改訂された。 また、 世界的にも高齢化が進行する日本における心不全診療の課題や特異性にも注目し、 実臨床の場で質の高い心不全診療が提供されるための指針となることを目指したという。

10の主な改訂点について

本ガイドラインでは主に以下の改訂が行われた。

1.ガイドライン名の変更

HF診療において、 急性期からの切れ目のない治療の重要性と、 急性期と慢性期の明確な区別が困難であることを鑑み、 今回の改訂では 「急性・慢性心不全診療ガイドライン」 が 「心不全診療ガイドライン」 へと変更された

2.HFの定義・分類の更新 (Universal Definition準拠)

HFの定義・分類が、 「Universal definition and classification of heart failure (Eur J Heart Fail. 2021 Mar;23(3):352-380. ) 」 に準拠して改訂された。 また、 HFへの進展防止や早期の治療介入の重要性が考慮され、 ステージA (HFリスク) ・ステージB (前HF) の記載が充実され、 慢性腎臓病 (CKD) がステージAに加えられた

3.駆出率別HFに対する薬物療法の更新

2021年のフォーカスアップデート版以降の知見を反映して、 駆出率が低下したHF (HFrEF)、 駆出率が軽度に低下したHF (HFmrEF)、 駆出率が保たれたHF (HFpEF) に対する薬物療法が更新され、 特にHFmrEF / HFpEFにおけるSGLT2阻害薬およびMRA (フィネレノン)、 肥満合併HFに対するインクレチン製剤の推奨が追加された

4.原疾患 (心筋症) に対する新たな治療の追加

HFの原疾患となる心筋症のうち特に治療の進歩がみられる肥大型心筋症、 心アミロイドーシス、 心臓サルコイドーシスについて最近の知見が加えられ、 新たな治療として、 肥大型心筋症に対するマバカムテン、 トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するブトリシラン / アコラミディスなどの推奨が追加された

5.特殊病態・新疾患の追加

特別な病態・疾患として、 心房心筋症、 中性脂肪蓄積心筋血管症 (TGCV)、 高齢者 / フレイル、 腫瘍循環器について新たな記述が追加された

6.診断・評価の強化 : 遺伝学的検査やPRO

HFの診断・治療において、 遺伝学的検査、 日常生活動作 (ADL) / 生活の質 (QOL) 評価と患者報告アウトカム (PRO)、 リスクスコアの項目が新たに追加され、 最新の知見および推奨が盛り込まれた

7.社会的側面への対応 : 地域連携と包括ケアの章新設

近年重要性を増している社会福祉的な視点から、 地域連携・地域包括ケアの章が新設され、 デジタルヘルスや社会復帰・就労支援、 心不全療養指導士についての記載が追加された

8.急性非代償性HFの病態評価と移行期管理の推奨追加

急性非代償性HFの病態評価と治療について、 HF増悪 (worsening heart failure) と非代償状態 (decompensation) の定義が追加され、 また非代償性HFから代償性HFへの移行期の管理についての知見・推奨が新たに追加された

9.急性期リハビリテーションの推奨追加

急性期の運動療法・リハビリテーションに関する記載が追加され、 HF診療におけるリハビリテーションの包括的な記述と推奨が盛り込まれた

10.HF診療における併存症への対応強化

HF診療で特に問題となる併存症として、 CKD、 肥満、 糖尿病、 高カリウム血症、 貧血・鉄欠乏、 抑うつ・認知機能障害・精神心理的問題などについて、 記載および推奨が追加された

なお2025年版の改訂内容の詳細は、 HOKUTO編集部より今後、 「第89回日本循環器学会レポート」 ならびに連載 「循環器領域 注目トピック&キーワード」 でも紹介予定。

「心不全診療ガイドライン」 2025年改訂版を閲覧する

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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