【血液腫瘍】ASCO 2024注目演題を一挙紹介!
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HOKUTO編集部

3ヶ月前

【血液腫瘍】ASCO 2024注目演題を一挙紹介!

【血液腫瘍】ASCO 2024注目演題を一挙紹介!
米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2024) の血液腫瘍領域における注目演題について、 大阪国際がんセンター血液内科副部長の藤重夫先生にご解説いただきました。

本稿掲載の注目疾患

1. 多発性骨髄腫   2. 急性骨髄性白血病
3. 慢性骨髄性白血病 4. マントル細胞リンパ腫
5. 濾胞性リンパ腫  6. 成人T細胞白血病リンパ腫
7. Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫 8.非ホジキンリンパ腫
9. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 10.その他

1. 多発性骨髄腫

【CARTITUDE-2】自己幹細胞移植後の新規症例に対するCAR-T±レナリドミド

(ASCO 2024 Abstract#7505)

多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法を早いタイミングで行っていくという流れの臨床試験の1つで、 自家移植後に完全奏効 (CR) が認められない場合にCAR-T細胞療法を行うという試験であった。 短期的な奏効はもちろん高いはずであるが、 長期的なメリットがどれくらい示されるかという点が注目される。

【第Ⅱ相】初回再発の高齢患者に対する全経口iberdomide+イキサゾミブ+デキサメタゾン

(ASCO 2024 Abstract#7507)

初回再発の多発性骨髄腫に対し、 セレブロンE3ユビキチンリガーゼ調節薬 (CELMoD) のiberdomideを含む全てが内服薬であるレジメンの有効性と安全性が評価された。 初回再発時には現在であれば多種の選択肢がある中ではそこまで優れた成績ということはなかったが、 年齢中央値が76歳と非常に高齢の方が登録された試験であるということを考えると、 全て内服で安全性も確保されていれば臨床的に意義のあるレジメンと考えられる。

【POLARIS】再発/難治へのGPRC5D CAR-T療法 : 第 I相POLARIS の長期成績

(ASCO 2024 Abstract#7511)

再発/難治性多発性骨髄腫に対するGPRC5Dを標的としたCAR-T細胞療法のフォローアップ結果が報告されている。 奏効率は100%で、 全症例でMRD陰性が達成されたとしている。 無増悪生存期間 (PFS) 中央値は19ヵ月と、 これだけの奏効を示してもやはり多くの例では再燃してしまうという問題は解決されていない。

【MajesTEC-1】teclistamab投与時のCRS予防としてのトシリズマブ

(ASCO 2024 Abstract#7517)

二重特異性抗体teclistamab投与時のサイトカイン放出症候群 (CRS) 予防として抗IL-6抗体トシリズマブを投与するという研究のフォローアップデータであるが、 CRS自体は確かに全体の頻度は大きく減少している。 奏効率も特に悪化するということなければ、 このような予防的にトシリズマブを入れておく方法は1つの戦略と考えられる。

【IMROZ】移植不適格に対するIsa-VRd vs VRd療法

(ASCO 2024 Abstract#LBA7500)

2. 急性骨髄性白血病

【後方視的研究】高齢AMLベネトクラクス+アザシチジン、 投与日数短縮群 vs 標準群

(ASCO 2024 Abstract#6507)

高齢急性骨髄性白血病 (AML) におけるベネトクラクス+DNMT阻害薬アザシチジン (Ven/Aza) 併用療法 (海外ではdecitabineも選択される) について、 ベネトクラクスの投与日数を大幅に減らした研究を、 後方視的に通常投与日数のものと比較した検討で大変興味深い。

抄録だけではわかりにくいところもあるが、 奏効率に関しては大きな差はないようであり、 その点有害事象は当然日数が短い方が少ないと期待される。 両群共にフォローアップが長くなれば短縮レジメンで再発が増えていないかどうかは検討可能と考えられる。

3. 慢性骨髄性白血病

【ASC4FIRST】初発例へのアシミニブ+TKIT

(ASCO 2024 Abstract#LBA6500)

慢性骨髄性白血病 (CML) における初回治療においてSTAMP阻害薬アシミニブの有効性を既存のチロシンキナーゼ阻害薬と比べる第III相試験の結果が報告された。 まだフォローアップが短いという段階ではあるが、 現時点で既に有効性と安全性においてアシミニブが有意に優れるという結果が示されており、 今後同薬が初発CMLにおける標準的な治療と認識されてくるものと期待される。

4. マントル細胞リンパ腫

【後方視的研究】初回BR療法後のリツキシマブ維持療法

(ASCO 2024 Abstract#7006)

臨床試験外で初回治療としてベンダムスチン+リツキシマブ (BR) 療法を施行され自家移植を受けなかった症例において、 リツキシマブの維持療法の予後に与える影響を後方視的に検討した検討である。

800例近い症例が解析対象となっているが、 維持療法群の方が有意に無イベント生存期間 (EFS)、 全生存期間 (OS) を延長するという結果であった。 自家移植後のリツキシマブ維持療法は無作為化比較試験にてその効果が示されているが、 初回BR療法後、 自家移植なしの設定での新たなエビデンスとして参考となる。

【SYMPATICO】TP53変異に対するイブルチニブ+ベネトクラクス

(ASCO 2024 Abstract#7007)

TP53遺伝子変異を有するマントル細胞リンパ腫 (MCL) に対し特に焦点を当てたチロシンキナーゼ阻害薬イブルチニブ+ BCL-2阻害薬ベネトクラクスの有効性・安全性を、 SYMPATICO試験内において同治療を受けた例で解析した結果である。 TP53遺伝子変異陰性の症例と比較すると成績は劣るが、 全奏効率も高く有望な治療法の1つとなることが示されている。

