HOKUTO編集部
3ヶ月前
HER2陰性胃癌1次治療において、ゾルベツキシマブとペムブロリズマブが導入され、化学療法との併用選択肢が3種類となってから約6ヵ月が経過しました。また、 『胃癌治療ガイドライン 2025年3月改訂 第7版』も発刊されました。こうした最新の動向を反映させるため、HOKUTO編集部では、2024年9月に実施した調査と同様の設問で再度調査を行いました。
2025年4月11~18日に、 消化器内科・消化器外科・腫瘍内科のHOKUTO医師会員を対象に上記のアンケートを実施しました。 その結果、 222人から回答が得られ、「CPS (+) CLDN (+) の『double positive』進行胃癌症例に対する1次治療の選択は?」 に対する回答は「ゾルベツキシマブ+化学療法」 が72%と最も多く、 次いで「ニボルマブ+化学療法」が 22%と多い結果となりました。
診療科別で見ると、回答者数が少ないものの、 腫瘍内科では 「ゾルベツキシマブ+化学療法」 の回答が90%となり、 他科よりも多くなりました。
また年代別で見ても、3種の選択肢の比率は、 ほぼ同様でした。 診療科別でも年代別でも、 今回の再調査で得られた結果は、 前回調査時とほぼ同様の傾向でした。
>前回の同調査の結果&解説はこちら
今回の再調査では、 現時点で、胃癌治療に携わる医師のほぼ全員が関心を寄せている「CPS (+) CLDN (+) のdouble positive進行胃癌症例に対する1次治療をどうするか?」 というクリニカル・クエスチョン (CQ) を取り上げた。 設問については、『胃癌治療ガイドライン 医師用 2021年7月改訂 第6版』の解説文も考慮して、 「CPS値は5以上」 と設定した。 関心の高さを反映し、 瞬時に200人を超える回答が得られた。
前回調査時も65%がゾルベツキシマブを第1選択とする、 と回答していたことから、 その後の臨床現場での動向が気になるところであったが、 今回ゾルベツキシマブを処方する意欲は前回よりも増加していた。
当初は、 ゾルベツキシマブの有害事象として消化器毒性が強調されていたことから、 導入初期には、 有害事象が多発することで徐々に処方意欲が減退することも懸念された。
しかし、 実際には処方意欲はやや増加傾向にあり、 「CLDN陽性であれば、 まずはゾルベツキシマブ」 という考え方が定着していることがうかがえる。 背景には 「ニボルマブは3次治療でも投与可能」 という、 当初から提唱されていた治療戦略があるものと思われる。
一方、 同時期に新たな免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) として保険収載されたペムブロリズマブも選択肢としたが、 こちらは6%の回答にとどまった。 ニボルマブの22%に比べると、 まだまだ少数派といえる。 ただし、 軽微な変化ではあるが、 ゾルベツキシマブが微増した分はニボルマブが減少しており、 ペムブロリズマブが全く同一の処方比率であったことは興味深い。 CPS高発現症例でのペムブロリズマブの有効性が徐々に浸透している可能性もある。
2種類のICIについては、 食道癌における保険適用の順番 (ペムブロリズマブ→ニボルマブ) が胃癌では逆になる現象 (ニボルマブ→ペムブロリズマブ) が起きており、 最初に投与した際の印象が良好であったため、 現時点であえて異なる種類のICIを選択する必要性に乏しいと考えている可能性がある。
今回は前提条件を単純化したが、 CPSについては、 1~5%の場合や10%以上の場合についても同様のアンケート調査を行うと、 ガイドラインや第Ⅲ相試験結果の臨床現場での解釈について、 より正確に把握することができる可能性がある。 また、 ゾルベツキシマブで治療を開始した症例のうち、 3次治療で実際にニボルマブ治療まで到達できた確率について、 近い将来にリアルワールドデータが発表されることを期待したい。
【独自調査&解説】CPS 5以上かつCLDN18.2陽性進行胃癌の1次治療の選択は?
Claudin18.2陽性胃癌に対する「ゾルベツキシマブ」治療戦略の展望
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。