HOKUTO編集部
4ヶ月前
2022年以降、 胆道癌の治療にも免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) が加わり、 1次治療として GCP療法とGCD療法の2レジメンを選択することが可能となった。 本稿では、 使い分けを考えるため、 6つのポイントで比較を行っていく。
著者 : 丸木雄太先生
2024年5月、 KEYNOTE-966試験¹⁾の結果を受け、 胆道癌の初回治療として、GC療法に抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ (キイトルーダ®️) を追加したレジメンが承認された。
2022年12月、 Topaz-1試験²⁾の結果を受け、 胆道癌の初回治療として、 GC療法に抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ (イミフィンジ®️) を追加したレジメンが承認された。
GCP、 GCD療法ともに、 試験デザインから治療の対象は "未治療の治癒切除不能な胆道癌 (肝内/肝外胆管癌及び胆嚢癌)" とされている¹⁾²⁾。 本邦で胆道癌として治療されることが多い十二指腸乳頭部癌は含まれていない。
一方、 添付文書の対象疾患は "切除不能な胆道癌" と記載されているため、 十二指腸乳頭部癌にも実施可能である。 十二指腸乳頭部癌への治療効果は、 今後の実臨床における治療経験から吟味していく必要がある。
GCP療法¹⁾は、 ペムブロリズマブに8サイクル目までGC療法を併用し、 9サイクル目以降も"ゲムシタビン+ペムブロリズマブ"という形でゲムシタビンの投与を"3週おき"に継続する。
一方GCD療法²⁾では、 9サイクル目以降の治療は、 デュルバルマブ"単剤"投与が"4週おき"に実施される。
ICIが導入される前の胆道癌の治療ではGC療法が用いられており、 9サイクル目以降にゲムシタビン単剤投与が行われることが一般的であった。 KEYNOTE-966試験¹⁾は、実臨床の標準治療に即して行われていることが評価される。
ペムブロリズマブの投与時間は"30分"、 デュルバルマブの投与時間は"60分"である。
昨今の抗癌薬治療は、 主に外来で実施されている。 ICIの登場により殺細胞薬との併用レジメンも増えており、 外来化学療法室の運用がひっ迫している。 この点から考えると、 治療時間が短いことはGCP療法の長所といえるだろう。
OSやPFSなどの治療効果は"ほぼ同等"である。
GCP療法¹⁾ GCD療法²⁾
mOS 12.7ヵ月 12.8ヵ月
mPFS 6.5ヵ月 7.2ヵ月
ORR 29.3% 26.7%
サブグループ解析などから、 多少の効果の違いはあると考えるが、 全体集団の解析では治療効果に差がないと考える。
本レジメンで意識すべき副作用として"免疫介在性有害事象 (ImAE) "がある。 Grade3以上のImAEは、 GCP療法の方が多くみられている。
このことは、 高齢者などへの使用において役に立つ情報といえるだろう。
令和6年度薬価基準改定に準ずる抗癌薬のみの金額で、 BSA 1.5m²で計算する。1点10円換算の場合、 GCP療法は1年間で約700万円であり、 GCD療法は1年間で約1,300万円である。
本邦では医療費が高額になると「高額療養費制度」 が利用でき、 医療費の自己負担を軽減することができる。 医療経済の観点からは、有効性と安全性に加え、 「コスト」も重要な要素の一つとなる。
1点10円換算での比較の目安*
本稿では6つの観点から、 GCP療法とGCD療法を比較した。 両レジメンの明らかな使い分けを示すことは、 現状では困難である。 これからGCP療法の実臨床での経験を増やし、 real worldデータを蓄積することが重要である。
<出典>
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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