HOKUTO編集部
4ヶ月前
RAS遺伝子野生型の進行大腸癌 (mCRC) の1次治療におけるm-FOLFOXIRI+抗EGFR抗体セツキシマブ療法の有効性について、 m-FOLFOXIRI+抗VEGF抗体ベバシズマブ療法を対照に検証した第II相無作為化比較試験DEEPER(JACCRO CC-13)の最終解析結果より、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側原発巣症例において良好なPFSとOSが示され、 特に肝外転移や男性患者に有効な可能性が示唆された。聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座主任教授の砂川優氏が発表した。
DEEPER試験は、 m-FOLFOXIRI*と抗EGFR抗体薬の併用療法の有効性を評価した試験である。 米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2021) で報告された中間解析では、 m-FOLFOXIRI+セツキシマブ療法がm-FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法に比べて高い腫瘍縮小率(DpR)を示した(Nat Commun 2024; 15(1): 10217)。 今回は2024年8月をデータカットオフとした、 追跡期間5年における最終生存解析結果とサブタイプ別の有効性が報告された。
対象は前治療歴のないRAS遺伝子野生型のmCRCで、 ECOG PS 0の70歳未満、 もしくはPS 0の71歳以上が適格とされた。
359例が2群に1 : 1で無作為に割り付けられ、 解析対象集団は以下であった。
主要評価項目は腫瘍縮小率 (DpR) であり、 副次的評価項目は無増悪生存期間 (PFS)、 全生存期間 (OS)、 R0切除率、 安全性などだった。
年齢、 性別などの患者背景は、 両群間で概ねバランスが取れていた。 右側腫瘍はセツキシマブ群 17.0%、 ベバシズマブ群 15.4%で、 肝外転移ありはそれぞれ 75.5%、 69.1%だった。
全体のDpR中央値は、 ベバシズマブ群では46.0% (範囲 -0.6-100%)であったのに対し、 セツキシマブ群では57.3% (範囲 -42.6-100%)と、 中間解析に引き続き有意に良好だった (p=0.0029)。 ORR (p=0.71)、 病勢コントロール率 (p=0.55)、 R0切除率 (p=0.25)は両群で同等の結果だった。
DpRサブグループ解析では、 左側原発患者ではセツキシマブ群で有意差が認められた (p=0.0026)のに対し、 右側原発患者では認められなかった (p=0.47)。
RAS遺伝子野生型の左側原発患者におけるPFS評価では、 セツキシマブ群はベバシズマブ群と比較し有意差はなかったものの良好な傾向が示された (中央値 13.9ヵ月 vs 12.1ヵ月、 HR 0.81[95%CI 0.63-1.05]、 p=0.11)。 OSも同様の傾向が認められた (中央値 45.3ヵ月 vs 41.9ヵ月、 HR 0.85[同 0.64-1.12]、 p=0.25)。
右側原発患者では、 PFS (9.0ヵ月 vs 12.8ヵ月、 HR 1.46[同 0.84-2.54]、 p=0.18)、 OS (28.4ヵ月 vs 33.9ヵ月、 HR 1.37[同0.75-2.54 ]、 p=0.31)ともにセツキシマブ群の優越性は指摘できなかった。
RAS/BRAF遺伝子野生型かつ左側原発患者における探索的解析 (セツキシマブ群86例、 ベバシズマブ群92例) におけるDpR中央値は、 ベバシズマブ群の47.5% (同 6.9-100%)に比べてセツキシマブ群で 59.2% (範囲 3.6-100%)と有意に良好だった (p=0.0017)。
ORR、 病勢コントロール率は両群間で差は見られなかったが、 R0切除率はセツキシマブ群で良好な傾向が見られた (31.4% vs 22.8%、 p=0.20)。
PFS中央値はセツキシマブ群が14.8ヵ月、 ベバシズマブ群が11.9ヵ月とセツキシマブ群で有意に長く(HR 0.71[95%CI 0.52-0.97]、 p=0.029)、 OS中央値はそれぞれ50.2ヵ月、 40.2ヵ月と良好な成績が示された (HR 0.74[0.53-1.05]、 p=0.091)。
RAS/BRAF遺伝子野生型かつ左側原発患者のPFSを、 肝外転移の有無でさらに詳細に解析した結果は以下の通りで、 転移が肝臓に限局していない患者において有意な結果が認められた。
肝外転移のない患者PFS中央値
HR 0.79 (同 0.44-1.42)、 p=0.44
転移が肝臓に限局していない患者のPFS中央値
HR 0.66(同 0.46-0.95)、 p=0.026
性別によるPFS評価では、 男性において良好な結果が見られた (男性のHR 0.71、 p=0.074 / 女性のHR 0.82、 p=0.46)。
さらに、 セツキシマブ群のOS中央値は、 肝限局転移以外の患者 (HR 0.60、 p=0.014) または男性患者 (HR 0.59、 p=0.016) でより高いことも明らかにされた。
ベバシズマブ群に比べセツキシマブ群で多く発現したGrade3以上の有害事象 (AE) は、 下痢 (セツキシマブ群 12.0% / ベバシズマブ群 8.0%)、 痤瘡様皮疹 (13.1% / 0.0%) だった。
砂川氏は 「RAS/BRAF遺伝子野生型で原発部位が左側のmCRCにおいて、 m-FOLFOXIRI+セツキシマブ療法は有用な1次治療であり、 特に転移が肝臓に限局していない患者や男性患者には有効である可能性がある」 と報告した。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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