5. 濾胞性リンパ腫

【EPCORE NHL-2】未治療FLへのリツキシマブ+レナリドミド+エプコリタマブ維持療法

(ASCO 2024 Abstract#7014)

初発のFLに対する新たな多剤併用療法ということで、 二重特異性抗体エプコリタマブを組み込んでいる点が注目される。 初発のFLの場合現状でもある程度治療成績が優れており、 このような新たなレジメンを行っていくのはチャレンジングではあるが、 短期的には高い有効性を示しており、 今後の結果に期待が持たれる。

【EPCORE NHL-1】再発/難治FLへのステップアップ投与

(ASCO 2024 Abstract#7015)

再発・難治性濾胞性リンパ腫 (FL) における二重特異性抗体エプコリタマブの投与に関するステップアップ投与の結果に関する報告である。 既報と比すると重篤なCRSのリスクが低減できているのではと考えられる。 緩徐に進行するFLでは特に今回のように慎重な投薬が有効かもしれない。

6. 成人T細胞白血病リンパ腫

【JCOG0907】未治療進行ATL に対する集中化学療法後の同種造血幹細胞移植

(ASCO 2024 Abstract#7001)

本邦における進行性成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に対する前向き試験ということで、 重要な報告である。 過去の報告における3年全生存率24%からすると、 今回の前向き試験では3年全生存率44%と改善を認めており、 主要評価項目は達成している。 ただし、 110例中92例で同種移植を施行されているものの、 プロトコル治療に規定された移植以外の症例が多いこと、 再発後の移植が16例と少なくないことなどが移植の影響の解釈を困難としている。

7. Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫

【第Ⅰ相】再発/難治例へのCD7標的CAR-T療法

(ASCO 2024 Abstract#6515)

CD7を標的としたCAR-T細胞療法の報告は最近相次いでいるが、 今回も再発・難治性のTリンパ芽球性白血病/リンパ腫 (T-ALL/LBL) の症例に、 短期的には高い有効性を示している。 CD7 CAR-T細胞療法に関してはいずれかの製剤が実臨床で使用できるようになることを期待しているが、 主な報告が中国からばかりであり、 本邦ではまだ時間を要しそうではある。

8. 非ホジキンリンパ腫

【First-in-Human】CD19 CAR-T療法後の再発/難治性に対するhuCAR-T19 IL18療法

(ASCO 2024 Abstract#7004)

CD19標的CAR-T細胞療法を文字通り強化するような取り組みであるが、 CD19 CAR-T細胞療法後の再発・難治例を対象としていることを考えると、 非常に高い奏効率を示している。 この報告以外にもCAR-T細胞療法をさらに進化させるような取り組みが多く報告されており、 どのCAR-T細胞療法が次のステップに進んでいくのか注目される。

9. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

【DEB】MYC/BCL2二重発現DLBCLに対するツシジノスタット+R-CHOP

(ASCO 2024 Abstract#LBA7003)

中国においてBCL2/MYCのdouble-expressorであるDLBCLを対象としたR-CHOPにヒストン脱アセチル化酵素阻害薬ツシジノスタットの上乗せ効果があるかを検討した第III相試験の中間解析結果である。 無イベント生存期間 (EFS) においてツシジノスタット上乗せ群が有意に優れる結果が示されている。

Double-expressorでは治療強度を高めたDA-EPOCH-R療法も行われたりはするが、 やはり高齢者では毒性が問題となり全体的な治療ベネフィットが限られることとなるが、 ツシジノスタットをR-CHOPに上乗せする形であれば高齢者でも忍容性は高いのではないかと予想される。 現在本邦においてはツシジノスタットはB細胞リンパ腫では保険適用はないが、 今後本邦でも開発が進むことを期待したい。

【ECHELON-3】再発/難治性に対するレナリドミド+リツキシマブ+ブレンツキシマブ・ベドチン

(ASCO 2024 Abstract#LBA7005)

再発/難治性のDLBCLに対する免疫調節薬レナリドミド+抗CD20抗体リツキシマブ (R2) にCD30標的抗体薬物複合体ブレンツキシマブ・ベドチン (BV) を上乗せする効果を検討した第III相試験結果である。

DLBCLにおいてはR2そのものは標準的かというところではあるが、 BVを上乗せすることの意義が検討された。 実際PFSのみならずOSにおいてもBV上乗せ群が有意に優れる結果であった。 奏効率ならびにCR率も、 BV+R2でも期待できる結果ではあった。 また、 CD30陽性と陰性でデータを見ると、 必ずしもCD30が陽性でないとメリットがないということではない点は興味深い。

10. その他

ASCO/ASCO GIの演者におけるジェンダー評価

(ASCO 2024 Abstract#9009)

2019-23年と比較的最近のASCOもしくは米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム (ASCO GI) における演者の性別に関する検討である。 このような検討がoral presentationというところも驚きではあるが、 結果における性別の差を見ると確かに重要な視点であると感じさせられる。

特に地域によって大きな差はないとしているが、 アジアでは93%が男性ということで、 他の地域よりも大きく偏りがあるように感じられる。 先日ルーマニアの学会に参加した際には、 招待演者の女性が組織委員会に招待演者で女性が少なすぎると抗議していたが、 そういったことが強くアピールされる時代なのだと実感する。

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解説 : 大阪国際がんセンター血液内科副部長 藤重夫先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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