「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①
著者

インタビュー

3日前

「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①
茨城県内で4つの診療所を展開する社団いばらき会の照沼秀也理事長 (浜松医科大卒) は、 在宅医療の黎明期から30年間、 地域で患者を支え続け、 日本在宅救急医学会を設立した草分け的存在だ。 インタビュー前編では、 近年力を入れる 「在宅と救急の連携」 について聞いた。 

歩み

昔は 「外来で十分」 との考えが一般的だった

今でこそ在宅医療は、 入院医療から地域包括ケアシステムへの転換を国が推進する中で注目を集めている。 しかし、 30年前は患者も家族も医師すらも、 在宅医療の定義すら知らない人が多かった。

在宅医療の対象者やシステム、 必要なお金のことなど制度を一から患者さんに説明するところからスタートしていました。 医師も“外来で十分だ”と考える人が当時は大半でした

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①
※写真はイメージです

厚生労働省が2024年に発表した医療施設調査では、 2023年9月時点で医療保険による在宅サービスを実施する病院は全国で5,144施設、 一般診療所では 32,582 施設。

全病院の63.3%、 診療所の31.1%が在宅医療に取り組む時代となった。

課題

在宅医療の患者が入院を断られる

在宅医療を続ける中で直面した最も大きな課題は、 急変した患者が病院に 「断られる」 ことだ。

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①
※写真はイメージです

在宅医療では、 患者さん全員が最期まで穏やかに過ごせるわけではありません。 ときには入院医療が必要な急変が起きることもありますので、 受け入れてもらえないのは大変です

闘病中の痛みや苦しみを取り除くには、 病院の力を借りなければいけない場面もある。 急変を乗り越えさえすれば、 患者はまた自宅に帰ることもできる。 患者の利益を考えれば、 必要に応じて入院医療と在宅医療、 フレキシブルに受けられる環境が理想的だ。

もちろん病院側に事情あるのも理解しています。 病棟は常に満床に近い状態をキープしなくてはいけませんし、 ベッドが埋まっている、 あるいは人手が足りなければ救急で患者さんを受け入れることもできません

患者が本当に必要とする医療を届けるにはどうすればいいのか。 照沼先生は課題を解決しようと、 在宅医と救急医が歩み寄る道を模索した。

模索

在宅と救急が連携する試み、 「三方良し」 の結果

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①
左から小豆畑丈夫先生、 横田裕行先生、 照沼先生

そんな時、 照沼先生の後輩、 小豆畑病院 (茨城県那珂市) 理事長・院長の小豆畑丈夫 (あずはた・たけお) 先生と 「患者のためには在宅と救急の連携が必要」 と意気投合した。 小豆畑先生は急性期・慢性期どちらも対応する地域に密着したケアミックス型病院を運営している。

小豆畑先生と連携して、 患者さんの急変時は全例を小豆畑病院に送る試みも行いました。 1年間データを取って検証したところ、 小豆畑病院の経営も改善。 患者さんのアウトカムも向上し、 送る側と受け入れる側お互いにとって良い結果になりました

在宅救急医学会が発足、 “水と油”で議論紛糾

照沼先生と小豆畑医師の2人が発起人となり、 2017年に 「日本在宅救急研究会」 を発足。 翌2018年、 一般社団法人 「日本在宅救急医学会」 として本格始動した。

在宅医と救急医が同じテーブルで話し合おうと始まった連携の場。 最初の世話人会で目にした光景に愕然とした。

“同じテーブルにつく”はずが、 在宅医と救急医が自然と分かれて着席していました。 水と油のような考え方の違いが一目瞭然に。 当然、 ディスカッションも紛糾しました

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①
2017年に開催された第1回日本在宅救急研究会 (東京・虎の門)

救急医 「もっと早期に受診してほしかった」、 在宅医 「ここまでの療養生活を自宅で良く頑張った」 ――。 同じ患者を診ていても、 それぞれの捉え方が違う。 両者の意見が対立する中、 研究会の世話人で元東京都医師会長の野中博先生の一言が皆の心をひとつにしたという

野中先生は“患者さんにとってより良い医療を追求するために集まったはず”と語気を強めました。 その一言で皆が原点に立ち返り、 在宅患者にとって“本当の良き医療”をつくるという目標を共有できたと思っています

メッセージ

若手勤務医に期待すること

救急患者のファーストタッチを担うのは、 多くの場合若手医師だ。 何を知っておくべきか。

地域の先生から電話が入ったとき、 普通に話をしてくれたら助かります。 息つく暇もない忙しさは重々理解しています。 私たち在宅医も、 その患者さんが今何を必要とするかを伝えたいのです

在宅患者にとって“本当に良き医療”を実現するには、 患者を通して医師同士コミュニケーションを重ねることが大切だ。

(>>後編につづく)

いばらき会の概要

多拠点で1100人の在宅患者を支える

茨城県ひたちなか市、 日立市、 東海村、 水戸市の4市町村に 「いばらき診療所」 を設置。 訪問看護ステーションやケアプランセンター、 介護施設なども運営し、 包括的な在宅医療を展開する。

4診療所で計約1100人の在宅患者をサポートし、 各診療所で年間約90人の患者を看取る。 常勤医13人、 非常勤医師44人。 看護師やMSWなど、 法人全体のスタッフは約250人。

在宅医療は365日24時間体制。 定期往診に加えて緊急往診にも対応する。 「スタッフは大変。 私自身は病棟に詰めていた研修医時代と働き方は同じ」 (照沼先生)。

プロフィール

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①

 「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
「在宅と救急の連携に力」 社団いばらき会理事長・照沼秀也医師①